ベネツィオの救出作戦 その5
港町に入る。町には門衛はいなく自由に入れた。町に入るまでは、食べすぎたハンバーグを戻さないようにゆっくりと歩いていたトッテだったが、今は先導するように、わたしの手を引っ張って家に案内された。家は思ったよりも立派だった。二階建ての家屋がずらっと通りに並んでいて、その一軒がトッテの自宅だった。
「ありがとうございます」
トッテの両親は、家の全財産と食料を掻き集め、わたしたちに渡そうとしている。えっ!? そこまでしたら、あなたたちが、暮らせないじゃないの? トッテが命がけで狩りをした意味がわからない。
「えっ!? う、受け取れません! そ、その代わりに、少しお話を聞かせて下さい!!」
異様な雰囲気のお礼を完全ブロックする。怖いっ! 常軌を逸するお礼は恐怖ですからっ!
わたしたちのことを何処ぞの貴族と勘違いしているみたいだったが、そのままにしておく。それに、わたしたちが、子供に狩りをさせてしまった両親を試していると勘違いされていた。南大陸では何より子供の命が大切とされている。それは貴族の子だろうが、泥棒の子だろうが、奴隷の子だろうが、子供は宝であり、決して命や人権を踏みにじってはならないのだ。貴族と勘違いされているわたしたちが、両親を裁いていると思われてるみたい。
やっと誤解をといて、町の様子を教えてもらう。広大な大地の南大陸だが、痩せ土のため作物は育ちにくく、80以上ある国々が常に戦争状態のため、資源は戦いに費やされていたらしい。だが戦いばかりでは未来がないと気付き始めた各国が、1つ、また1つと、手を取り合い始め、最後には連合国として、戦争のない大陸へと姿を変えたのだ。平和が理由なのだが、ここ数十年で南大陸の人工は爆発的に増えた。食料を求め各国が争い始める気配の中、指導者達は、北の大陸に目を付けたのだ。
なるほど〜。そんな理由で攻めてきやがったのか!!
これ以上の情報は平民からは聞けなかった。でもですよ? 彼らが、わたしたちを何処ぞの貴族と勘違いするならば、わざわざボロ服を着ないで…。アカデミックローブから、懐かしの黒のゴスロリワンピース姿になる。これで貴族度アップですよね!?
わたしたちは視察する貴族の少女と護衛の騎士という設定で港町を歩く。
何気に港に入り軍艦に近づく。軍艦は兎に角大きい。まるで貴族の屋敷のようだ。ほげーっと見上げていると、揉み手擦り手がとっても似合う中年太りの兵士が近づいてきた。多分、偉い人なんだろうね。彼はビードクと言い、海軍と呼ばれる組織の将校だった。どの程度偉いのか知りませんけど…。
「なぜ軍艦が一隻しかないのですか?」
もう全員が勝手に何処ぞの視察官の娘だと勘違いしているので、その通りに行動する。
「は、はい…。それが…」
まず各国に数隻しか軍艦がないらしい。また北大陸までの大航海で、無事帰ってこれる可能性はとても低いとのこと。しかし資源が厳しいご時世、軍艦を建造することもできない。だから北大陸から来たときも軍艦を見なかったのか。
えっ!? じゃ…放っておけば、戦争は終わるんじゃない?
そんな疑問に答えるかのように…。「ここだけの話ですよ…」と将校さん。
あー…なるほどね! じゃ、ないよっ! 大変なことを聞いてしまった。
疑問の一つが解ける。北大陸で見かけた南大陸の兵士が少なすぎる件について…。
元ブリタルア王は、神聖国ノ−ブレディッシュのとある屋敷に幽閉されている。そのブリタルア王が言うには、南大陸の兵士たちは国に帰ったと発言していたのだが…。いやいや、わたしが解放運動で手を出す前に帰る理由がないでしょ? と疑問に思っていたのだ。




