スイレン
魔法の箱に入ったベネツィオは、深い悲しみに捕らわれていた。中にはスイレンの遺体が保存されていたのである。
無残な遺体を前に、どうにか生き返らせることができないか思案する。いや…考えなくても命の眷属であるわたしにはわかっていた。人の魂が大量に必要なのだと。だが…そんなことをしてまでも生き返ったスイレンは喜ぶだろうか?
はぁ…。どうしたらいいもんかね。
うん? あっ、わたし…いつ出れば良いのだろうか? リーナのように外の情況を教えてくれる人がいないのだ。えっと中の方が時間が進むの遅いから…。そろそろ出ても大丈夫?
えいっ! と出る。
すると、約600名に周囲を取り囲まれた中央に自分がいた。あれれ? アルトたちは?
「ベネツィオ!!!! あいつを殺せ!!!」とセニシアルが叫ぶ。
おいっ! 引き渡せと…いや、公開処刑と言っていたな…。
「ワン!」「キュッ!」とメタフォとうさ角が吠える。うん? 任せろということ?
わたしは短剣を二刀流にして防御に徹することにした。
心のスキル、命の達観と無常の諦念が発動する。瞳の光がすーっと消え、殺意に満ち溢れる。
「メタフォ、うさ角。全員を殺しなさい」
命を奪いに来たものを生かして返す義理はない。もう人を殺さない理由を探さない。
メタフォの六本目の尻尾も剣だった。メタフォも二刀流だね!!
僅か5分。残りは…セニシアルだけになった。
「こ、殺さないでぇ…。や、やめろ!! あ、悪魔!!」と喚き散らすセニシアル。
「黙りなさい!!」わたしはセニシアルのほっぺたを叩く。
でも、どうしたものかと、悩む。わたしは命の眷属の力を使い、セニシアルを6歳の男の子にしてしまう。顔も変え記憶も消す。「あなたはアニタリアです。お父さんもお母さんもいません」と眠っている男の子に話しかけた。
灰の魔法を使い全ての馬や死体や装備を灰にする。これで証拠も残らないだろう。
魔法の箱に入ると、命の魔法とダンモフの新芽の力で、スイレンの遺体を修復する。そしてかき集めた魂で、スイレンの魂を呼び戻す。
冥界か天国か…何処からか魂が光の玉となって、スイレンの胸にゆっくりとふわふわと落ちてきた。それはすーっと静かに吸い込まれ、スイレンの心臓が再び動き出す。やがてスイレンの肌に赤みが戻り、静かに目を開ける。
「ベネツィオ?」いつも豪快なスイレンからは思いもよらぬ小さな声だった。
「うん。まだ本調子じゃないから、今は休んでいて」
そっとスイレンの手を握る。
「私、生き返ったんだね。わかるよ。ありがとう、ベネツィオ。みんなを悲しませちゃったみたい。アルトにね…死んでから告白されたんだよ」




