守護者
ペチカは俺を背後から斬りつけた…。だが傷は浅く、後遺症が残らないように…それが、最後の優しさだったのか? 俺の存在は最重要機密として扱われ、拘束具で体を縛られ、監視塔の隠し部屋に監禁されていた。
俺の選択は間違っていたのか? 見てみぬふりをするべきだったのか? 一緒に王女を殺害するべきだったのか? 逃げるべきだったのか? 一体…どうすれば…。
「開けなさい」と、場違いな少女の声が聞こえた。しかし、その声は、子供にしては…恐ろしく重圧があった。やがて、幾つかの扉が開き、少女は、俺と対峙した。プラハスと数名の騎士や執事を引き連れているということは、この子が、第四王女クラリーネなのか?
「にわかには信じがたいのですが。この少年が、帝国六黒剣…死神のレグザルフ・デスターを撃退したのですか?」
「はい。一撃必殺と呼ばれた暗黒魔法…デスを正面から受け、その後、レグザルフを追い詰めました」
「ならば…。この少年を守護者としましょう」
「し、しかし…やはり守護者は聖騎士から選ぶべきであり、この少年にも問題が…。まだ帝国の間者の疑いが払拭されていません」
「ならば、この命の恩人である少年に…処刑台に上がれと言うつもりですか?」
プラハスは少年を助けたい、しかし手放しで信用するほど甘くもなかった。隠し事の苦手なプラハスの揺れ動く気持ちは、当然、ここにいる誰もが理解していた。
「では、打ち合わせ通りということでよろしいですかな?」執事風の男が言った。
そして、クラリーネは、フェレンツァの肩を両手で掴み、静かに告げる。
「あなたは、没落貴族のレイ家の生き残りであり、5歳の時、執事ハミナル・ベスの養子となる。そして…現在は、腕を失ったプラハスの跡取りとして、ペレ家に入り…男爵の称号を贈られたと…。更に、死神のレグザルフ・デスターを撃退した、あなたは…。私の守護者となるのです」
フェレンツァは理解が追いついていなかった。そんな作られた人生など…。それに守護者とは?
「では、儀式の準備を整えてください」
執事ハミナル・ベスと近衛兵にして隊長のプラハスを残し、第四王女クラリーネは、塔を後にした。
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王都から北へ大森林を迂回しながら11日ほどの進んだ高地に、ひっそりと建てられた小さな神殿がある。それは地下に広がる巨大な地下墳墓への入り口であり、それを知る者は王族でも一部の者に限られた。
フェレンツァは、両手両足を鎖で繋がれ、目隠しと猿ぐつわをされたまま、地下墳墓の最奥まで運ばれる。突然の計画にも関わらず、ここまで一切の妨害やトラブルが無かったことは奇跡に近かった。
拘束具を全て解かれたフェレンツァは、ゆっくりと視界がはっきりし、自分が小さな部屋に… 第四王女クラリーネと二人きりでいることに気が付いた。
そして、第四王女クラリーネは、フェレンツァへ視線を向け、ゆっくりと跪く。
「天使、フェレンツァ様。内外の敵や監視の目を誤魔化すためとは言え、これまでの数多の非礼を…どうか、お許しください」
突然のクラリーネ謝罪、自分が裸であることに、二度驚くフェレンツァだった。




