表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お華の髪飾り  作者: 本隠坊
24/37

㉑天保の擾乱・中編

(1)


 お華は、三日ぶりに八丁堀、浩太郎の屋敷に居た。

 遠山家の手伝いを浩太郎に申し付けられ、奥方おけいと一緒に、屋敷で来客の対応をしていたのだ。

 三日経ち、もう良いだろうということで、戻って来た。

 何はともあれ、浩太郎に報告という事で、屋敷の居間に座っている。

 そこに、浩太郎も戻ってきて、おみよに優斎を呼んで貰い、話を聞くことにした。


「これはお華さん。お疲れ様ですね」

 優斎の言葉に、お華も嬉しそうに、

「ありがとうございます。先生」

 と、和やかに二人並んで座っている。

 おさよが、おみよと一緒に、酒と肴を運んできた。

 正面の浩太郎が、

「お華。どうであった遠山様の屋敷は」

 すると、お華は手を振って、

「もうね。正月のご挨拶といったとこよ。いや、奥様にお聞きすると、正月より多いと、嘆いてらっしゃったわ」

 そして、

「遠山様は大目付様なのに、大名だけじゃ無くて、なぜか、旗本の方々まで大勢いらっしゃるから大変でしたよ」

「ほう。そこまで。で、要件はみな一緒かい?」

 お華は大きく頷き、

「もうね。同じ事の繰り返し。挙げ句の果てには、私、この私によ、何とかなりませんでしょうかとか聞くんだから。そんな事言われてもねぇ」

 それには、浩太郎と優斎は大声で笑った。

 つづけてお華は、

「奥様はね。武家は何かと出費が多いし、仕方無いのよ。と仰るんだけど、あれだけ同じ事聞かされると、何とか出来なかったのかしらって、なんてつい考えちゃう」

 優斎が頷き、

「その辺は、江戸だけで無く、仙台あたりでも同じですからね」

「まあな。しかし、そんなんじゃ、かなり評判が悪いみたいだな」

 お華は頷き、

「悪いどころじゃないわよ。結局、遠山様に、是非、お味方をなんていうから、殿様は、戦国か? なんて仰ってるし」

 それにはみんなで大笑いだ。

 

 酒をみんなで呑みながら、お華が優斎に、

「そういえば、先生。伊達様お留守居役の白井様もいらっしゃいましたよ」

 それには、優斎も大層驚き、

「え! 白井様も?」

「殿様が私に一緒にお会いしろなんて仰るものだから、ご挨拶させて頂きました」それには、浩太郎とおさよも驚き、

「おいおい、そりゃまた、身分違いもいいところじゃないか。おい! まさか南の件で?」

 お華は、一気に猪口を空けると、頷いて、

「そうそう。なんか一生懸命お詫びを仰るから、私もどうして良いか分かりませんでしたよ」

「それじゃ、遠山様も、例の件ご存じで?」

「ええ。それにはお二方とも大笑いなさって……。まあ、私は、おみよちゃんがお屋敷に伺っているし、今後ともよろしくとご挨拶しておきました」

 それには、おさよの隣に座っているおみよが、

「お姉さん。すみません」

 と頭を下げる。

 それには、お華は笑いながら手を振って、優斎に、

「先生。やはり、伊達様も今後が大変だと仰ってましたが、やはり、このままでは済まないということでしょうか?」

 優斎は真剣な顔に変わり、

「そうでしょうね。江戸の飛び地は常陸にあるのですが、それより問題は、上方ですから」

「ああ、そのように仰ってました」

 すると浩太郎が、

「やはり、お家にとって大変な問題になりそうかい?」

「ええ。昔からの土地なんて言い伝えは、どうでもいいのですが……」

 それにはすかさずお華が、

「あ、太閤様からの土地ですか?」

 それには、みんながビックリして、優斎を見る。

「お聞きになりましたか」

 と少し笑い、

「伊達家に限らず、上方にある飛び地というのは、どこも似たようなものです。いや、それより問題は、そう言った土地は、表高より実高が良く、しかも大坂に近いと言うことが、最大の問題なんですよ。これをいじられると、各大名の台所は大変な事になります」

 浩太郎は腕を組み、

「なるほど。とすると、また参勤しないとかいう騒ぎになりかねないと」

「そうですね。伊達だけの話じゃありませんから、些か面倒な事になると思います」

 すると、頷いた浩太郎は、決断した様に、

「お華! お前はしばらく奉行所の仕事はしなくて良い。そのかわり、遠山様のお屋敷に伺い、また奥様のお手伝いをせよ」

「え! それでいいの?」

「ああ。そして、何か間違いが無い様、屋敷の周りも警戒せよ。佐助を毎日、連絡に寄越す」

 こうして、お華は、また翌日から遠山の屋敷に行くこととなった。


(2)


