終末の娯楽
山に行ったけどなんの成果も得られないまま…。
唯一の進展…と言っていいのかはわからないけど、新月の夜に行ってみようって話になったくらい。
なんだけど…。
一度拠点に戻って新月を待つ間に色々と準備やら日々の生活のためにアレコレしてるうちに雪が降りだしてしまった。
「これは結構降りそうだね」
「だろうね…」
ここらあたりは現実の方でも結構雪が降るし、積もる。山になんてとてもじゃないけど行けるわけがない。
相談した結果、冬の間は諦めてこの拠点で生き延びる為に頑張るしかないという話でお互いに納得。
未だに近所のスーパーやコンビニなんかも商品が補充されるから特に困らないんだけど、問題があるとすれば娯楽か。
テレビやラジオなんかは当然何も映らないし何も聴かせてはくれない。しかも段々と外に出るのも億劫になるくらいには雪が積もる。
人がいないのだから、当然除雪作業も行われる訳もなく。そうなると車で動くなんて不可能な訳で。
元々ここで生まれ育ったあたしたちには雪なんて珍しくはないものだから雪で遊ぶのもすぐに飽きる。雪で喜ぶほど子供でもないし…。
拠点にしてる大きなトレーラーハウスも暖房が効くとはいっても、底冷えして寒い。
そうなるとする事なんて限られてくる。
「カオリ…」
「ユカリ、もうホント加減して?」
寒い地域では初体験が早いなんてのは聞いたことがあるけど、この数日はそれも仕方がないのかと身を持って体感してる。いや、させられてるといったほうが正しいか。
「だめ…?」
「また傷の完治もしてないんだよ?加減してくれるって言ったくせに…」
初めは遠慮してたユカリを見かねて誘ったあたしも悪かったんだろうけど、流石に毎日は保たない。
しかもかなりハードなんだもの。
「他にすることないんだから仕方ないでしょ…」
「そんな理由であたしはめちゃくちゃされてるの!?流石に傷つくよ?」
「違う! 違うけど…。 大好きなのは疑われたくない」
「本当に?」
「本当!」
まあ実際、暇を持て余してるのは事実なのよね。
「他に何かしようにもスマホで動画も見れないし…」
ネットつながらないからね。大好きなオカルトちゃんねるも見られないと嘆いていたっけ。
外がリアルオカルト状態なのに物好きが過ぎる。
「よくわからないカードゲームも飽きた!」
コンビニでもらってきた可愛らしいモンスターキャラのやつね。遊び方がわからなくて同じ絵柄を2枚ずつまとめてトランプのようにしてただけだから無理もない。
あ、ゲームか…。
「ねえ、ユカリ。 近くに家電屋あった筈だけど、明日行ってみない?」
「なんで?必要なものはあるし、トレーラーハウスだとは言っても、あまり大きな物は置く場所も無いよ?」
「家電じゃなくて。 ほらちょうどあたし達がこちらへ来る前に新しいゲーム機が発売されて、品切れで手に入らないとか話題になってたやつあるじゃない」
「スティッツ2の事?」
「多分それ。こっちも入荷してたりしないかな?」
「あれ、うちの実家でも取り寄せの要望が多くて、いつも注文書に書いてたけど手に入らないとか言ってたなぁ。んで、私にもそっちで買えないか?って連絡きたっけ…」
「買えたの?」
「まさか。入荷日も公開されなかったりとかで、いつ出るかもわからないものを社会人が買いにいけるわけ無いでしょ。何度か仕事帰りに寄ってみたりはしたけど、売り切れの張り紙しか見てないね」
「こっちでなら手に入らないかな? 冬の間の時間つぶしに良くない?」
「いいね。 確かすぐ近くに家電量販店あったもんね。明日雪がひどくなかったら行ってみよ!」
良かった。ユカリが食いついてくれて。
冬の間中弄ばれたら身が持たないところだったよ。
翌日は幸いにも雪は止んで晴れた事もあり、ちょうど開店時間に合わせてつくよう、歩いていってみた。車が動かせないのだから仕方がないけど。
「人が動かない所で雪が降るとこんな事になるんだね」
「本当に…」
「帰ったら着替えてシャワーだね。カオリ?」
「う、うん…」
これ、ゲームがあれば…なんてのは甘かったかもしれない。
深い積雪のせいで予想以上に移動に時間がかかり、開店時間を大きく過ぎての到着になった。
店は人もいないのに当たり前に照明がついてて、自動ドアも開くから店内へ。
警戒したけど店内に動くものはなく、無事におもちゃコーナーへとたどり着いた。
大きく貼られている張り紙。やっぱり扱ってるね。ただ…
「これ、どう思う?」
「入荷しましたーだって。良かったね!」
