ベネツィオの解放戦線 その5
エレストが婿入りした町フリハルトーンに入った。 光の魔法・世界の墓標…敵じゃないけど…エレストの居場所や、街全体の情況を把握する。エレストの心に触れる。あの頃と変わらぬ誠実で優しい心…。流れる涙をアカデミックローブの袖で拭う。
「ベネツィオ様?」わたしの様子にイフレーレが心配そうに声をかけてくる。
「心配いりません。そのまま、北に向かって町の中を直進してください。うさ角、エレスト覚えていますよね? 先に行って助けてあげて下さい。敵に囲まれています。メタフォは東門を、砂スラとへびっちょは、西門をお願いします。イフレーレ、北門に敵450です。突っ込みますよ?」
「はい!」手綱を握る手に力が入る。心配要らないよ。”剣の深淵”の力を信じて!!
しかし、エレストめっ! こんだけ大ピンチなのに、心の開示で伝えてこないんだから!!
北門は敵450の前に蹂躙されていた。わたしとイフレーレは敵の前で馬から降りる。
「我が名はベネツィオ! 南大陸の連合軍からイフリアン王国を開放する者! 一度だけ警告する。武器を捨てて降伏せよ!!」
二本の短剣を抜き、敵450と対峙する。わたしの物怖じしない態度は、イフレーレの心の支えになっていた。
「ベネツィオだ! 捕まえろ!! 抵抗するなら殺しても構わん!!」
敵450が津波のように襲いかかる。一切魔法を使わず剣だけで乗り切ってみせよう。イフレーレの動きをチェックする。イフレーレは”剣の深淵”の力に驚いているようだ。だが、その力を理解し、自分の剣に反映させる。流石、イフレーレ!! 剣に愛された娘よ! その実力を解放して!!
わたしが守り重視だとすると、イフレーレは攻めだ。疾風の如く、次々と敵を斬り倒す。恐らく、数秒先の未来が見えているのだろう。でなければ、あのような先に繋がる剣筋を構築するのは無理だ。
敵はイフレーレの鬼神のような強さの前に戦意を喪失し降伏した。
「イフレーレ。強いということは、それだけ魂を奪うということです。わたしは数日前まで答えを出せませんでした」
「はい」
イフレーレならば、言わなくてもわかっているだろう。そして家に隠れている民に向かって話しかける。
「フリハルトーンの民よ、町の中央広場に集まって下さい。依然として、この町は南大陸の連合軍に囲まれています。バラバラでは守りきれません」
家の陰から、今の戦いを見ていたのか、安心したようにゾロゾロと出てくる。
「イフレーレ。民達を護衛しながら、中央広場まで移動して下さい。そして広場で待機しててください」
わたしは、そう言い残し、エレストに会いに行く。敵はうさ角が蹴散らしている頃だ。エレストの屋敷に向かっていると、向うからエレストと家族が歩いてきた。
抱きつきたいのをぐっとこらえる。もうエレストは結婚して子供もいるのだ。
「エレスト、久しぶりです。民は防衛の観点から、中央広場に集めています。広場には1人ですがイフレーレと言う名の騎士がいます。彼女の強さは、わたしと同等ですから、ご安心を。うさ角は、そのままエレストに着いて行ってください」
そして町の周囲に点在する拠点を壊滅するため、エレストの脇を通り過ぎた。




