逃走
ベネツィオは後悔する。馬まで殺さなければよかったと。でも乗馬なんてしたことない!
アニタリアをおんぶしたスイレンと歩きながら、ベネツィオは考えていたことを伝える。
「あのさ、スイレン…。わたし、逃げようと思うの。いろんなことから」
約600人を殺し、人の姿も年齢も変え、死んだ人間を生き返らせる。はっきり言って化物だ。こんなのが人と一緒にいて良いはずがない。それに勝手に恨まれたり、わたしの力を利用したり、そんなことが人間社会にればずっと続くだろう…。きっと灰の眷属は、こういうことも指摘していたのだ。
今まで誰かに強要されていた人生だが、そこで出逢った人たちにも感謝している。だけど…一度全部リセットして、本当に大切な人だけを守ってあげたいし、これからも繋がっていたい。
立ち止まり、背の高いスイレンは、わたしを見下ろし睨みならが言った。
「うん。ベネツィオ…約束して、辛い時は、いつでも会いに来て愚痴を言うのよ? それが約束できないなら、私の命を賭けても行かせないわ」
「ありがとう。でも、楽しいときも遊びに行くかも…」
「それは問題ないわ」
「あの、このネックレスを学園長に返しておいて。それと、その子なんだけど…。この金貨100枚を寄付して、孤児院に預けられないかな?」
「心配するな。全部やっておくよ」とスイレンはニコリと笑う。
遠くから聞こえる馬の蹄の音。遠くてもわかるアルトの心音。早く逃げないとね! 「またね」とベネツィオは手を振り、スイレンと別れる。
ネックレスを外したのだ。これからは眷属狩りのハンターにも警戒しないとね。支援魔法で素早さを強化して走るベネツィオ。
さて、何処へ行こう? 本当は村の近くが良いけど、すぐに見つかっちゃいそうだよね。
大地に沈む夕日に向かって進むベネツィオだった。
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王国騎士団・第一部隊隊長ジェフレイジは、1人の少女の前で止まる。ベネツィオかと思ったが、全く別の少女であった。しかもこんな荒野を子供をおんぶして歩いているとは…。一体??
「おい、お前は…??」
「領地グリスタール、ライアール村、ツシキマ家のスイレンです。ベネツィオは全てを捨てて旅立ちました」
止まった? ベネツィオがいたのか? と、幌馬車からアルトが降りる。そこでジェフレイジと対峙するのは、ス、スイレン? アルトは無心で駆け出すと、スイレンを抱きしめる。
「どういうことだ? スイレン!! いや、そんなことはどうでもいい…。生きててくれてありがとう!!」
ジェフレイジは困惑するが、首を振り冷静になる。
「おい、ベネツィオを逃したのか?」
「ベネツィオを止められる者が、この世界に何人いるのでしょうか?」とスイレンは抱きついているアルトの肩越しに答えた。




