眷属の代償
「えっ!? そんな説明じゃ、全然わからないよ!!」
混乱する。灰の眷属は、決して悪い眷属ではない。だからこそ、わざわざわたしに忠告をしに来たのだと。だけど…。そのとき部屋のドアが開き、私が振り返ると、うさ角がわたしの胸に飛び込んできた。そして学園長イーノーベが入ってきた。
「ちっ! ハンターかよ…」
灰色の眷属は身構えると、わたしを庇うように学園長の前にダッシュした。しかし灰色の眷属と争う意志はないと学園長は首を振る。
「眷属よ。ベネツィオを助けてくれたことに感謝する。だから、今は争いたくはないさ。ベネツィオを助けるため、創造の女神に頼んでくれたんだろ?」
「あぁ…。なぜあの方を知っているのだ? いや、それはいい…。ベネツィオを見逃してくれるのか?」
「条件付きだがね。それに、眷属よ、お前さんの説明では、ベネツィオが理解できていない。いいかい? ベネツィオ。眷属にはランクがある。人間が女神と交渉して生まれる眷属は、眷属であるが不老不死ではない。しかし眷属が女神と交渉して生まれる眷属は、不老不死だ。つまり不老不死になったお前は、友や家族を看取り、それでも寂しくて人に近づき…お前がそれを耐えられなくなるまで同じ事を何度も繰り返し、幾星霜の果て…誰もお前のことを知らぬときが訪れる…そして死を望むだろう…。その一番最初の別れの悲しさから、ベネツィオを守りたいと…この眷属は言っていたのだよ」
「ごめんなさい。よくわからないわ。でも…だから…一緒に…側にいたいと思うんじゃないの?」
「この眷属は、それを経験してきたのだろうよ」
灰色の眷属はハンターを前にして、警戒心すら持てないほど動揺していた。無言でわたしを見るが、何も言い出せないでいた。
「ありがとう。でも…どうせ後悔するなら、自分で選びたいよ…。わたしは一緒にいたい」
「ふっ、そうかい。それならこれを渡そう。私がお前を見逃すのは学園の生徒でいる間だけさ。お前は学園の生徒を救ってくれたのだ。これぐらいの恩は返さないとね」
そいう言って学園長は、わたしに銀色のネックレスを渡した。
「眷属狩りのハンターってのはね、学園構内ぐらいの広さなら眷属の存在がなんとなくわかるのさ。ましてや、学園長室とこの実験棟ぐらいの距離なら、はっきりとした位置まではわからないものの、眷属がいる方向ぐらいはわかる。あとはその方向へ近づくだけさ。そのネックレスは眷属の気配を消してくれるというレアな魔道具だ。卒業する時はちゃんと返すんだよ」
「はい…。ありがとうございます…」
「おい、老婆よ、己の中の眷属に誓って、この娘が卒業するまでは手を出さないと誓うか?」
「あぁ…。眷属に誓ってな」
「そうか…ありがとう…」
ボフっと灰を撒き散らし、灰の眷属が消えた。
「さて、ベネツィオ。魅了のスキルを持っているお前の裸体を見ていると、この老婆でも辛い。いい加減服を着てくれないか?」
はいっ!? わ、わたし…全裸だった!! 慌てふためくが、冷静に周りを見ると、ここ! わたしの部屋じゃない!! しかも…ベッドじゃなく、治療台? それに…ナニコレ? 怖そうな手術道具だらけじゃない!!




