ペチカの決意
フェレンツァがペチカの家のお世話になり始めて一週間が経とうとしていた。
「フェレンツァ…。すまん。もう食料がない…」
大変申し訳無さそうにペチカが謝ってきた。
「ペチカが謝る必要はないよ。僕が食べすぎちゃったんだよね?」
「では、フェレンツァ様。フェレンツァ・ワールドから食料を運びましょう」
ひとつ屋根の下に若い男女を二人きりになでできぬと、国王代理のベトン三世が出ずっぱりなのである。
「いや、駄目だよ。フェレンツァ・ワールドもベトン達も、最後の手段って、お母さんから言われてるからね。ここは僕が、狩りをするか、お金を稼ぐべきなんだよ」
フェレンツァは、ペチカから聞いていた。両親は村を襲った魔物たちに殺されたこと。両親を失った孤児たちは街の孤児院に引き取られてこと。ペチカは両親が残してくれた羊を飼うために残ったこと。新しく村に来た羊飼いに羊乳の売り先を奪われたこと。
「なぁ、フェレンツァ。二人で、旅に出ないか?」
それは妄想好きのペチカが、毎日、青空を見上げていた本当の理由である。
「世界を…見て周りたいんだ。こんなちっぽけな村で…一生を過ごすなんて…嫌だったんだ。だ、だから…フェレンツァに出会ったことは…き、きっと…その…運命だって…」
フェレンツァの目的は唯一つ。それは…お母さんの分も人生を楽しむこと!!
ずっと迷宮にいたフェレンツァにとって、この世界が異世界かどうかなんてわからない。だけど、初めて出会った同じ人間…しかも…女の子らしい…から、誘われたら…断る理由もない。だって、フェレンツァは、ペチカの事が大好きだから。
「うん。旅ってのが、どういうのか知らないけど。僕も世界を見て周りたいな」
「ほ、本当かっ! そ、それなら…羊を売ってしまおう…。あんな奴に売るのは嫌だけど…。連れて行けないしな…」
「ペチカ様、それならばご安心を…。フェレンツァ、どうでしょう? 今回だけは、フェレンツァ・ワールドをご使用しては?」
「そうだな。ペチカの両親が残してくれた大切な羊たちだ」
フェレンツァは、羊たちをテイムして、フェレンツァ・ワールドへ送っていく。ペチカは、両親の残してくれた小さな家を掃除して、旅に必要な物を整理していた。
「家は無理だけど、家具とかぐらいだったら…フェレンツァ・ワールドに持っていけるかな?」
フェレンツァは、ベトンに相談する。
「これは…試したことが何ので、何とも言えませんが…家ごと…持っていけるかも知れません」
「本当に? あっ。やってみないと、わからないんだね」
旅の準備をしていたら、夜になった。簡単な食事を済ませると、二人は一緒のベッドで寝た。
いろいろと思い出してしまったのか、ペチカが泣き始めてしまった。フェレンツァは、ちょっと前に…お母さんにしてもらったように、抱きしめながら頭を撫でてあげた…。