いやそうじゃなくて…。こういう張り紙まで更新されてる事に突っ込んでほしいのだけど…。
あたしのそんな思いを無視するようにユカリはゲームコーナー…ではなく、レジの後ろから本体とゲームをいくつか物色してる。
もうこういう行動に躊躇いもなくなったなぁ…と、こそ泥みたいな動きをしているユカリを眺めてた。
「カオリはなにかやりたいゲームある?」
「一緒に遊べるものがいいかな。あたしはゲームに詳しくないから教えてくれないとやれないし」
「はいはーい!」
ゲームに関してはあたしよりユカリのが詳しいからね。
家にも持ってるのはユカリだったし。部屋に夕飯を作りに行って一緒に食べたあと、遊んだこともある。
レジ近くには、ゲーム以外にも新入荷! と書かれたコーナーがあって、そこにはプラモデルっていうのかな?それの箱がいくつも積まれてて…。
「あっ!」
まさかだった。あたしの軽キャンの元になった車のプラモデルがあって、つい手にとってしまった。
うちの子だ…! って。 しかも色まで同じ。
作ったことなんてないけど、これもなにかの縁…。そう思って貰っていくことにした。
「カオリは何持ってんの?」
「これ…」
「あー! カオリの愛車! すご…なんか運命的だね」
「でしょ? なんか欲しくなっちゃって…」
「作るのならいくつか必要ものがあるよ?」
「そうなの?」
「うん。ついてきて」
ユカリに案内されて、ニッパーという工具とか、ヤスリ?とか色々と渡されて箱の上に山積み。
「詳しいんだね」
「うちはほら、兄さんが車好きだからこういうのも手を出してたし。実家では取り寄せたりもしてるから手伝ってると自然に詳しくなるんだよね」
「ああ…」
ユカリは”私もまたなにか作ってみるかー”とか言ってプラモデルまで物色を始め…。
最終的に大きな袋で2つ分を雪の積もる中抱えて帰るハメになり…。
しかも途中から雪が振り始め、拠点に帰り着いたのはお昼もとっくに過ぎて夕方近くになってからだった。
「はぁ〜! つっかれたー!」
「本当にね…。こんなに抱えてくるんじゃなかったよ」
「まぁまぁ。これでしばらくは暇も潰せるんだし!」
楽しそうで何よりだよ。あたしはもう早くシャワーで身体を温めたい。
芯まで冷え切ってる気がする…。
「ほら、行くよ?」
手を掴まれては逃げ道もない。
「うん…」
冷えてるのはユカリもだから、狭い中二人で入るしかなくて…。
そんな状況でユカリがおとなしくしてるわけもなく。
雪の中荷物を抱えて帰ってきたところを、次はシャワールームで散々ユカリに弄ばれて、もう体力も限界。
トレーラーハウス内で、もうベッドのままソファーに戻されることもなくなったベッドでぐったり。
当のユカリは元気いっぱい。早速貰ってきた物を”開封の儀ー”とかいって楽しそうに開けてる。
あの体力はどこから来てるのやら。
「カオリは開けないの?」
「そんな気力ない…」
「じゃあカオリのゲーム機も使えるようにしておくね」
はい? え、二台も貰ってきたの!?
まぁ、今更一台も二台もかわらないんだろうけど…。
ぐったりと横になりながら、楽しそうに色々と準備するユカリを眺めてた。
疲れるってことを知らないのか、この子は。
「はい! これカオリのね」
手渡されたから重い身体をなんとか起こして受け取る。
「重っ…ゲーム機ってこんなに重いの?」
「今はバッテリーとか画面とか色々あるから仕方ないんじゃない?」
あたしはスマホくらいの感覚しかないから余計かも。
画面も仕事で使うパッドくらい大きいし…。
「二つも必要だったの?」
「当たり前だよ。一緒に遊ぶんでしょ? 本体が二つある方が選択肢が増える!」
そういうものなのね…。
「はいこれ! ゲームね」
手渡されたものを受け取って、パッケージを見た瞬間、ユカリの正気を疑った。
「あたしユカリが時々本当にわかんない」
「なんでよ?もっとわからせようか?私の愛を!」
「そっちじゃなくて! 今のこの状況で、よくゾンビ物のゲームをチョイスしたね!?」
「楽しいよ?これ。 サバイバルしながら色々クラフトして生き延びるの! これからのヒントにもなるから」
ゲームとリアルを一緒にするなって教わらなかったの!?
なんて思ってたんだけど…。
実際に遊んでみたら、保存食作りとか、応急手当とか…。やたらリアルで参考になるのが腹立ってきた…。なによこれ…。
「役に立つでしょ?」
「悔しいけど否定できない…」
このゲームを作った人はこちらで体験したのでは?と疑いたくなるくらいにはリアルなのよね。




