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すみません。テイマリアン・サーガを読みたくて  作者: きっと小春
第九章 大地に根付け、小さな種よ
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弱者

フェレンツァは薄々気が付いていた。ビトン達でさえ、敵の強さに抗えず死んでしまったのだ。自分が死ぬのも時間の問題だろうと。姿を消したまま出口までたどり着けないかと考えたときもあったが、ビトンたちがガーディアンと呼ぶ、徘徊する魔物ではなく、チェックポイントを守る強力魔物を倒さなければ、先に進めない箇所が多くあった。


あるときフェレンツァは”テイマーの深淵”を無意識に使用していたことに気が付く。それは敵の名前や強さが、なんとなくわかるのだ。まず名前に”王”が付く魔物。これは圧倒的に強く、フェレンツァでは、姿を消した奇襲以外に勝ち目はない。本当に必要なときのみ以外は、近づくのも避けたほうが良いだろう。


姿を消したまま岩場の上から、魔物たちを観察する。”岩”の付く魔物は、動きはゆっくりだが、食べることも出来ない。”闇”が付く魔物は、魔法攻撃をしてくるが、美味しくはないが、一応、食べられる。そして…いたっ! ”牛兵”だ。


フェレンツァは姿を消したまま牛兵が、他の魔物からの離れるのをジッと待った。ぎゅるるる〜と、お腹が鳴る。 しかし牛兵に気が付かれることはない。隠者の帽子は消音効果もあるのだ。


牛兵も自分の弱さがわかっているため、慎重に迷宮内を進む。この牛兵は何のために命がけで、移動しているのか疑問が湧く。しかし…二日間も何も食べていないフェレンツァにとって、今は食料確保が最重要なのだ。


牛兵が岩陰に入る。周囲の魔物の認識範囲から外れたのを見計らい、装備の力を利用して息の根を止める。このときターゲットに触れていれば、隠者の帽子の効果で、不可視や消音などの効果がターゲットにも適用されるのだ。しかし周囲の視線があるときに、ターゲットが消えれば、何者かがいるとアピールしているようなものなので、運用は気を付けなければならない。


フェレンツァの非力な膂力では”牛兵”をまるごと一体持ち運ぶことなどできない。美味しく栄養価の高い部位のみを選定する。


この迷宮には木々が生える密林エリアがある。ビトン達が言うには「魔神復活前には、木など無かった」ということだ。何らかの意思が迷宮内の魔物を生かそうとしているのだろうか? しかし密林エリアは住みやすさの観点から言えば、岩場と段違いに快適だ。強力な”王”付きの魔物たちが支配していた。それでも脆弱な魔物たちは、”王”付きの魔物の目を盗んで、薪用の枯れた木々を盗むのだ。そう火を使うために。


だがフェレンツァは見張りをする仲間がいないため火が使えない。壁などに含まれる発光石が辺りを僅かに照らす薄暗い迷宮で、火を利用することは兎に角目立つのだ。薪も集められず仲間もいないフェレンツァは、肉を生で食べるのか? いや…”竜の指輪”がある。自分の口からブレスを発動できるのだ。隠者の帽子による隠蔽時であれば、ブレスも不可視なのだ。肉を焼いた匂いも出ない。


二日ぶりに食事にありつけたフェレンツァは、そのまま寝ることにした。岩壁によりかかると、”岩猫”の親子が、隠れるように寝ているのを見つけた。母に包まれながら寝る岩猫の子供が羨ましかった。フェレンツァも、母の形見である着衣のアカデミックローブをぎゅっと自分の腕で抱きしめた。


「イミュー、イミュー」


岩猫の親子から離れた場所から、鳴き声が聞こえた。フェレンツァは、それが何の魔物の鳴き声か、わからないまま声の主を探した。


「何だ、岩猫の子供じゃないか…」


親の下に連れて行ってあげようと子猫を見ると、片目が潰れていた。フェレンツァは、この子が捨てられたのだと悟った。


(助けて、助けて、お母さんっ!!)


「えっ!? あれ? い、岩猫の言葉が…わかる??」


驚いていると、ゆっくりと岩猫の親が、子猫の背後から近づいてきた。フェレンツァは、親が子猫を始末しに来たのだと気が付く。近場で鳴かれていたら、子持ちがいると周囲にアピールしているようなものであり、他の魔物から襲われるに決まっているのだ。

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