儀式
「命を助けて頂いた方が、レグザルフ・デスターに師事する者であり、天使様であらせられるなど、誰が…想像できましょう? 10日以上経った今でも…混乱しております」
いや、俺が…混乱しているのだけれど…。だが、最良の選択は…一体…どうすれば…。確かに背中に羽はあるけど、ただの魔道具であり、100%天使じゃないからね。
「第四王女クラリーネ。それでも、お前は…、守護者になれと?」
うん。守護者って何だろうね?
「どうか…その…お力で…私を…お守りください」
あまりに必死になるクラリーネに、演技をしているのが、馬鹿らしくなり笑ってしまった。
「ふふふっ。 第四王女クラリーネ様、勘違いです。俺は、天使ではありません。それに…貴方方の思うような力は、俺にはありませんよ? レグザルフを退けられたのも…偶然です」
クラリーネは、跪いたまま答える。
「フェレンツァ様が、私をお試しになるのは…十分理解できます。私こそ…何の力も御座いませんから…。しかし、この四聖剣が…あなた様を…守護者と認めているのです」
話を聞くと、クラリーネは四聖剣の継承者なのだ。守護者とは、継承者の従者であり、サポートおよび護衛を役割とするらしい。
「…というのが、俺の全てだ。信じるか信じないかは、好きにすればいい。それでも、俺の守護者と…従者としたいのなら、それも運命なのかも知れない」
フェレンツァは、異世界の出来事、こちらに来てからの出来事を、包み隠さずクラリーネに伝えた。
クラリーネは、幼くして仲間を失い孤独に耐えながらも絶望せずダンジョンを生き抜いたこと、最後の戦いで…ベネツィオが助けに来たこと、そんな話を涙を隠さずに食い入るように聞いていたのだ。
「私共が勝手に…天使様と勘違いしていたのですね。異世界…それが、フェレンツァ様の強さの秘密なのですね。争いを望まない…お母様の…ベネツィオ様には、大変申し訳無く思いますが…フェレンツァ様…やはり…あなた様のお力を…私を…助けてください…」
レグザルフ…。何が正解で、何が間違ってるのか…。俺には…わからないよ…。
「わかった。だが、出来ることしか…出来ないからな?」
「それで構いません」
この小部屋は、契約の部屋と言われ、四聖剣の一人、光の巫女が…人生の最後にたどり着いだ場所なのだ。それは千年以上も前の出来事だが、伝承も儀式も…確実に後世に伝えられていた。
「一つ、言い忘れていました。これから…フェレンツァ様の魂を体と切り離します。切り離された魂は、私と交わり…私が死ぬことになれば、フェレンツァ様も死ぬことになります。しかし、フェレンツァ様の肉体は、私が生き続ける限り…無敵の体となるでしょう…」
狡い…。もう…儀式は始まっており、俺は、光の鎖で縛られ身動きも話すことさえ出来なかった。クラリーネの左腕が、俺の肉体に吸い込まれるように入り…魂を鷲掴みすると、引っ張り出した…。血管のような管が…魂と肉体を繋いでいる…。それを…クラリーネは右手に持つ四聖剣で…切断した。
その後の記憶はない…。俺は目が覚めると、クラリーネに膝枕されていた…。裸で…。
「ご気分はいかかですか?」
魂が抜かれた体は、夢を見ているみたいな感覚で、生きているという実感が持てなかった。




