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第9話 オタの欲しいもの

朝。

オタは、6時ちょうどに目覚めた。

スマホのめざましタイマーのお陰である。

今日は、特別な日だ。

寝過ごすわけにはいかない。

気合を入れて、パジャマから、私服に着替える。

その後、洗面台に行き、顔を洗い、歯を磨く。

「待ってろよ〜」

興奮気味に、つぶやく。

「…あ、朝早いな。オタ、おはよう」

「おはよう〜、ライラ」

「…こんな風に、朝の挨拶をするなんて。ワタシたちは、まるで夫婦のようだな」

朝から、ライラは、顔を赤くする。

「ボク、今日、一人で葉原に行くから。弟子二人の面倒見ててね〜」

「な、何だと!」

急ぐオタに、ライラがしがみつく。

「浮気か!葉原で、新しい女の娘と朝デートか!」

「な、何言ってるんだよ。ライラ〜」

もみくちゃになる、オタとライラ。


しばらくして、ライラを落ち着かせたオタは、理由を説明する。

今日は、オタが欲しいプラモデルの発売日なのだという。

『パーフェクトファンダム』

初プラモデル化の、新商品だ。


第9話 オタの欲しいもの


「何で、止めるんだよ〜」

「…だって。オタの欲しいプラモデルの新商品は、毎回人気が高くて、朝から大行列なんだろう?」

「そうだよ〜」

オタの好きなプラモデルは、アニメおたくにも人気が高いものばかりだ。

当然のように、発売日には大行列を作る。

在庫制限もあり、行列にならんでも、買えないこともある。

オタも、何度か品切れで、買えなかったこともあった。

「オタ…。お前、買えない時、いつも泣いて帰ってくるじゃないか。辛いことは、ワタシとしては、やめてほしい…」

「はあ?買える時だってあるよ。止めないでよね〜」

オタとライラの言い合いを、二人のアンドロイドがのぞき込む。

「…師匠?」

「…オタ様。どうしたのデスカ?」

オタの弟子二人は、心配そうな表情を浮かべる。

「ああ!時間が無い!ボクは、行く!」

慌てて自分の部屋から、愛用のリュックサックを背負って出てきたオタは、そのまま、葉原へ直行した。


葉原。

ホビーショップ地下のファンダムカフェ。

「…駄目だった〜。もう、おしまいじゃ〜…」

世界が終わったかのような落胆をするオタ。

「泣くな。オタ」

ライラは、その背中を優しく、さする。

「師匠。お気を確かにしてください」

「オタ様。元気だすデス」

ヲタク2号とヲタク28号は、元気をうながす。

ほしいプラモデルを買えなかったオタは、女の娘三人に囲まれながら、泣いていた。

「ボクの、パーフェクトファンダム〜」

「再入荷するのだろう?その時を、待とう」

「う、うん」

オタは、泣きながら、オレンジジュースを飲む。

ファンダムカフェの、オレンジジュースは美味しいのだ。

「…ここは、気分を切り替えて、他のこと考えよう」

そういえば、今日は、おたく仲間の男樹竜助が欲しがっていたゲームの発売日でもあった。

オタは、それを、思い出す。

男樹の欲しいゲームは、古いRPGのリメイクだ。

「男樹のやつに協力して、リフレッシュじゃ〜」

オタが、やる気を取り戻した。

ライラたち女の娘は、それを、素直に喜んだ。

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