怖い痛い辛い
重い足取りでインターホンの前に行く。
10秒ほど前に夏村とあん子と別れたばかりだ。
このインターホンを押せば、確実に演技に入る。
さらに家を出るときに母親を無視してしまったので、絶対に怒られる。
インターホンの前で押すか押さないか悩んでいると、中で掃除機を動かすような音が聞こえてきた。
――掃除中か……。
母親はもしかしたら掃除に夢中になり、莉子に怒ることを忘れるかもしれない。
もしかしたら怒られなくてすむかもしれない。
――今しかない、か。
意を決してインターホンのスイッチを押す。
掃除機の音は大きいので、インターホンの音も多少小さくなると期待したが、そんな期待はすぐに消えた。
インターホンを押した途端に掃除機の音は消えた。
「はい」
すぐに母親がでる。
「莉子、だよ……」
慌てて眼鏡をはずし、コンタクトを付けながら返事する。
「莉子ちゃんね、入りなさい」
「うん……」
ドアを開け、玄関に入り靴を脱ぐ。
かかとを揃え、はじによせる。
そしてリビングに入る。
「ママ、ただいま……」
できるだけ笑顔で言った。
が、母親の表情は怖いままだ。
「ただい、ま……?」
母親は掃除機を持ち上げたまま、なにも言わないで立っている。
「あの……」
どうしたのかと思い、一歩母親に近づくと母親の顔は一気に鬼のようになった。
「莉子ちゃん! どうしてママの言うことを聞かないで出ていくの?! どこかに出掛けるときは、必ずママに一言言いなさいって、小さい頃から言ってるじゃない!」
掃除機の柄の部分を振り回し、莉子の華奢な体を叩く。
「どこに行ったの?! 一人で行ったの?! それともお友達と行ったの?! 早く答えなさい!」
再び振り回し、莉子を叩く。
「ひっ……あの、住宅街……住宅街にある……」
「住宅街にある、何?! なんなの?!」
また叩く。
「うっ……その、く、くるくるろーるっていう……友達の、お店……」
「誰と行ったの?! 一人?! お友達と一緒?!」
まだ叩く。
「いっ……と、隣の、アパート、の、み、三好、夏村ちゃんと、あ、あん子ちゃん……」
「くるくるろーるって何?!」
今度は掃除機の本体を使い、莉子の腹部をつく。
「うぷっ……ロ、ロール、ケーキ屋さん……。マカロンとか、ケーキとか、食べさせて、もらった……」
「お金も払わないでそんなことしたのか?! 明日学校に行ったらお金払いなさい!! 絶対よ! 絶対払いなさい!!」
さっきよりも激しくつく。
腹部を刺激されることにより、胃袋に入ったものがでてきそうになる。
「ママに謝りなさい! ママの言うことを聞かなくてすみませんでしたって、言いなさい!」
胃袋に入ったものが逆流しそうになるのを抑える。
変わりに涙が滲み出た。
「マ、ママの、言うことを、聞かなく、て……すみません、でした……!」
「次からは気をつけなさい! いいわね?!」
「わかり、まし、た……」
母親が掃除を再び開始したのを確認し、洗面所に向かう。
逆流しそうになるのを抑えることを止め、一気にだす。
「げほっ、げほっ、はぁ、はぁ……」
口の中が酸っぱくなり、涙が溢れ出る。
苦しい。
苦い。
辛い。
――誰か助けて。
だがそんな想いは通じるわけがない。
――もう嫌だ。
口の中を濯ぎ、少しすっきりすると部屋に戻った。
今日は母親の顔を見たくない。
部屋のドアに内側から鍵と南京錠をかけ、さらにつっかえ棒をかけて誰も入ってこれないようにする。
こんな日のために、莉子の部屋には保存食や水が置いてあった。
もちろん母親に見つからないところに。
なので、食料の心配はいらない。
そして問題は風呂とトイレだが、こちらも心配御無用。
莉子の部屋には風呂とトイレに直通する通路がある。
前にこのようなことがあったため、改造しておいたのだ。
――今日は引きこもろう。
まだ攻略していないゲームを開始した。
暗い話になってしまい、ごめんなさい!
これから明るくなります多分!
ジャンルがコメディーのくせに、つまんねぇわ!
って思ったら、意見とかばんばんください。
ジャンル変えたら? とか、なんでもいいです。
改善できるようがんばります。




