死の行進
若い騎士たちは、重い銀色の鎧を脱ぎ、剣を持つと町へ走り出した。残り馬で3日の行程、馬車と馬を失い、食料を失った私たちには、残された手段は他にない。わたしたちも、できるだけ歩き、町から食料や馬を連れて帰ってくる日数を縮めなければならない。ここで待てば8,9日間は飲まず食わずになる計算だ。
また遺跡のトンネルに溢れかえっている蜂蟻の討伐も必須案件なのだ。村の周辺にて盗賊の残党刈りをしている騎士たちが、遺跡のトンネルに蜂蟻がいることを知らないため、騎士が通る前に討伐しなければならない。
山岳地帯は歩き難く、幼女のわたしは激しく疲労する。でも生き残るためには、歩き続けなければならない。歩くことが明日へ繋がるのだ。
寝不足、空腹、脱水症状、疲労、何もかもが重くのしかかる。
起伏が激しく、険しく尖った岩が脆く崩れ落ちてくる。草木も無く川はあるが、恐ろしく切り立った崖の下を流れる。
何度か倒れ、ついには気絶したわたしを、騎士が背負って歩く。
二日かけて山岳地帯を抜けると荒れ地に辿り着く。
荒れ地の岩場からトカゲや蛇などを捕まえてきた騎士が、わたしに食べさせようとするのだけれど、咀嚼をする気力も失くなっていた。
「不味い、このままでは、ベネツィオの体力が持たない」とオーゼンさんが言うのが耳に入った。
あれ? それって…わたしのこと? 苦しいよ…。息するのも疲れてきた…。
横に寝かされているわたしの顔に、ダンモフが乗っかると、新芽から樹液を絞り出し、わたしの口に落とした。
たった一滴の樹液だけれども、魔法の力が宿っていた。寝不足、空腹、脱水症状、疲労などが癒やされ、いくらか体力が戻ってきた。騎士さんが捕まえてきた蛇を少しだけ食べることができた。
「蛇って美味しいですね」わたしが多少回復したことに騎士も安堵の表情を浮かべる。
新芽が枯れたダンモフも力を失い、次に新芽が生えてくるのは、いつになるのだろうか?
荒れ地というが、多少は道があり思ったよりも楽に歩けた。遠くに砂埃が舞い上がっている! 盗賊? と警戒していたら、広域を警備している騎士団だった。
その騎士団にわたしを運ばせるらしい。「でも、わたしがいたら、馬の速度が落ちます!!」と抗議するが、「こんな重さ程度、誤差にしか過ぎない」とのこと。
騎士の前に座り、背中に毛布を挟むと、騎士と私を縄で縛る。「これは?」質問すると、「疲労で意識が飛んでも、縄があれば落馬しないだろう?」と回答が返ってくる。
「もう時間がない。質問はそこまで」と、広域を警備している騎士団の中から、選抜された数名が町へ向けて疾走する。
馬に乗るのは初めてだ。揺れる揺れる、脳も体も何もかも。これじゃ、確かに疲労で意識が飛ぶのは時間の問題だなと納得した。
えっと、荒れ地、草原、農地で町か。
草原で野営をする。エレストに言われたように、貴族である騎士様に慣れ慣れしく話さない。近づかない。うんうん、言われたことはちゃんと守らないと。
「随分と大人しいお嬢ちゃんだな」と言われても!!




