軋む世界
そんな再会を喜ぶわたしの前に、王国騎士団・第一部隊隊長ジェフレイジが現れ、わたしは早速王宮へ連行される。フィプスアローの転移の方が早いじゃん…と思いながらも、睨むジェフレイジが怖くて言い出せない。何度乗っても慣れない馬車に揺られ長く辛い旅が始まった…。
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魔導帝国ビルシュ・ベルの帝都ジェスタが沈黙した。その衝撃的なニュースが世界を駆け巡り、海を渡った遥か南にある大陸の連合軍にまで届いたのであった。
魔導帝国ビルシュ・ベルは、帝都を失ったこと、6名の最高魔道帝を失ったことにより、国としての統制が取れず大混乱の中、隣国であり敵国であるファースランド帝国により攻め込まれ、虐殺が繰り広げられていると各国の諜報部員が伝えていた。
さて、帝都ジェスタが沈黙していたのは…どの国がどのような手段を使ったのか? どの国々も注目するのは、魔導帝国ビルシュ・ベルの帝都へ火柱を落とすと宣言したイフリアン王国の魔道具を利用した会見だった。しかし無言を貫くイフリアン王国に対して、今度は各国が神聖国ノ−ブレディッシュを介し、情報の開示を求めてきた。
イフリアン王国としても回答できぬ理由がある。
「だって…知らないもん」とブリタルア国王は呟く。全く持ってその通りなのだが、学園長からベネツィオが目覚めたと聞き、フィプスアローの転移ではなく、ジェフレイジによる護送を命じたのもブリタルア国王だ。「だって…知りたくないもん」と呟いた。
この暴挙にもミラージェル王妃は相手にすらしなかった。確かに情報は欲しい。だがクズのブリタルアが言うことも間違っていはいない。だが今もうひとつ欲しいものは時間だ。今は、フィプスアローに依頼していたベネツィオの治療方法ではなく、過去に言っていた”十字路の鍾乳洞”への調査を許可していたのだ。この調査時間が欲しい。一歩間違えれば、イフリアン王国は幾つかの国から総攻撃されてもおかしくない情況なのだ。全く持ってこちらは被害者だと言うのに。忌々しい。
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領地ホーロヴェムから進行した騎士団200名・傭兵400名が待ち構える荒れ地の街道付近に、王国騎士団・第一部隊60名が近づいたのは、丁度昼に差し掛かった頃だった。
荒れ地の大岩に潜む騎士団たちに、周囲を囲まれる形になってしまった王国騎士団・第一部隊。
「我らの要求は唯一つ。悪魔の子、ベネツィオを引き渡せ。近頃国の揺るがす問題は全部そいつが仕組んだこと。今では外交問題までに発展している。公開処刑すべきだ」
聞いたことのある声だと思い幌馬車の窓から様子を見ると、ジェフレイジと対峙しているのは、セニシアルじゃない!!
外に出ようとするわたしの肩をアルトに掴まれる。「駄目だ、行くな。俺に考えがある。ベネツィオ、お前は魔法の箱に入っていろ」
魔法の箱に消えたわたしを確認するとアルトは幌馬車から降りる。
「よう、セニシアル。久しぶりだな。シルシニルの敵討ちか? そりゃ…いくらなんでもベネツィオが可愛そうじゃねーのか?」
「だ、黙れ!!」
「おっと、怒るなよ。俺達はベネツィオの護送なんてしてないぜ? 王宮へ帰還するだけだ。嘘だと思うなら、幌馬車の中を確認してくれ。セニシアル、お前の言う通りだ。今は国内で争っている場合じゃない。ベネツィオがいないことを確認したら、大人しく領地に帰ってくれ」
セニシアルの部下が幌馬車を確認するが、「セニシアル様、数名の男が乗っているだけです」と報告する。
元々隠れるような場所はなく、周囲を取り囲んでいるため、脱出もできないのだ。
「そんな…馬鹿な…」唖然とするセニシアル達を他所に、王国騎士団・第一部隊が動き出す。




