最も深き穴 その2
「うさ角ぉぉぉぉっ!!」
その古代の技術で作られた引き分け扉が閉まる直前に、うさ角は振り返り、「キュッ!」と笑った。
混乱したわたしは扉を破壊しようと、自身の最強魔法である合成魔法…”惆悵の童子”を発動するため、準備に入った。
だが、わたしの目の前にメタフォが怒った表情で立ち塞がる。
「邪魔しないでっ! 何で、邪魔するのっ!?」
わたしは…メタフォと睨む合う。
あっ…体が…動かない…。へびっちょが特徴である蝶の鱗粉で…。な、なんで…。
ダンモフも、メタフォも、砂スラも、へびっちょも…。わたしを見ている。信じろと…目が言っていた。
長い、長い、時間が…過ぎる…。へびっちょの麻痺も解けたが、わたしは…扉の前に正座すると、うさ角の無事を祈る。
うさ角と…いえ、テイマーとして…魔物をちゃんと育ててあげてられなかった。もっと…修行をつけてあげれば…。進化の奇跡で、もっと…力を授けてあげれれば…。
わたしは…なんて自分勝手だったんだろう…。お願い…うさ角…勝って…。
生きて戻って。今度はちゃんと…一緒に強くなろうよ…。
乱れた心を沈めれば、扉の色も彫り込まれた模様も、見えて当然だった物が、情報として頭に入ってくる。どうして…どうして…いつも…わたしは…。
止め金が外れる音がして、ゆっくりと引き分け扉が左右に開く。うさ角がこちらに向かって歩いてくる。その姿は、右腕が切断され心臓の鼓動と共に血が吹き出し、右耳、右目、右頭部…全てが…恐らく竜の爪で削り取られたのであろう。
「嫌ぁぁぁぁっ!!」わたしはうさ角に駆け寄ると、無理やり回復魔法を眷属の力で生み出し、うさ角の治療を開始した。ダンモフも新芽の力で、うさ角の頭部を再生しようと試みる。
「キュッ…」
「喋らないで…」
「キュッ…」
「うん。頑張ったんだね。竜に…勝ったんだね…」
「キュッ…」
「うん。わたしの…最高の魔物だよ…。元気になったら、今回の事、すっごく怒るからね」
「…」
うさ角の心音が徐々に弱くなっていく。
そのとき、巨大なドームの部屋の奥で…強大な魔力が膨れ上がるのを感じた。ハッと顔を上げれば、ラグラシシスに似た竜が、真っ赤に燃える眼光でこちらを見ていた。
「そこの娘…」




