小さな勇者の挑戦
【第九章 大地に根付け、小さな種よ】がスタートします。
主人公は、ベネツィオの子、フェレンツァ。
テイマーとしての才能以外は、母親のベネツィオの足元にも届きません。
そんなフェレンツァが、外の見る世界とは?
これからもよろしくお願いします。
「ビトン王子、戦士ガドン、魔法使いマトン、僧侶リトン。僕はそろそろ行くね」
魔法の箱Exから出て、フェレンツァも7歳になっていた。あまりに巨大で複雑かつ難敵の多い”名も無きダンジョン”から、王豚の王子であるビトンは、フェレンツァを連れ出すことが出来なかったのだ。
地竜から逃げるためにガドンが犠牲になり、マトンは病死し、リトンとビトンは…フェレンツァをこの階層に上げるときにガーディアンに倒されてしまった。
4人の墓を作り、手を合わせたフェレンツァは、荷物の点検をする。
母親のお気に入りだというアカデミックローブ。これは魔法の箱Exにいるとき、毛布代わりにフェレンツァを包んでいた代物らしい。他には、王族の短剣(古代騎士の加護)、盗賊の小手(暗殺者用) 、守護者の指輪、天使の羽、隠者の帽子、粉の天秤、竜の指輪が、母親の形見だ。
それぞれ魔法の品らしく、体のサイズに自動調節された。母親のベネツィオは、剣も魔法も使えたらしいが、自分は両方ダメだ。だから、動かない間は姿が消せる”隠者の帽子”で姿を消し、暗殺者の技を再現できる”盗賊の小手”と、強力な切れ味の”王族の短剣”で、どうにかして敵を倒すしか無いのだ。一応、竜の指輪は自分の口からブレスを発動できる効果があるが、これは最後の手段だ。
”天使の羽”は、マトンに背中に直接付けられたのだが、なんと…羽が体から離れなくなってしまった。一分ぐらいなら飛べる…。最後に、”守護者の指輪”。これは魔法障壁を目の前に作り出してくれるのだが、障壁を出している間は動けないのだ…。粉の天秤については使い方がわからなかった。
フェレンツァはテイマーらしいのだが、その才能は発揮されない。そもそも魔法の箱Exから一緒に出てきたという魔物は、光になってフェレンツァの体に、吸収されてしまったらしい。
4人が言うには、この闇の世界の外には、広く美しい世界が広がっているというのだ。4人は魔物で、自分は人間という種族であり、外に出たら同じ人間と関わり合って生きていくとか…そんな想像も出来ないことを、一生懸命に話してくれた。きっと…大切なことなんだろ。
王鹿だ。今日の晩御飯は、これで決まりだねっ!!
”隠者の帽子”の力で姿を隠す。王鹿の注意深く歩いてくるが、こちらの存在には気が付いていないようだ。王鹿が目の前を通り過ぎた時、”盗賊の小手”から暗殺者の技を再現し、”王族の短剣”で意味を与えず、王鹿を打ち倒した。
解体作業に入る寸前、何やら複数の足音がする。王鹿から少し離れ、”隠者の帽子”の力で姿を隠す。
王鰐の狩人たちだ。それぞれが片手に短槍を持ち、固い皮膚の上に簡易的な金属の鎧を身につけていた。
「うん? 王鹿じゃねーのか、これ?」
「狩って間もないな。近くに、誰かいるぞ…」
「おい、おい。ここは一本道だ。ここにいなければ、もう、この先に逃げちまってるさ」
「しかし…相当な腕だぜこりゃ。恐ろしいぐらい…綺麗な斬撃の傷跡だぜ…」
王鰐の狩人たちは、王鹿の両手足を縛ると、持ち去ってしまった。
「ぐっ…。今日の晩御飯が…」
歩き疲れ空腹のフェレンツァは、姿を消したまま眠りに付く。
「寂しいよ…」




