第5話 乙女蝶婦人
「ワタクシ、乙女ですの!」
乙女蝶麗子。16歳。
通称・乙女蝶婦人。
金髪ブロンドウェーブヘア。
真白な、ワンピースが麗しい美少女。
ゲーム会社の社長令嬢で、大豪邸に暮らしている。
大のアニメおたく、お嬢様。
好きなアニメは、『テニスをねらえ』だ。
彼女は、優雅な身のこなしで、葉原のアニメショップへ、入店した。
「乙女アニメグッズは、どこですの?」
乙女蝶婦人は、付き人の二人の若い執事に、問いかける。
執事A・強木。
執事B・弱木。
「あちらでしょう…」
「こちらかもしれません…」
二人の執事は、意見がそろわなかった。
キラッ
乙女蝶婦人は、瞳をキラつかせる。
「ワタクシ自身で、探します」
そう言うと、乙女蝶婦人は、一人で店の奥へ向かった。
第5話 乙女蝶婦人
葉原の一番大きいアニメショップ。
仕事がある男樹と別れた、オタとライラとヲタク2号は、店内に入った。
すぐに、ライラが、ガチャガチャエリアに駆け寄った。
「ワ、ワタシ、ガチャガチャが良いな…。オタ、五百円玉をくれ!」
「良いよ〜」
オタは、ポケットから財布を取り出す。
五百円玉を取り出して、ライラにあげる。
「これ、プレゼントね。ガチャガチャ好きだもんね~、ライラは」
「そうなんだ。大好きなんだ」
ライラは、にこにこしながら、ガチャガチャを一つ一つのぞき込む。
「ガチャガチャ…?」
「知らないの?」
オタに聞かれて、ヲタク2号はうなづく。
オタは、ガチャガチャとは、手のひらサイズのマスコットとかが入ったものだと簡単に説明する。
「アニメ系なアイテムが、カプセルの中に入ってるんだよ〜」
「…カプセル?」
「そう」
「…カプセルに入っているのは、辛いですよね」
「何?設定?アンドロイドの悩み?」
「はい。アンドロイドの私は、誕生してから、ずっとカプセルの中にいました」
「あ〜。そうなんだ〜。そういう設定ね」
オタは、腕を組んで、何度もうなづく。
「ヲタク2号は、本名なの?」
「はい」
「ネームセンスの無い、名前だね〜」
「私の名前は、安室博士が、ただ形式的に名付けたものですから」
未来で誕生してから、カプセルの中だけで過ごしたヲタク2号は、外の世界のことをほとんど知らない。
未来世界のことも、くわしく知らないのだ。
ただ、お金持ちに仕えるアンドロイドとして、AI学習を繰り返してきた。
落ちこぼれであった、頭脳指数の低いヲタク2号は、お金持ちに仕えるレベルにまで、なれなかった。
だから、廃棄される寸前だった。
その時、生みの親である安室博士は言った。
「タイムワープして、大好きなファンダムのいる世界に行きなさい」
そこで、恋したファンダムのことを追いかけなさい。
「アニメファンになりなさいと、言われました」
「へ〜。そういう設定なんだね。わかった」
オタは、ヲタク2号のことが、ちゃんとわかった。
「一緒に、アニメファンとして、頑張ろう〜」
えい、えい、おー!
右手を、三回振り上げる。
オタは、ヲタク2号にも、一緒に右手を振り上げるように、指示する。
「アニメファンは、楽しみながら、元気良くしなきゃ駄目なんだから〜。弟子〜」
「…あ、はい。わかりました。師匠」
えい、えい、おー!
オタとヲタク2号は、アニメショップのガチャガチャエリアで、大きく右手を振り上げ続けた。
「…乙女ですが、うるさいですのよ!」
そこへ、金髪ブロンドウェーブヘアの乙女蝶婦人が、乱入してきた。




