初遠征
冒険者ギルドに入る。それぞれの受付は、ランク別に階が異なる。ランクA・Bは三階。ランクC・D・Eは二階。ランクF・新規受付は一階となっている。これは、Fランクや新規冒険者に、ベテラン冒険者たちが、ちょっかいを出し、暴力事件に発展することが多いからである。
ランクFのフェレンツァとクラリーネは、一階の受付に向かう。
「俺は、今朝のクエストを報告してくるから、クラリーネは新しいクエスト探しておいて」
「うん。わかった」
ちなみに、フェレンツァとクラリーネは、パーティという仕組みを利用している。パーティを組んでいれば、誰が報告しても、全員にクエスト達成ポイントが振り分けられるのである。ちなみにポイントも報酬も自動的に割り勘で振り込まれる。ポイントは譲渡不可だが、振り込まれたお金は、パーティ内で、勝手に調整してくれというスタンスだ。
クラリーネは、新着用の掲示板には、これといったクエスタが無かったため、常時クエストや不人気クエストが、まとめられた分厚いファイルを見ていた。
「フェレンツァは、なるべく多くの種類の魔物と遭遇したいと言っていたわね…」
”スモールバイパーの牙を求む”、”ゴールデンバットの羽を求む”、”ウッドタイガーの糞を求む”
この3つは、期間を指定されていないわね。でも…場所が遠く、報酬が少なく割に合わないから、何時まで経っても達成されない、不人気クエストね。
フェレンツァに3つのクエストを見せると、しばらく他の資料を見ながら、考えて「これにしようと」と言った。
三匹の生息地域が近いため、一匹捕まえるなら、三匹でも一緒だということ。場所は遠いが、そこまでの道のりでも新しい魔物に出会えるかも知れないこと。そんな理由だ。
3つのクエスト依頼書を持って、受付に戻る。
「フェレンツァさん…。不人気クエストを受けて頂きありがとうございます。ですが…このクエストは、本来D・Eランクなのです。場所が多いこと、目的地周辺の魔物の生息状況が不明なこと、など…遭難する可能性や…最悪…魔物や盗賊に襲われて死亡することも考えられます」と、受付担当のリーズさんは、正直に話してくれた。
「初心者の方は、大丈夫と言って…受けてしまい。恐らく…戻ってきてないのでしょうね? でも、受けさせてください。この程度で…失う命ならば、それまでですから」
そこまで言われると冒険者ギルドの受付担当の権限では、拒否できない。
「わかりました。こちらの紙に書かれているのは、遠征に必要な道具や食料のアドバイスです。参考にしてください。それと…。お二人とも…無理はなさらずに、生きて帰ることが一番重要ですからね。クエストは、何度でも…受けれます。今回が駄目でも、次回が有ります。そのことを決して忘れずに…」
うっすらと涙を浮かべている受付担当のリーズさん。それ程、Fランクにとっては、危険なクエストなのだろう。
フェレンツァの目的は、3つだ。より多くの魔物をテイムすること。Aランクを目指すこと。クラリーネを鍛えること。
この世界でまったりのんびり生きることが難しくなってしまった。だから、フェレンツァは、 テイマーの深淵を使うことを自重したりしないと決めていた。
アドバイスの書かれた紙をみて、特に足りていない物はなかった。
「今すぐ出発できるね」
「うん。楽しみ」
まるで恋人たちがデートに行く様に、手を繋いで街を出て行く…。




