演技力
フェレンツァは、冒険者としての第一歩を踏み出すために、王都イク・リプスから馬車で40日程の距離にあるヴィスコードの街にいた。
そして、安宿で寝泊まりしていたフェレンツァは、早朝から起床して、一つのクエストを終わらせていたのである。
「フェレンツァ!! 朝は弱いのです。起こしてくださるようにお願いしま…」と、第四王女クラリーネが言い終わる前に、人差し指で口を塞いだ。
「一緒に冒険する条件をお忘れですか?」
自称普通の子供のフェレンツァにとっては、王女など雲の上の存在である。
しかしクラリーネにとっては、フェレンツァは天使様なのである。王国の序列で言えば、クラリーネは王女であり、フェレンツァは伯爵である。また四聖剣の立場で言えば、フェレンツァは守護者であり従者であるのだ。このように自分の気持ちとは、異なり…フェレンツァを格下のように扱わなければならないクラリーネは、大変、心苦しいのである。
そして、冒険者となったのだ。冒険者であるときは、二人の立場は…仲間であり、同列なのだ。
「はい…。我儘を言わない。基本は、フェレンツァの言う通りにする…です」
「うん、わかってるなら良いよ。でも、俺も悪かった。まだ冒険者の生活に慣れてないクラリーネをゆっくりと寝かせてあげたかったんだ。ごめんな」
常に自分の事を考えてくれるフェレンツァに、少しだけ恋心を抱いていたが、それが恋心だと自覚していないクラリーネだった。
「ありがとう。フェレンツァ。でも…やはり、一緒に狩りに行きたかった…な」
「うん。そうだね。クラリーネを一人にするのは、守護者として失格だなって、反省している…。もう絶対に、一人にしないから」
「うん。ご飯を食べて、冒険者ギルドに行きましょう」
フェレンツァは早朝に収穫した月見草を革袋に入れると、可愛い魔法使いのローブを着たクラリーネを追いかける。
ちなみにクラリーネは、FランクやEランクの冒険者と同等以上の強さなのだ。
■名前:クラリーネ・ミスト(12) ■クラス:光の巫女Lv11
■ステータス:STR:13、DEX:17、VIT:14、AGI:21、INT:32
■スキル:四聖剣Lv1、剣技Lv1、護身術Lv2、言葉魔法Lv2、光魔法Lv3、演技Lv3
あの日の事件以来、王族や貴族は横暴だと感じていたフェレンツァ。しかし、実際は、そのような態度で人に接することもなく、普通の一般冒険者に馴染んでいた。平民を街道に跪かせたのは、騎士が勝手にやったことなのだろうと、今では考えている。それに、クラリーネはどんなお粗末な食事に対しても感謝の心を忘れず、その時々の料理を楽しんでいた。
「ふふっ。また石臼の欠片がパンに入っていたわ」
「どんな料理も美味しそうに食べるよね」
「だって、本当に美味しいじゃない」と笑顔で答えた。
そして、クラリーネの演技力には脱帽する。クラリーネが本気になれば、どんな人物でも演じられるのではないかと…。だから、こそ…。この眼の前でパンを食べる少女が…本当に心から美味しいと言っているか、少し疑問に思うのであった。




