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主人公から見る現代日本の作品の騎士


 ここまでの話で騎士のイメージは変わったでしょうか。

 それとも事実の確認に終わったでしょうか。


 なろうの騎士の考察に入る前に、我々に最も大きな影響を与えたであろう作品の確認をしておきたいと思います。


 騎士が登場する作品は数多くあって、これを読んでいる皆さんの中にも、それぞれ思い浮かぶ作品があることでしょう。ここでは非常に沢山の人が触れたであろうゲーム作品を例に出して考察したいと思います。


 ファンタジーを題材にしたゲームと言えばドラゴンクエスト(以降ドラクエ)やファイナルファンタジーが代表的でしょう。ナンバーが2桁に届くほどヒットしたわけで、これらのゲームをプレイし冒険を味わった人は多いはずです。それはなろう小説にも大きな影響を与えたことでしょう。

 今回はドラクエに限って話を進めてみたいと思います。



 シリーズの中で騎士はどのように扱われたでしょうか。


 そもそもドラゴンクエストにはそこまで大きく騎士は登場しません。


 私自身が10以降のシリーズをプレイしていないので、少々偏った話になってしまうかもしれませんが、9までの中には騎士が主人公である、という設定は有りません。調べてみると11は騎士道がテーマになっているようです。


 悪と戦うファンタジーなのに、なぜ騎士ではないのかというと、大きな理由が2つ思いつきます。


 まず一つは、神話がモチーフになっているという点です。

 ドラゴンクエストにはロトシリーズと呼ばれる作品群(1,2,3,11の4作品)があり、主人公は勇者ロト、もしくはその先祖や子孫です。


 実はファンタジーを考察をする上でこの勇者という存在がなかなか曲者で、というのも歴史に明確に存在せず、出自も能力もあやふやで、いったいどのような存在なのかというのがいまいちつかみきれないのです。


 言葉としては勇者とは勇敢な者、勇ましく戦う人をいうわけですから、そこに血筋や才能などは関係ありません。

 しかし、ロトシリーズでは勇者の血筋を引く者こそが主人公であり、邪悪な存在を倒し世界を救う役割を負っています。


 ロトシリーズの主人公たちの特徴としては、神託を授かったり予言を受けたりして勇者として覚醒することが挙げられます。

 これはギリシア神話で、より上位の存在に神託や命令されて偉業を成し遂げた神々や英雄に似た部分があります。神話の中の英雄は、数々の試練を力と知略、神の助けによって乗り越えるわけです。勇者は人間ですから、英雄と非常に似ています。


 ではなぜ英雄と呼ばれず勇者なのでしょうか。これは単純に言葉の問題だと考えられます。英雄と言う言葉は、偉業を成し遂げた人に与えられる言葉です。つまり、英雄はそう呼ばれた時点ですでに何かしらの成果を挙げ、他人から評価されている状態にあるのです。

 例えばフランスの英雄、といえばジャンヌダルクでありナポレオンでありカールマルテルが思い出されます。英雄という言葉が使われた時点で、これらの人々が思い浮かんでしまうわけです。


 それでは操作キャラクターに感情移入してもらわなければならないゲームとしては困ります。プレイするのは現代日本に生きるなんの変哲もない一般人であり、世界的な名声を得た人間ではないのです。


 勇者は苦難の末に巨大な敵を打ち倒す力を手に入れる一般的な普通の人間でなければならず、始まった時に英雄と呼ばれていたら、既に何かやったのかしら、という事になるわけです。



 ドラクエの主人公達は何かしらの秘密がある一般人としてスタートします。

 そうすることで、プレイする人に強い共感を呼び起こすことができるのです。「特別な何かは持っていないけど、努力することで力を手に入れることができるんだ」という舞台設定に多くの子供はのめり込み、さらに隠された力が明かされることで、実は自分は凄いんだ、という思いを味わうことができるのです。


 これは重要です。


 なぜなら、何度も言うように、プレイする人は騎士ではないからです。


 騎士道物語は騎士や貴族相手に大うけしましたし、ロマン主義になっても富裕層が楽しむという域を出ませんでした。言い換えれば、騎士でない人に騎士道物語は受けないのです。一部のそこにロマンを覚える人はいいでしょうが、それでは代表されるほどの作品にはなりません。


 もちろん、騎士も血筋を根拠にした身分ではないので、誰でも条件を満たせば騎士になることはできたのですが、今の時代、騎士が何たるかは想像しずらく、操作キャラクタ―にするには役者不足だったのです。


 そのため、ドラクエの世界は近世の様相を呈しています。

 城に勤めるモブキャラクターの姿を思い出してみると、兵士であって騎士ではありませんし、国のトップは王様です。船に乗って世界中を旅する、違和感を覚える芸術的な装飾がない、教会が正しく機能しているという世界であり、大航海時代、ルネサンス、宗教改革を見ることができます。鉄砲が登場していませんが、それは魔法があるからとでもしておけばよいでしょう。


 また、良く知らないで書くので分かりませんが、もしシリーズナンバー11が、ドラクエ3の前の話で騎士が登場していたとなれば、そこの世界は中世であり、ドラクエシリーズ自体は近世が舞台なのだろうとすることができます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 史実の騎士や創作作品内の騎士についてまとめられて参考になりました。 [一言] ドラクエシリーズの勇者は小学生にも理解しやすくするために誕生したそうです。 ドラクエ1の時代はまだファンタジー…
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