騎士と貴族
護衛役でありテイマーのオーゼンさんから、テイマーの特性などを教えてもらっていたら目的に到着していた。凍てつく山脈の麓は、永久凍土の山脈から吹き下ろす冷風により、夏のこの時期でも朝方には氷点下になるらしい。
めちゃ寒い。ダンモフがアカデミックローブの中をモフモフだらけのダウンジャケット状態にしてくれた。ちなみに手縄は一日目と最終日だけでいいみたい。一応、連行される被疑者なので周囲の目があるときだけ、しっかりと手縄するようにとお願いされた。
騎士が焚き火で暖を取っていたので、ちゃっかり一緒に温まらせてもらう。
「はぁ…暖か〜い」と完全に被疑者がするような顔ではない。完全にリラックスを通り越してだらけた顔になっていた。
「ベネツィオさん…」と騎士に呼ばれた。「なんですかぁ〜」と抜けた返事をする。
「ごほん」と咳払いをして話を続ける。「嫌味でも意地悪でもないので素直に聞いて頂きたいのです。騎士になれるのは、貴族のみです。貴族は、悪い言い方をすると、仕来りやプライドを重んじます。つまり…。簡単に言うと、ベネツィオさんが、馴れ馴れしく接して良いような相手ではありません。私たち町の騎士なら問題ありませんが、都市レベルの騎士には、決して近づかず、無闇矢鱈に話しかけないでくださいね。不敬と思われて、最悪、即斬り付けられますから」
「う〜ん。面倒くさいね。あっ、でも、村に置き換えると、村長みたいなもんだね。うん、納得。あ、よければ名前…教えてもらえる?」
「私は、エレスト。シリギデン家の三男です。ベネツィオさんと同じ10歳です」
「えっ!? 嘘!? そんなに背が高いのに??」わたしは122cmなのに、エレストは160cmぐらいはある。
「ははっ。多分ですね。食べ物の差ですよ。町には栄養が多く含まれた食べ物が多いですから」
「エレスト! エレストは何処だ?」と別の騎士が探しに来た。「はい、ここに!!」とエレストは立ち上がり、「またお話できることを楽しみにしています」と言って、声の方へ走って行った。
う〜ん。多分、わたしに惚れているよね。困った。何が困ったかって? そりゃ、わたしも、焚き火に照らし出されているエレストの顔が、ちょっとイケメンじゃね? と思ってしまったこと…。心も女子化してきたのかも。
いつもの、お湯みたいな薄い塩味の謎のスープと、硬いパン、燻製肉だけの質素な食事を終えると、幌馬車の中で毛布にくるまって、早々と寝ることにしたのです。
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朝、メタフォとの剣の稽古を終え、騎士たちの出発の準備を手伝います。兎に角、馬車に乗っているだけだから、体を動かせるときに、動かしたいと騎士たちに無理を言って、働かせてもらってます。
それに! 今日は、遺跡のトンネル!! ちょっと楽しみじゃない?
でも、実際にトンネルに入ると、真っ暗で何も見えない…。トンネルに入る前のワクワク返せ!! でも凍てつく山脈から吹き下ろされる冷風から解放されて、トンネルの中は、暖かかった。
「こんな真っ暗だと、迷子になったら、生きて帰れないよね?」と鍛冶屋のブリッドさんに話しかける。「いや、このトンネルは、一本道だから、迷うことはない」と即答されてしまう。
「ふ〜ん、魔物とかはいないの?」
「あぁ、魔物が住み着いているって噂も聞いたこと無いな」
なんとも期待はずれの遺跡のトンネルであった。




