魔物たちと会話
少し運動すると目眩がして息苦しくなる状態から、さらに何週間が経ち、お婆ちゃんから狩りの許しが出た。魔法陣に乗る前、お婆ちゃんから、ヒントを貰う。
「お前の怪我で、わたしも反省した。何も教えなかったのは、お前に自分で気付いて欲しいからじゃ。でも、今回は少しだけヒントをやろう。まずは魔物たちと、しっかり話をすることじゃ」
お婆ちゃんは一旦話を切り、魔物たちを見回した。「いいかい、雪辱戦だ。ベネツィオの心と身体には恐怖が染み付いている。怖いという感情は、魔物に伝染する。覚えておくんだよ。あとお昼には帰ってくること」
砂浜に出ると、ダンモフが私の足元から登って、定位置の左腕に巻き付く。
「ダンモフ。お前は、わたしの役に立つために左腕にいるの?」と聞いてみる。
「モプー!」と元気良く答える。
お婆ちゃんの話によると、魔物は人間の言葉を理解している。だけど話す器官がないため、自分の考えや気持ちを言葉にできないのだという。だから魔物への質問は、”はい”か”いいえ”の二択にすることで、会話が可能だという。
「ダンモフは、攻撃型なの?」と聞けば、「モプー、モプー」と繰り返したので”いいえ”、つまり攻撃型ではない。ならば「防御型?」と聞く、「モプー!!」”そうだよ”と返事を返してくれるのだ。
「ねぇ、メタフォも、一緒に狩りをしてくれる?」と聞いても、無視…。である。気分屋さんにイライラしても仕方がない。「うん、わかった! 一緒に狩りをしたくなったら来てね」と言いながら鋼色の毛を撫でてみると、まんざらでもないようで、ちょっと嬉しそうだった。
最後にうさ角に話しかける。
「毎日、傷だらけでずっと頑張ってたもんね。今度は、わたしも頑張るから、一緒に狩りが上手くできるようになろうね!」とうさ角の火炎角は燃え上がり「キュッ!」と返事する。やる気が凄い!
海猿を発見し、ゆっくりと近づく。相手も警戒し止まる。ダンモフが左腕を揺らし合図をしてくる。えっと…どうしろというのだろう? 「腕を上げるの?」と聞けば「モプー!!」と返事をして、手首の方に移動してきた。モフモフと毛が膨らみ盾のようになる。
なるほど! 盾ね! わたしは腰の短剣を抜く。
海猿が初動なしの斬撃でくる!! 「ひぃっ!!」と無意識に左手を前に出し、目を瞑ってしまう。海猿の剣は、柔らかいダンモフの毛で勢いを殺され、硬いダンモフの甲殻にあたりキンッと甲高い音を出す。
「ガギャ!!」という断末魔が、砂浜に響く。うさ角が攻撃されたのではと? 恐る恐る目を開ける、海猿の胸部にはうさ角の火炎角の先端が出ていた。そして完全に息の根を止めるように心臓を燃やしてしまった。
どさっと海猿が砂浜に崩れ落ち、ドロップアイテム(昆布)と銅貨1枚に変換される。初勝利の瞬間だった。
ダンモフとうさ角を引き寄せ抱きしめる。嬉しさのあまり涙が出てきてしまった。わたしが怖くて何も出来ないのに、魔物たちはしっかりと働いてくれたのだ。あれ? でも…努力したのって、うさ角たちで、わたしは…何もしてない!!
お昼まで狩りを続け4体の海猿を討伐した。ドロップアイテムは、昆布×2、天然塩、小さな真珠と銅貨×4枚。
「お婆ちゃん!! 狩りできたぁ!!」と魔法陣から出るなり、叫ぶのであった。




