最も深き穴 その11
「カカカッ!! お前ら、いつまでチンタラしてやがる!? 魔神エンディファルス様の復活前夜祭に招待してやるぜぇ!! そらぁっ!!」
突然現れた悪魔のような種族に、瞬時に構築した魔法陣で転移させられたのだ。最も深き穴の最下層…封印の間に。魔神復活までのタイムリミット中に、最下層にたどり着けるか不安だったベネツィオには願ってもないチャンスだったのだが、タイミングが不味い…。もうすぐ…我が子が生まれそうなのだ…。
封印の間。ここまでの道のりであるゴツゴツとした岩の回廊とは違い、何の石で出来ているかわからないが、赤いタイルで敷き詰められた、そこらの王宮がすっぽりと入るほどの巨大な空間であった。
「おぉっ!! ベスタブル殿。まさに伝承通り。子を孕んだ魔女と魔物たち…」
「カカカッ!! 残り24日も待ってられねぇんだよ。この女の腹からガキを引きずり出し、魔神エンディファルス様が封印されている祭壇に捧げれば、あら不思議、魔神エンディファルス様の復活だぁっ!!!!」
つい先程、王豚の王子であるビトンから聞いた魔神の復活を望む種族達…。その数、数万…。
ベネツィオは考える。どうすれば魔神復活を阻止できるのか、どうすればこの子を助けられるのか…。
青い髪の毛を後ろで縛りポニーテールにし、はち切れんばかりの豊満な恵体をアカデミックローブで包み隠し、顔立ちもはっきりした可愛い少女は、最後の戦いを決意する。
「みなさん、3分だけ、時間をください。別れの挨拶をさせてください…」
ベネツィオ、数万の敵に向かって懇願した。
「あぁ、いいぜぇ。好きにしな、カカカッ!!」
敵からすれば、絶対に覆らないであろう優位による余裕。それが命取りになるとも知らずに。ベネツィオは、行動を隠すように敵に背を向けた。
「わたしの可愛い魔物たち、それとビトン王子。これは絶対命令です。口答えする時間もありません。わたしの子を…きっちりと育ててください」
ベネツィオは魔法の箱から、今まで集めてきたアイテムを取り出す。
「これを子供が使えるよになったら、渡して…あげてください」
◎王族の短剣(古代騎士の加護) ◎盗賊の小手(暗殺者用) ◎守護者の指輪
◎天使の羽 ◎隠者の帽子 ◎粉の天秤 ◎竜の指輪
そして ベネツィオはアカデミックローブをまくり上げると、自身の腹を短剣で斬り裂く。勿論、赤ん坊を傷付けないように…丁寧に…。
「リトン、おね、がい…。この子を取り出して…早く…」
大きく裂けたお腹から、青ざめたリトンが、赤ん坊を取り出す。大量に出血するベネツィオにダンモフは新芽を使おうとしたが、「それは…この子のために…フェレンツァのために…取っておいてください…」と制した。
ベネツィオは、全員の顔を見渡す。「ありがとう、さようなら…」と言って、この場で構築した新魔法である”魔法の箱Ex”に、全員を閉じ込めてしまった。
突如消えた魔女の仲間に、ベスタブルたちは驚くが、魔女が残っていれば問題ないと安堵するが…。振り返った魔女の腹が、小さくなっていることに気が付く。
「お前…。その腹は??」




