ブラックカードの世界 その7
”丸の中に十字のマーク”とは、魔導帝国ビルシュ・ベルの強硬派のシンボルとして有名だ。
王宮魔法使いフィプスアローは直ぐに、ブリタルア国王とミラージェル王妃の二人に報告する。
「マークがミスリードである可能性は?」ブリタルアはマークのみで判断することに慎重になる。魔導帝国が相手となれば、数百年と戦をしたことがない本国では、子供が竜に喧嘩を売っているようなものだ。いや、喧嘩を仕掛けてきたのは向こう側か…。
「ほぼありません。不用意にそのマークを使えば、彼らは全力で偽物を排除することで有名です。例えそれが敵国の利益に繋がろうとも」
「しかし、なぜだ? 突如、ビルシュ・ベルが仕掛けてくる理由がわからんぞ?」
「簡単ですよ。ブリタルア。ベネツィオが遺跡の件で使用した火柱が、彼らを刺激したのでしょう」事も無げに答えるミラージェルだったが、その表情とは裏腹に30時間、いやもう25時間後にどれほどの犠牲者がでるかわからぬ、非常な仕打ちに憤りと焦りを感じながらも、回避するための手段を思慮していた。
「ビルシュ・ベルは、確か…3つ、4つの国を挟んだ遥か北の国だ。あと数十時間で、どうしろと言うのだ!」
物に当たるブリタルアをたしなめ、ミラージェルは考えをまとめながら、フィプスアローに伝えた。
「本国は、魔導帝国ビルシュ・ベルと国交を持ちません。そこで両国の外交チェンネルを持つ、神聖国ノ−ブレディッシュを介し、一時的に外交ルートを作り出すのです。何としても、通信魔道具による三国間の協議を開始しなければなりません」
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「食料だと? ホーロヴェムの生徒は怖いね」アルトは召喚した魔法剣を相手に向けながら、一つ一つ確認していく。こちらは5人。相手は11人。スイレンがウーラに抱かれているため、相手側からは満身創痍のパーティに見えるだろう。この二点から相手が威圧的に出る理由もわかるが…。こいつらの目、既に何人か…殺しているな?
「そうだ、とっとと出せ。無駄な殺し合いはしたくない」
「ほぉ…。殺し合いね…。それだけの人数がいるんだ一方的な虐殺じゃねーのか? いや、戦いの最中で、仲間が何人か死んでくれれば、食料が浮くとか考えてるんじゃねーの?」アルトは煽る。王国所属の自分が、たかが領地出身の学園生徒などに遅れを取ることなどない。と、ウーラやスイレンと接した今、信じられなくなっているのである。まぁ、王宮魔法使いフィプスアローの手引があるのだ強いのは当然かとも思うが。兎に角、煽って、隙きを見せるのを待つ。
フェルスもアルトが時間稼ぎしている隙に考える。ブラックカードはこのダンジョンを200階建てと説明し、1日1階層を消すとも言った。つまりは、1階層を制覇するには、1日前後掛かるということ。たまたま俺達は短時間で2階にこれただけなのだろう。ベネツィオが食料をどの程度もっているか知らないが、ベネツィオの食料なしに俺達だけで、40階を制覇しなければならない。とても4日分の食料では足りないのだ。そう俺達も、目の前にいるこいつらのように、食料を奪わなければ餓死するときが来るのかもしれない。ならば、相手から喧嘩を売って来ている今のほうが、後々都合が良いのでは…。そう、こいつらから逆に食料を奪うのだ。
アルトと対峙していたホーロヴェム側数名の生徒が、気付かれぬように魔法を杖に込めていた。しかしフェルスもウーラも簡単には騙されない。基本魔法の電撃を放つ敵に対して、フェルスとウーラで、魔法障壁を作り出し防ぐと、アルトはその障壁を避けながら突進し、魔法を発動する前の敵の心臓を貫く。
ホーロヴェムの敗北の原因は、アルトを懐に入れてしまったことだろう。純粋な魔法使いでは、アルトの動きに付いていけないのだ。こうしてベネツィオの敵になる可能性があるホーロヴェムの人数を削り、少しの食料を手に入れることが出来たのだ。




