襲撃
昼食を取り終わって、一時間ほど歩いた所で、人だかりが出来始めていた。
「もうすぐ、 第四王女クラリーネ様が、ここをお通りになるぞ」
「クラリーネ様は、滅多に王都から出ませんから、ここで会えるなんて、夢のようですわ」
「おぉ、あれは騎士団から先行している騎馬兵かな?」
「さぁ、さぁ、そろそろ、街道から出たほうが良いかな。邪魔になってしまう」
騎馬兵が大声で叫びながら近づいてきた。
「貴様ら、頭が高い!! 跪き、頭を垂れろ!! 第四王女クラリーネ様が通り過ぎるまで、決して表を上げることは許さん!! 命令に逆らえば、不敬罪で処分するぞっ!」
騎馬兵に脅された人だかりは、一気に押し寄せ、フェレンツァは二人とはぐれてしまうが、周囲が跪き始めたので、大人しく周囲に合わせる。
しかし…王族とは、何と傲慢なのだろう…。レグザルフの言う通り、人との交流は、何かを得て何かを失うのかも知れないとフェレンツァは考える。
この体勢は辛い…。早く…通り過ぎてくれないかな…。5分以上、同じ体勢なのだ。手足がプルプルと震えるようになったとき、馬車や騎士団の蹄の音が大きくなり始めた。
う〜ん…。でも、まだ400mぐらい手前だよな…。あれ? 止まった? 勘弁してくれよ…。早く、行ってしまえ!!
そして、金属音と悲鳴、爆発音と衝撃波が、フェレンツァに届く頃、周囲の通行人たちは、蜘蛛の子を散らすように街道から逃げ始めた。
「フェレンツァ!」とペチカが近づいてくる。
「ペチカ…良かった無事か」
「うん、で、でも…レグザルフが…」とペチカは王女がいるであろう方角を指差した。
フェレンツァは目を疑った。レグザルフが護衛の騎士たちを…次々と斬り倒していたのだ。
「な、何やってんだ!?」フェレンツァの膝はガタガタと震えていた。
レグザルフの本気。黒い鎧からは、闇の波動の様なオーラを放出し、見たことのない剣術と暗黒魔法で、30騎はいたであろう護衛騎士をほぼ虐殺していたのだ。
それでも最後まで残った騎士団長であろう老人は、片腕を失いながらも、必死に…王女の乗る馬車を守ろうとしていた。
フェレンツァは、【悪路走破】、【突進】、【疾走】で、間一髪、老人とレグザルフの間に割り込む。
「何してんだよ!! レグザルフ!!」
フェレンツァは、王族の短剣で…レグザルフの暗黒剣を受け止めたのだった。
「フェレンツァ! それがお前の選択か!」
嵐のようなレグザルフの連撃にフェレンツァは、防戦一方になる。【熱探知】、【危険察知】、【音探知】、【嗅覚】などスキルを全開放しても…これだけの差があるのだ…。
「フェレンツァ…。残念だよ。俺が教えた事が無意味だったなんてな。だが…不思議と怒りの感情はないな。楽に…殺してやるよ。暗黒魔法…【デス】…」
黒い靄が召喚されると、その中から死神が…こいつは…あの時の…死神…お母さんがいたから倒せた…。 フェレンツァの顔が恐怖に歪んだ。




