30連撃
「フフフッ。今日こそは、課題をクリアさせてもらいますよ」と背中の腰の辺りに括り付けてある短剣を抜く。
武器を所持していたのかと騎士が驚き止めに入るが、それよりも早く勝負が開始される。
キンッ! キキンッ! カンキンッ! キン!キン!キン!キン! キンッ!!
野営地、いや森中に甲高い金属音が木霊した。天幕で寝ていた騎士たちは、敵襲かと驚き、素早く迎撃態勢で天幕から飛び出して来た。しかし、そこで見たのは、恐るべき早さの魔物の攻撃を、短剣一本で防ぎきっている少女の姿であった。
「おい、どうなっている!? あれは、魔物? 敵なのか!?」とわたしの護衛の騎士に詰め寄る。うん、連撃を受けながらも、他のことにも反応できるようになってきたね。成長してるかも!!
キンッ!! と、28連撃目で、メタフォに短剣を弾かれてしまった。
「う〜ん、あとちょっとだったのに!!」と悔しがる。
わたしは弾かれた短剣をしまう。メタフォはフードの中に隠れてしまった。そして気が付く。唖然とする騎士団員に。あれ? もしかして…。また余計なことをしちゃったかも??
「お、お腹へっちゃった、てへっ?」と可愛く言ってみたが、微妙な空気のままだった。
その後、武器の所持と魔獣の危険性について、議論が行われたが、わたしに敵意はないだろうと、現状維持となったみたい。
そして凍てつく山脈の麓に向けて出発する。
「いや〜、ベネツィオ。お前の剣術があれほどとは知らんかったぞ」鍛冶屋のブリッドさんが感心したように言った。「いや、ベネツィオ…。お前、テイマーを目指しているんだよな?」と護衛役でありテイマーのオーゼンさんが聞いてきた。
「はい、テイマリアン・サーガに出てくるようなテイマーが目標です。夢は大きくです!」
「十分に剣士として活躍できるぞ、あの腕前なら」とブリッドさん。
などと話しながらも、馬車は順調に進んでいく。
「テイマーって、どうすれば、野生の魔物を捕まえられるのですか?」
「あぁ…それは無理なんだよ。一度野生の自由さを経験してしまうとね。本能レベルで主従関係を拒否してくるのさ。だからテイマーの魔物は錬金養殖の魔物たちだ」
「そうなんですか、残念です。あ、それと魔物たちって、どうすれば新しい技? 覚えるんですか?」
「それは魔物たちをしっかりと観察し、意思を通わせることだね。技は認識して初めて発動できるからね。最初は、どんな魔物でも誰も気が付かない技があって、時間と人数をかけて徐々に研究した結果、今では簡単に技が使えるようになったのさ。生存率:ノーマルの魔物だと多くの人が触れるから、技も見つかりやすいんだ。例えば、君のメタフォだっけ? ベース:九尾とあるのに、尻尾が1本じゃないか? じゃ、どうやったら残りの8本は出るのか? そういう疑問が新しい技の発見に繋がったりするんだよ」
「なるほど、なるほど…。もっと魔物たちをじっくりと見てあげないといけないのね」
「そうそう。焦らずにゆっくりだ。一番重要なのは信頼関係だからね」
あれ? でも…うちの魔物たちって、勝手に技を発動して使ってるけど? あれれ? どういうこと?




