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終末世界を女二人、軽キャンで  作者: 狐のボタン


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12/24

終末の温泉と



隣街へ向かう道の途中、県をまたいですぐの静かなところにある道の駅。

駐車場へと入ると、数台の乗用車とトラックが停車していた。

記憶より賑わいがないのは当然か…。世界がこんな状況なんだから。

ここってすごく人気の道の駅だし、温泉やシャワーもあるから車中泊する人も多い。

本来ならば…。


「暗くなってきたし、奴らの行動時間だから気をつけよう」

「そうね…。ってやっぱりそれ持っていくの?」

「備えておかないと」

ユカリはガッシリとした木の柄を握りしめる。

使う羽目にならないのが一番なんだけど…。


窓から外を窺うと、駐車場は街頭に照らされ、建物の方もしっかりと照明がついてる。

ぱっと見、奴らが歩いてる姿は見えないけど…。

「カオリ、こっち見て」

ユカリに呼ばれて助手席側へと身を乗り出して外を見ると、街灯の光の届かない場所に何人かウロウロしている姿が。

「あれ、カオリはどう思う?」

「照明の明かりを避けているように見えるね」

初日に車のライトで照らした時は避ける素振りも見えなかった気が…ってあの時はユカリが直ぐにクラクションを鳴らしてそっちに反応してたから判断できないな。

後はユカリの実家で、奥から出てきて追いかけてきたのもあの後どうしたか確認してないし。

そんな余裕もなかったから…。


「どうする?ユカリ」

「新聞には奴らの習性みたいなのについては言及されてなかったから。今後のためにもここから観察してみよう」

あまり見ていたいものでもないけど、身を守るためにも知っておく必要はあるものね。



しばらく見ていてわかったのは、アテもなく歩いているようにみえて規則性があること、そして何より一定以上明るい所は必ず避けている。

特にここの駐車場は結構明るくされているのもあるからかもしれない。

「降りてみようか」

「わかった…」

二人で同じドアから降り、なるべく音をたてないよう静かにドアを閉める。

これくらいの音には反応しないらしい。


「常に明るいところを歩こう。ついてきて」

農具の柄を握り、先を行くユカリから離れないよう歩き、道の駅の店舗へと近づく。

外から見る限り、明るい店内に人影はない。

立ち止まったユカリはスマートウォッチで時間の確認。

「17時半か…二時間半くらいしかないけどどうする?」

「うん?」

「ここの閉店時間が20時なの。仮に私達の世界から何らかの影響があるにしても、閉店時間になったら照明消えるよね?」

「ああ…。なんか当たり前に思ってたけど照明がついてるのがそもそもおかしいのか」

「そういう事。カオリはここに来たことは?」

「隣町へ向かう時には毎回休憩してたよ」

「…へぇ〜。一人で?」

「当然。休みの日はかなり混んでたから、本当に小休憩程度だけどね」

「なにか便利なものとかある?というか私達の世界との大きな違いはある?」

「うーん…寄ってたのは明るい時間帯だからあまり差についてはわからないけど、外には足湯と、24時間使えるシャワールームとかがあったよ。車中泊する人には便利だなーって見てたから覚えてる」

