ベネツィオの解放戦線 その4
学園も途中で止めてしまったわたしに、戦争の絡んだ政治など無理だ。自分で行動を起こしておいて、これだ。ふふっ。自分勝手って素晴らしい。
乗馬が得意でないわたしを見かねて、領地グリスタールの女騎士イフレーレが手綱を握ると申し出てくれた。わたしは、いつものように前にちょこんと乗る。
「スイレン様が、ベネツィオのお話を何度もしてくれました」
なんと、女騎士イフレーレは、スイレンの一番弟子なのだ。本当は、東の前線に駆け付けたいところなのだろう。スイレンは敢えて、前線から弟子を遠ざけたんだよね? それなのに前線に連れてって怒られないかな?
軍馬は二人を乗せ領地イッシュベルへ疾走する。イフリアン王国でわたしを知らない人はいないだろう。途中で出会う人々を”悪の認識”でチェックして、敵意ある者や南大陸の連合軍には、容赦なく魔法でぶち転がしていく。
「ベネツィオ様の魔法も素晴らしいですが、剣技も見てみたいです」
騎士である以上、魔法よりも剣技なんだね。
例え全方位から矢で狙われても、崖から岩を落とされても、わたしの魔物たちが完璧に守り通してくれるのだ。
「ベネツィオ様の本職は、テイマーでしたね。剣技も見てみたいです」
そこまで言われたのなら、わたしは野営の設営が終わったあと、イフレーレと手合わせする。
「殺す気で来て下さい。そうじゃないと訓練になりませんから」
はぁーっと、イフレーレのは深く深呼吸する。閉じた目がカッと見開くと、青白い魔法剣が宵闇を斬り裂きながらわたしに迫るが、無造作に間合いを詰め優しく剣先に触れ、いなす。そのままイフレーレの腹に蹴りを入れる。
「どうした? まだ始まったばかりだぞ? 次だ」
30分もしないうちに、イフレーレはボロボロになり、大地に寝転がる。
「はぁ、はぁ…、手も足も出ない…いや、それ以前の問題…遠い…遠すぎる…」
「イフレーレ? わたしの眷属になりませんか? 通常は、魔法を伝授するのですが、あなたには、”剣の深淵”を伝授しましょう」
「”剣の深淵”??」
「はい。わたしが最強たる由縁であるスキルです。誰かに引き継がせたかった。あなたのように剣を愛する心があれば…」
「わ、私に剣を愛する心があるのでしょうか? そんな資格が…」
「ふふっ。わたしは、心の支配者ですよ? イフレーレが知っている以上に、イフレーレの心が手に取るようにわかります」
「ちなみに、”剣の深淵”は、どれだけ厳しい修行でも、手に入れることはできません。なぜ、わたしが持っているかも謎です」
「ベネツィオ様、お願いします。”剣の深淵”をお教え下さい。守りたい人たちがいるのです…」
イフレーレが心の眷属となった。イフレーレは、この戦争の後、南の大陸に渡り聖剣伝説を作るのだが…。それはもう少しあとの話だ。




