最も深き穴 その9
もっと会話ができれば、”王豚”の国で王女となり、軍隊を率いて最下層を目指しても良かったのかな? あれれ? 階層ごとに別れていないなら、へびっちょで飛んでいけば良いじゃないか?
「ねぇ、ビトン。わたし飛べるの。飛べれば最下層なんてすぐじゃない?」
王子であるビトンは首を横に振った。
「飛んで移動すると、呪いを受けるのですよ。足を地面から離し、約100mの高低差を移動すると、ランダムで闇魔法を強制的に取得してしまうのです。最下層に飛んでいくならば、☆が幾つ必要になるかわかりません。どんな魔法使いであれ、★が50%を超えてしまうでしょう」
なるほど。面倒な呪いだな。
「では、ビトンは、最下層までの道順を知っていますか?」
「最下層に行く必要がないため、わかりません。そもそも…この無数に繋がる道のどれかが最下層に繋がっているという保証もありません」
う〜ん。その発想はなかった。繋がってなかったらどうしよう?
「兎に角、下に進むしかないのですね」
ベネツィオ達は進む。枝分かれする道を進めば行き止まりで引き返すことも少なくない。時には四日以上進んで行き止まりであることが発覚するケースもある。その度に分岐点まで戻り、床や壁に進んだ結果を書き記していた。
「ここが駄目な場合は、10日以上かけて、一本前の分岐点に戻る必要がありますね」
あまりフラグチックな事は言いたくないが、大きなお腹のわたしには辛いのです。途中で遭遇する魔物に関して言えば、”王豚”たちが、ガンガン倒してくれるので楽なのですが。
わたしたちは一本道を5時間ほど進んだ場所で、本日の最下層の捜索を中断する。
また悪の認識でも敵意は見られないが、テイムしていない”王豚”に全ての手の内を見せるわけにもいかず、魔法の箱による野営はできないのだ。一般冒険者と同じく、テントの設置作業や見張りなどが必要になり、結構ストレスが溜まる。
「キュイィーイッ!!」
これから夕食の時間だというのに魔物が? ただならぬ雰囲気に、王豚の王子であるビトンが、指示を出し、わたしを守るために声の前に立ちはだかる。
「ブヒーヒィッ!!」とガドンが叫ぶと、通訳するようにビトンも叫ぶ。
「ベネツィオ様、前方から数百という魔物が迫っています。お逃げください!!」
広範囲の術が使えれば…。
「ワンっ!!」「キュッ!!」とメタフォと、うさ角が任せろと言ってきた。
「いつも、いつも、無茶ばかりさせてしまいますね…。ビトン、メタフォの後ろに下がってください。戦いの邪魔になります!」
敵の姿がはっきりと見えた。きのこに手足が生えた魔物だ。うさ角は、その大軍に一騎当千とばかりに突っ込んでいく。メタフォも尻尾二本を剣に変えて、迎撃態勢に入る。
「ベネツィオ様っ!? まさか…たった二匹だけで、数百の軍勢をっ!?」




