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最も深き穴 その5

さて、最終目的を話してやるか。その前に予備知識が必要だな。この世界は層になっている。下から順に、魔界・亜人界・人間界・精霊界・神界だ。よく覚えておけ。


話を戻すぞ。簡単に言えば人類の作り直しだ。


支配者になったときだった。お前も女神の奴に会っただろう? 気に入らないのさ、あの見下した感じが。


人間界の層の位置を考えてみろ。丁度真ん中で、どっちつかず、そして中途半端。とても醜い世界じゃないか。女神に笑われたよ。だから…作り直しているのさ。何度も、何度も、何度も、何度も、何度も…。そして今回も失敗だから、壊す。ただそれだけだ。


不思議そうな顔だな。醜い世界にしているのは、確かに私の禍の力だ。しかし…それすらも凌駕する人類の魂の誕生こそが、人間界を神界以上の世界にするカギなのだ。


そう神などに支配されない干渉されない世界を作るのが…私の使命なのだ。




「まぁ、こんなところだが。何か質問はあるか?」


「もしかして…その繰り返された歴史の中で…テイマリアン・サーガは本当にあったの?」


「ぷっ。ははははっ。この期に及んで、またそれか。あぁ、本当にあった。確か、前回の人類史だったな。ちなみに人類は選ばれた者のみ、生存させ、繁栄させる。皆殺しではないから、その物語も残ったのだろうな」


わたしは少しだけ嬉しくなった。そして絶望する。


「そんな悲しい顔をするな。お前では私に勝てぬし、私もお前を殺せぬ。例え殺せたとしても、ベネツィオ…お前だけは手にかけたくないのだ」


イーノーベが言っていることはお互い支配者であり不老不死だということ。眷属ならば眷属の力を借りて滅することが出来るのだが、支配者は殺されても女神様の側に戻るだけだ。


実力でも勝てないけど。わたしを殺したくないと言ってくれたのは、少し嬉しかった…。


「お前は、本当のお馬鹿だよ。そんな体で…他の奴が来たらどうするつもりだったのだ? 間違いなく殺されていたぞ? いや正確には死ぬのはお前の身籠っている子供だけだがな」


「うん…考えなしに来ちゃったから…。でも、世界を守るためなら、この子も…きっと許してくれると思う…」


「直接殺したくないってだけで、お前を見逃す気はない。お前は、この最も深き穴で朽ち果てるのだ。出口の魔法陣は消しておいた。最も深き穴は、人間界とは別の層にある。通常の転移魔法などでは、出入り不可能。ここから出られる方法は3つだ。1つ目は私が知っている術式による脱出。2つ目は魔神が蘇るまで待つこと。ちなみに、ここは魔神を封印するための檻だからな。3つ目はブラックカードの世界を壊した魔法で次元を破壊するかだ。


「どれも…不可能…」


「そうだな、3つ目の方法で脱出したところで、お腹の子は助からんだろうからな。お前が…その子を大事にしているのは、痛いほどわかる。それに脱出できたからと言って、何一つ世の中の流れは変わらん。ただの犬死だ」


イーノーベお婆ちゃんは優しく抱きしめてくれた。最後のお別れの挨拶だ。


「すまんな。だが…もう一人のバカ娘、カーネルも守らなければならん。あいつに死なれると層が崩れ落ちてしまうからな」


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