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朝稽古

ペチカが言うには、テイマーの深淵は、(表示不可:覗き見防止)と表示されているらしい。この事をレグザルフは言及しない。つまりレグザルフには、全て見えているかも知れないし、何も見えていないかも知れない。だからペチカと相談して、テイムの能力である、【新手にテイムする】ことも、【テイムした魔物を呼び出す】ことも、【テイムで手に入れたスキルを使う】ことも封印した。


「フェレンツァ、お前のステータスは異質だ。それにお前は、魔道具使いなのだろうけど、体術を極める方向で鍛えたほうが良い」


レグザルフがいることが当たり前になって一ヶ月が過ぎた。魔物が出没しない地帯では、早朝にレグザルフと模擬戦を行うことになっている。


今は、暗殺道具に頼らず、拳と蹴りだけで立ち向かっているフェレンツァ。レベルとスキルのような当たり前の概念が、フェレンツァには存在しない。しかし、何故か少しずつであるが、成長するフェレンツァ。


「確かに、同じようなステータス、スキルであっても、精度が異なる事例は…間違いなく存在する。しかし…それが何に起因するのかは、まだ壊滅されていない。また、それとフェレンツァが同じ理由なのかもわからんが…。おっと、まだまだ…だな」と、説明しながら軽くフェレンツァの攻撃を流す、レグザルフに憤りを感じたフェレンツァが勝負を急ぎすぎて、大ぶりになったところに、レグザルフの拳が入る。


「うっ…。ま、参りました…」


「フェレンツァ。よく覚えておけ、今のは、簡単な挑発だ。それに気付かず、自分のペースを乱すなと、昨日、教えたばかりだぞ?」


「はい…。反省します…」


「よしっ! 今日こそ、レグザルフに一発入れるぞ」と意気込むペチカ。


殴られた脇腹の痛みを我慢しながら、フェレンツァは、負けペナとして腕立て100回、講義した内容を実践できなかったペナとして追加100回の合計200回の腕立てを実施しながら、ペチカの模擬戦を見る。


ペチカは羊飼いのスキル監視を使って、レグザルフの動きをマークする。羊が逃げ出した場合に使うスキルの疾走で間合いを詰め、狼が襲ってきた場合に迎撃するスキルの掌底で、レグザルフの腹を狙った。


「ふっ。動きが直線的で、短絡過ぎるぞっ!」


レグザルフは、半歩右に移動しただけで、ペチカの掌底を回避する。そのペチカの勢いを利用して、ペチカを投げ飛ばしたのだ。


しかし、ここまで、ペチカの想定内だ。投げ飛ばされたながらも、レグザルフの腕をガッチリ掴んでいた。


「ぐっ!?」レグザルフも踏ん張りの効かない体勢のままバランスを崩されたのだ。己の体勢を立て直すよりも早く、投げ飛ばされた勢いを利用したペチカの反撃である蹴りが目の前に迫っていた。


その蹴りをレグザルフは宙返りで回避すると、今度は勢い余ったペチカが倒れる。そこにレグザルフが拳を叩き込んだ。


「少しは考えるようになったか」


「くっ〜。悔しい…」


「よしっ。朝飯にしてくれ。お前らの朝飯は最高だからな。俺の生きがいだ」


「「はぁ〜い」」とやる気のない返事が、野営地に響いた。



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