ベネツィオの救出作戦 その7
南大陸には80以上の国があり、北大陸の10数倍の面積を誇る。正直、北を攻め落としたところで、食料問題は解決しないだろう。
しかし北大陸と戦争することにより、北大陸へ出兵した兵士が死ぬことにより人口が多少なりとも減ること、多少の食料が入ることが重要だという。そして北大陸の侵攻が上手くいけば、その時点で南大陸の人口問題を公表し、人口増加に歯止めをかけるらしい。
それでも…南大陸の殆どの人間は餓死すると、南大陸の上層部では推測されている。
また、この大きな流れは、例え一国の王を殺したところで止まることはない。連合軍の首脳陣を殺しても同じだ。では…なぜレジスタンスがいるのか? それは自己満足に過ぎないと敵も味方もわかっているのだという。
「勝手に死ねばいいじゃないっ! 全部、南大陸の問題でしょ? 北大陸に関係ないじゃない」とイフレーレが怒りをあらわにする。
まったくその通りだと、わたしも思った。
だが、北大陸が蹂躙されても、南大陸で壊滅的な飢饉が発生することよりも、もっと恐ろしいことに…わたしは気が付いてしまった。
***** ***** ***** ***** *****
わたしはカーネルをそっと、外に呼び出した。
「カーネル。あなたは、層の眷属…。いえ、層の支配者ね。なぜこんな危険な場所にいるの? あなたも…わたしと同じく体の崩壊が始まっているでしょ?」
「えぇ…。でも、助けたいの…家族を…南大陸の人たちを…」
「馬鹿言わないで。先程の話をしてくれたのは、あなた達よ? 自分たちで無理だと言っていたじゃない!?」
「そ、それでも!」カーネルは、ジッとわたしを睨むが、一番重要なことを言わせてもらう。
「層の支配のあなたが死ねば、世界は崩壊する。もっと酷いことが起こるのよ? あなたの自己満足で世界を破滅させる気なの?」
「南大陸には支配者と呼ばれる眷属は少ないの。今、この世界で最も有名な、あなたが南大陸に来たということは、何らかの因果が関係していると思うの」
「もしかして…最初から、わたしの存在に気が付いていたの?」
「えぇ。勿論よ。竜に乗って登場するなんて、それこそ何を考えているのだか…」
ぐぬぬ…。そんな地団駄を踏むわたしの前に現れた自分物こそ、ヤマト帝国の第二皇子ツクヨミだった。ツクヨミは国で言えば皇子、眷属的には支配者であり、個人的にはレジスタンスのリーダだ。
「ベネツィオ…。出逢ってすぐに…残酷な頼みごとを許して頂きたい。世界のために犠牲になってもらえないだろうか?」
ツクヨミの世界救済プランは、北大陸を滅ぼす戦いで人口を減らし、また飢饉で人口を減らす。生き残った南大陸の民に、北大陸を滅ぼす際に保存しておいた食料を分け与える。裏では南大陸の首脳陣の注意を引くために作ったレジスタンスの象徴であるカーネルの代わりに、わたしが公開処刑されるというシナリオだ。
カーネルが層の支配者となったのは、レジスタンスの象徴になった後であり、ツクヨミの想定外の問題であったのだ。




