黒い剣士
次の街まで6日ほどだ。愛想の良いペチカが街道ですれ違った商人に聞いたのだ。
「今日は、この辺りで野宿するぞ」
「うん、そうだね。近くに川もあるし、森もある。今日は、僕が狩りの番だね。魚と肉どっちがいい?」
「そうだなぁ、川があるし、魚がいいな」
という訳で、ペチカが野宿の準備、天幕の設営や焚き火の用意する。僕は川に魚を捕りに行くことになった。ふふふっ。意外と魚を捕るのは得意なんだ。
まずは【熱探知】、【危険察知】、【音探知】、【嗅覚】などの索敵の能力を発動する。ちなみに【回避補正】、【脚力補正】、【毒無効】、【水無効】などの補正や耐性は常時発動しているので意識する必要はない。
そして川まで、【悪路走破】、【突進】、【疾走】であっという間に辿り着くと、少し手前で停止し【隠密】を発動する。
こっそりと川の中の様子を伺い、美味そうな魚を見つける。そして、魚が見つかったら【雷槍】をズドーンッと打ち込み、電撃で気絶した魚を捕る。それだけだ。
「うん。よし、今日も大漁だ」
と、川に入り魚を捕っていると…川の中にある岩場に…人が倒れていた。あっ…もしかしたら【雷槍】に当たっちゃった??
僕はとりあえず、野営地点まで、この人をおぶって帰ることにした。いざとなったら、新芽もあるし…。
「相変わらず早いね…。うん? その人、どうしたの?」とペチカが訝しげな表情で聞いてきたが、僕は【雷槍】のことは黙っておくことにして、川の岩場に倒れていたことだけを伝えた。
「ふ〜ん…。とりあえず、体が冷えと不味い。鎧を脱がせないと。うん? あれれ? この鎧…。止め金とか無いけど? 魔法の鎧?」
ペチカに言われて、僕も鎧を調べるが、確かに脱がせ方がわからない。とりあえず、焚き火の近くで寝かせることにした。
魚が焼ける頃、その匂いに釣られるように男が目を覚ました。
「す、すまない…水を…」
僕は男の上半身を起こし水を飲ませた。男はゆっくりと水を飲み。一言言った。
「は、腹が減って行き倒れていたらしい…」
それから男が、遠慮もしないで次々と焼き魚を平らげていく光景は、実に圧巻であった。そして男は食べるだけ食べて、また寝てしまった。
「余程、限界だったのか?」と、どうにか残った焼き魚を食べながら言った。
「うん。明日、この人が起きたら、どうしたのか聞いてみようか」
いつも通り【熱探知】、【危険察知】、【音探知】、【嗅覚】などの索敵の能力を発動しながら寝ることにした。でも…もしも、この人が…悪い人だったら…。
僕は怖くなって、動かない間は姿が消せる”隠者の帽子”の能力を発動させる。そして、ペチカの手をそっと握った。触れている相手も姿を隠すことができるのだ。
そんな事情を知らないペチカは、恥ずかしげに、少しだけ頬を赤らめていた。




