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覚悟

ペチカは考える。


他の報酬と変えるか? いや、考えるだけ無駄だ。命に直結する食料。稼ぐことが難しい銀貨。それに比べると、生娘など、本人と家族…恋人さえ我慢すれば、何とも安く、相手…男が満足する最高の取引道具なんだよな。


しかも、レグザルフとフェレンツァの2名分をちゃんと用意している…。一般的に言えば、大人のレグザルフ、男のフェレンツァ…その2名が満足すれば、男尊女卑の風習だろうし…。生娘を差し出す時点で、女の意見など聞くに値しないと考えているに決まっていやがる。


村の運営状況から見ても…。やせ細った子供たち、不衛生な家屋、それでも…必死に…生きようとしているのが…手に取るようにわかっちまう。


じゃ、生娘の報酬は不要なのか? それは…違う。こっちは命を賭けるんだ。フェレンツァだって死んじまうかも知れない。両手を欠損して帰ってくるかも知れない。そう…だから生娘の報酬は、事前報酬なんだ。先に、子孫を残して、死ぬ気で戦って来いって…そんな意味もあるんだよな。


やっぱり、フェレンツァだって初めてだよな。フェレンツァの初めては、譲りたくない。だが、この村のために、そんな…人生を賭けるのかよ…。だが、平和だから…恋だ、愛だ、ファーストキスだ…とか、言ってられるんだよな。だが、平和じゃないのは村人だけだ。


「後味は悪いが、このまま帰っても良いんだぞ? どっちにしろ、関係のない村のために、お前たちは…業を背負ってしまったんだ。覚悟のないまま、人と触れ合ったがために…」とレグザルフが助け舟を出す。


「生娘二人を…」とフェレンツァが口に出そうとすると、瞬時に村長は「ない」と答えた。そして、「頼む助けてくれんか…」と、力のない小さな声で言った。


「その…生娘は…一度で、身ごもるものなのか?」とペチカは村長に尋ねる。


「あぁ。呪術師の力があるのじゃ。それは大きな街などでも、普通に使われれいる術式なので…。誤魔化しようがないのじゃ」


「生まれた子は? 忌子扱いされたりしないのか?」


泣きそうな顔でペチカが尋ねた。


「村を救った英雄の子じゃ、そんな扱いするわけなかろう…」


「わかった…でも、もう一つ、条件がある。誰も来ない家を用意してくれ」とペチカは言った。


ペチカは、フェレンツァを真っ直ぐに見つめる。フェレンツァは小さく頷いた。


「はっはははっ!! わかったよ、お前らは…本当に最高だ。純粋無垢なお前らを…。もう少しだけ見てたいからな。今回は特別に報酬無しで…俺一人で撲滅してくる。大人しく待ってろ!!」


レグザルフは、ペチカとフェレンツァの頭をガシガシと撫でると、村長の家を出て行ってしまった。


その出て行く後ろ姿を、ペチカはジッと見つめた。


いつも憎たらしいと思っていたレグザルフに、ペチカは胸がときめいてしまったのだ。


未完成で曇り一つ無い光り輝くフェレンツァ。世界の果てまで知り尽くしたような不気味なレグザルフ。


「いや、無報酬は駄目だって言い続けたのは、レグザルフなのに。無報酬でいいなら…ここまでペチカも悩まないだろっ!?」と憤慨するフェレンツァ。


そんなフェレンツァを見て、ペチカは楽しそうに笑うのであった。


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