襲撃の傷跡
厳しい真冬の夕方、いつものように”忘れられた地下大迷宮”で手に入れたドロップアイテム売るため、村の鍛冶屋、装飾店、なんでも屋など、買い取ってもらえる店を回っていた。村での扱いも村長と和解したこと、わたしがちょっと優秀なこと! も、あって、劇的に改善されていた。
食材屋に入ろうとしたら、同期のマーゼに声をかけられた。「ベネツィオ、散々、お前をいじめておいて…。こんなこと頼めないのもわかってる…。だけど…。助けてくれ…。このままじゃ、この冬を越せないっ…。妹が病気なんだ…」
大盗賊団・銀の影の幹部の襲撃で、父親を亡くした子供たちは、経済的に大変らしい。お婆ちゃんのように、しっかりと遣り繰りして、なるべく自分で…。なんでも作って…。あぁ…、そんなの普通は無理だよね…。
「前から、そんなこと気にしていない。でも冷たいかもしれないけど。助ける? 何を? 俺に、お前たちを養えとでも?」心のスキル”命の達観”が発動する。そうだ。この世界では、命はとても儚く脆い。そして、村人と話すときは、”わたし”ではなく”俺”に変える。そしてぶっきらぼうに。
「いや…。そこまで言わない。ただ…。狩場を教えて欲しいんだ」薄い緑色の瞳は覚悟を決めていた。
「狩場? それは無理だ。魔物の数と質が違いすぎる」
「お、俺の魔物だって…」
「海猿を倒せるのか?」
「う、海猿…。わ、わからねぇ…。戦ったことがないから」
「多分、死ぬよ? 俺も一度、死にかけた」
「し、死ぬのは怖くねぇ。ただ、妹が苦しんでるのは…見たくない」ぎゅっと拳を握る。
「わかった。一人じゃ無理だから、明日の朝、他の親無しも連れてこい。言っておくが、お婆ちゃんが、助けないと言ったら、俺も助けないからな? それだけは忘れるなよ」
「わかった」と素直に聞き入れたマーゼに、食材屋に売るはずだった肉、野菜、果物を分けてあげた。これで少しでも栄養を取って病気が治れば良いのだけど。
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夕飯の後、マーゼのことをお婆ちゃんに伝えた。「散々、いじめておいてか…。マーゼも同じ立場になって、やっとわかったのかね? で? 助けるのかい?」とお婆ちゃんが厳しい視線で聞いてきた。
「うん。狩場を教えない方が良いと思ったの。だって多分、大怪我するから。でもわたしみたいに複数の魔物で戦うことができれば…。それに自分の命より、妹を助けたいという覚悟があれば、できるかもしれないと考えたの。
後は、一応、わたしも村長の関係者だからね。村全体を考えれば、若者の人口が減るのは、あまり良くないし。テイマリアン・サーガの主人公も、人助けしてたし…」
「はぁ…。まったく、このお人好しが…。わかったよ。まずは海猿だね」
お婆ちゃんは、物置から剣と盾を複数、取り出してきた。えっ!? そんなの何処にあったの?
「なんだい? 他に用がないんだったら、寝ちまいな。こっちは、お前の手伝いで武器と防具の手入れがあるんだ」と怒りながらも嬉しそうに言われた。
「お婆ちゃん、ありがとう…。おやすみ…」
でも…暖炉の隣で、作業されたら…気になって、眠れないよっ!




