最初で最後の抱擁
多大な犠牲が出てしまった。僕は…間違ってしまったのだろうか? 僕の夢のために…仲間を犠牲にしてしまった…。フェレンツァの心が折れてしまったのだ。
「キュッ!」(フェレンツァ!! 何をボケっとしている!! 次の攻撃が来るぞ!!!)
死神の巨大なデスサイズが、フェレンツァの首を狙う。
ハッとして、バックステップで回避しようと…しかし、床に倒れる仲間たちの屍に足を取られてしまった。
駄目だっ! ごめん、皆…。僕は…ここで…死ぬ…。
「ワン!」(フェレンツァ!!)と叫びながら、己を盾にしようと突っ込むメタフォだが…間に合わない!! あぁ…もう…主人が死ぬのは…嫌だ!! 悲痛なメタフォの祈りの前に、懐かしい…。
キンッ!!
その全てを優しく受け流す…短剣捌き…。そう…ベネツィオが現れたのだ…。
「早く立ち上がりなさい。敵は待ってはくれませんよ?」
「キュッ!!」(ベネツィオ!?)
「ワン!!」(ベネツィオ!?)
「モプー!!」(ベネツィオ!?)
「ベネツィオ様っ!?」
ベネツィオを知る王豚たちも驚愕の表情で、フェレンツァ・ワールドから出てきた。
「えっ!? お、お母さん…なの…」と尻餅をついたフェレンツァが見上げた。
一撃必殺のデスサイズを防がれた死神は、怒り狂い…ベネツィオに向けて猛ラッシュを仕掛けるが、全て優しく受け流してしまう。攻撃を受け流しながら、優しい笑顔でフェレンツァに話しかける。
「フェレンツァ。ずっと見ていましたよ。よく…ここまで頑張りました。最後は、お母さんにまかせてください。メタフォ!!」
「ワン!!」(えっ!? メタフォビーム?? ここは…太陽がないぞ!?)
「わたしを信じてください…」
メタフォから飛び出した2つの尻尾は、垂直に停止すると、扇が開くように360度展開して円を作る。その円は透明で、レンズのようだった。レンズの中には、大小様々な魔法陣が浮かんでは消えている。それらはメタフォの尻尾が小の反射板、中間に中型と大型のレンズを配置した構図となった。
ベネツィオの体が発光し始める。それは光属性? いや聖属性? それでもない…神属性の光であった。
メタフォの尻尾の小さな反射板が、神属性の光を全て奪う。数秒間、【最後の部屋】は、暗闇に包まれる。そして、ベネツィオが、死神のデスサイズをいなす音だけが聞こえていた。
「ワオォォォン!!!」尻尾が変形してできた小さな反射板から、放たれた太神属性の光は、次の中型のレンズを通ると、何倍もの熱量を持ったエネルギーに変換された。そして最後の大型レンズを潜ったそれは…。一瞬にして、死神を消滅させてしまった。
死神が奪った…魂は、まだ命の眷属であるベネツィオの力を持ってすれば、元の肉体に戻すことが出来た。そして、一人の犠牲者も出すこと無く、【最後の部屋】のガーディアンである死神を倒したのだ…。
「お母さん!!」
フラフラの足で…。フェレンツァが、ベネツィオに向かって走り出す。
ベネツィオは、それを優しく受け止め、ぎゅっと抱きしめた。
これで、【第九章 大地に根付け、小さな種よ】は、お終いです。
ここで小説自体完了でも良いのですが、もう少しだけ続きます。はい、蛇足です。




