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最も深き穴 その10

きのこモンスターの強さもわからないまま、メタフォとうさ角だけに任せるわけには行かない。大きいお腹を擦り、「少しだけ我慢してね」と言ってから、短剣を抜く。


すると砂スラが顔にへばりつく。


「なにぼどぅんでぶがぁ」


砂スラを引き剥がすと、任せろというジェスチャーの後、ゆっくりと…きのこモンスターの大軍に突っ込んでいく。砂スラの戦闘能力はあまり高くないはずなんだけど…。砂スラはメタフォとうさ角が倒した死体に覆いかぶさると、吸収し始める…。あう…。何やってんの!?


最初の一匹に3分ほど時間がかかり、二匹目は2分55秒…10匹目になると、砂スラ自体の体積が増えて、数匹まとめて吸収している。体積が大きくなると吸収出来る数とスピードが上がっていく。砂スラは死体だけではなく、生きたきのこモンスターまでも吸収を始めた。


あぁ…砂スラって、半透明だから…体の中で分解されるきのこモンスターがスプラッターです…。


砂スラは、海の津波のように、次々ときのこモンスターを飲み込んでいく…。


「ワンっ!?」「キュッ!?」


メタフォとうさ角は、背後から迫る砂スラに驚き、半泣き状態でベネツィオの足元まで逃げた。


「これは…一体…」


王豚の王子であるビトンは、あまりの惨劇に開いた口が塞がらなかった。目の前には、きのこモンスターを蹂躙し、家屋二軒分の体積となった砂スラがいる。いや、いても良いのだが、体内ではもがき苦しむきのこモンスターが…半透明なので見えてしまっているのだ…。


「なるほど、この体のまま、行動すると…。まぁ、あれですよね。狭い隙間も液体に近い砂スラなら問題なさそうですし…。いいでしょう」


1時間のに及ぶ激戦は、砂スラの真価を垣間見ただけのような気がするが、これから先に待ち受けているだろう強敵に対して、新しい戦力が加わったのは正直嬉しい。


きのこモンスターを倒したベネツィオたちは、巨大な砂スラの上に乗っかりズリズリと進む。お腹の大きなわたしは、とても楽ちんなのです。しかし、やはりテイマーとしての才能は、わたしには無いのでしょうか? 砂スラの特性を理解できなかった。もしかしたら、まだまだメタフォやダンモフにも強力な特性が眠っているのかも知れないのに…。


「どうやら、この道は、まだまだ続きそうですな。どうでしょう? ここでお休みになられては?」


わたしの表情が暗かったのか、王豚の王子であるビトンが提案してきた。


「はい。そうしましょう」


砂スラをドーナツ型にして、その中心の空間で野営することにした。そろそろ…本気で、生まれそうな気がしてきたのだ。そう…陣痛が始まったのだ。


「ビトン…お願いがあります。もしも…出産の時こそ、わたしを殺すチャンスだと思っているなら、どうか…子供だけは、助けてあげてください」


「何を馬鹿なことを言っているのですかっ! この地下には、多種多様な種族がいます。魔神の復活と共に地上に出ることを夢見る種族もいれば、魔神の復活を阻止したいと願う種族もいます。王豚は、後者であり強者を敬う…種族ですぞっ!! 魔神復活を阻止しようとするベネツィオ様に害を成すような真似はいたしませんっ!!」


ベネツィオは自分があまりにも愚かな発言をしたことに気が付き謝罪した。


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