「温泉がだめならそっち使おうか」

それもありかもしれない。なによりのんびり温泉に入るってのも危機感なさ過ぎる気もするし。

なんて言いながら二人とも着替えとタオルは持参してるんだけどね。お風呂に入りたい気持ちは誰だって理解してくれるはず。


一応温泉も見てみようとユカリに言われ、そっちへ向かったんだけど…。

更衣室は明るいからか一人もいなくてホッとしたのに、温泉の方は目を覆いたくなる光景だった。

「最悪じゃん」

「もう行こうよ、ユカリ」

「そだね。温泉、入りたかったなぁ…」

「先客がいるから諦めて」

「うつ伏せで浮いてるのを先客とか言わないで」

敢えてはっきり言わなかったのに…。

水は苦手なのか、実際に目の前でウロウロしていたやつの一人が足を踏み外し、バシャーンと湯船へはまった。

「ひっ…」

声を上げそうになり、とっさに口を手で押さえる。

その間にもはまった奴がしばらくジタバタとしていたけど、すぐに動かなくなった。


「死んだのかな…」

「そもそもゾンビって生きてるの?」

あたしに聞かれても…。そういうのはユカリのが詳しいでしょ。


そんな温泉には当然入る気にもなれず…。

お土産屋で食料になりそうなものをいくつか貰い、外にあるシャワーへと向かう。

「交代で見張ろうか。先にカオリが使っていいよ」

「ユカリ…」

「仕方ないなぁ。そんな顔でイヤイヤって首を振られたら誘ってると判断しちゃうよ?」

そうじゃないんだけど、あんなのを見たあとに一人になるのは無理…。



いくつかあるシャワー施設の中でも大きめのを選んだ。二人で入るのなら広いほうがいいし。

ただ、シャワールームの扉には説明書きが貼られてて…。

「利用するには自販機で専用のコインを買うか、店舗で購入するようにって…」

「これでしょ?」

「いつの間に…」

ユカリの手には数枚のコイン。

「お土産見てる時にみつけてさ。絶対に必要だろうと思って貰ってきた」

「頼りになりすぎるよ…」

「惚れ直した?」

「かもね…」

「ちゃんと言って」

「惚れてるよ、これでいい?」

「ま、いいか。今はそれで」

恥ずかしい事言わせないでよ。



コインを使いロックを解除して二人で個室に入り、中からしっかりと施錠。

入れた枚数で利用時間が決まるらしく、ユカリはもらってきたコインを全部投入してた。どれだけいるつもり!?

表示を見ると120分って…ご休憩じゃないんだから。

でもゆっくりできるならいいか。今は待ってる人がいる訳でもいないし。


扉を入った中は狭いながらにも脱衣所と服を入れる籠、壁には鏡と化粧もできるテーブルスペースもあり、スモークガラスの引き戸の向こうには一人なら普通に入れるくらいの浴槽付きシャワーユニットとでも言えそうなものが。

「へぇー。結構しっかりしてるね。浴槽にも浸かれそうじゃん」

「個室だしこっちのが安心だよ」

なんだかホッとして添え付けの椅子に座り込む。


「お湯入れておくね」

「ありがとう…」

お湯を出す音が心地よく聞こえるなぁ。

「大丈夫?」

「なんか気が抜けちゃって…」

「気持ちはわかるよ。完全な個室だもんね。先にシャワーで身体洗おう?背中流してあげる」

「私も…」

脱いだ服を籠へ入れて、タオルだけ持っていく。


「わざわざタオルで隠さなくてもいいのに」

「気持ちの問題! ユカリみたいに堂々と見せれるほどあたしはスタイルよくないの」

「そう?グラマーでスタイルいいと思うけど」

「あたしはユカリみたいなスレンダーに憧れるけどね」

「みんな無いものねだりかー」

「かもね…」


ユカリにレディファーストだとか言われて先に身体を洗われ、あたしがシャンプーしてる間にユカリは身体を洗ってる。

「あたしも背中流すよ」

「ほんと? じゃあカオリの身体でお願い」

「はい? どういう意味…?」

言ってる意味がわからなくて説明を聞いたら、ため息しか出ない。

「ユカリってさ、美人なのに言動がスケベオヤジみたいなの何なの…?」

「ダメ…?」

あぁもう! やればいいんでしょ!? まったく…。


恥ずかしいのに耐えてなんとかユカリの願いを叶え、浴槽へと逃げる。

「短いよー」

「うるさい! あんまり調子に乗るとさすがに怒るよ?」

「はーい…。でもこれで一つ夢が叶ったよ、ありがとう」

そんな嬉しそうにされたら怒れなくなるじゃない。


浴槽に浸かりながら髪を洗うユカリを眺めてたら、キレイだねって声に出しそうになってハッとなり

、突然もの凄く恥ずかしくなってきた。

今までも一緒に旅行とかいって温泉に行ったこともあるし、初めて見たわけでもないのに…。

関係が変わるとこんなにも意識まで変わるものなの?


その後、洗い終わって浴槽に来たユカリは過去いちで甘やかしてくれた。











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