 その同じ頃、南町奉行所の、役宅には、奉行鳥居の所に、幕府、天文方見習、そして書物奉行を務める、渋川六蔵が訪れていた。

 この男は、商人で、金座・銀座を支配していた後藤三右衛門と供に、身分は低いが「水野の三羽烏」と呼ばれた男であり、忠邦の改革を陰から支えている。 

  鳥居は、

「渋川殿。改革もようやく目鼻が付きましたな」

 と、不敵な笑いと共に、話しかける。

 しかし、渋川は、

「いや、まだまだ油断は出来ぬ。一応、江戸の者達は、殿の仰せに従ってくれているが、まだ伊達の様な大藩は、答えを留保しておる」

「ああ。あのような家の連中は、何かにつけ拘るからの。しかし、もう水野様は二回の上地もしておられるし、そうそう無茶も出来まい」

「確かにそうなんだが、例の密偵で使っているあの連中」

「ああ、あの貧乏御家人か?」

 渋川自体、それほどの身分ではないから、鳥居のその様な言い方は、余り好きではないのだが、

「あの連中の報告によれば、伊達の留守居は、あの遠山の屋敷に早速行ったそうだぞ」

 それにはさすがの鳥居も、視線を厳しくして、

「何だと、遠山に? な、何しに行ったのだ」

 渋川は、頷き、

「一応、新任の祝いらしいのだが、結構長く、話し合っていたようじゃ」

「う~ん」

 鳥居はさすがに、なんどもやられ、お華には武士として大恥かかされている事もあって、遠山には警戒心が強い。

「もしかしたら、遠山が、いらぬ知恵でも授けているかも知れんの」

 それには渋川が、

「これでは、せっかく大目付に追いやっても、意味が無い。また密偵を放ち、他の者達の動向を探らねばならん」

 鳥居は頷き、

「そっちの方は頼む。わしは態度を決めぬ旗本連中に、念を入れるとしよう」

「お願いする」



 そして翌日。

 お華は、遠山の屋敷に近づくと、屋敷の右壁を辿って、中の様子を見ようとしているのか、妙な男達を見つけた。

 しかし、お華は、特に気づかぬ振りで屋敷に入っていった。

 奥方に笑顔で挨拶し中に入ると、今日はなんと、遠山の子息、本丸小納戸役を務める景纂(かげつぐ)が来ていたのだ。

「おや、若殿様、いらしてらっしゃったのですか」

「おうお華。久方ぶりじゃ」

 景纂は、本所の捕り物の折、お華と一度顔を合わせている。

「本日はどうなされたのです?」

 お華が聞くと、

「本日は休みじゃ。最近、色々と騒がしいからの、母上のご機嫌をお伺いに来たのじゃ」

「これはこれは。親孝行の事で」

 と、傍らのおけいに投げかけると、

「私は良いのじゃが、金四郎。そなたの方が大変なのではないか?」

 金四郎は父親と同様、彼の通名である。

「私の方は、御心配無用です。ただ、今は父上の方がお忙しいとお聞きしますが」

「そうですね。来客が多くてね」

 するとお華が、

「お家が大変だ、大変だ~と皆様同じ事の繰り返し。全く、鸚鵡じゃないんですから」

 と文句を言うと、二人は大笑いだ。そしておけいは、

「お華ちゃんが来てくれたから、私は楽しいものだけど、殿は大変でしょうね」

 すると、景纂は、少々機嫌悪そうに、

「大目付とは言っても、他に同役の方が二人もいらっしゃるのに、不公平な事だ」

 と、怒ってみせるのだが、

「若様、残念ながら、殿様しかこの事は無理にございますよ。戦う度胸があるのは誰なのかと言う事にございます」

 さすがに、この言葉は、親子二人の目を丸くさせた。

「参ったな、お華には……」

 景纂は、和やかになる。

 すると、景纂は、

「話は変わるが、最近、お上の様子が、お変わりになってな」

 おけいが、

「お変わりとは?」

「実は母上。先日食事の際に、上様お好きな、「若生姜」が出てなかったのですよ」

 これには余りに意外な話で、おけいが、

「若生姜?」

 と、声が裏返る。

「実は、上様は、あれが大好物でございましてな。以前は旬になると、食事や、お酒をお召しあげる時に欠かさなかったのです」

 そんな話に驚いた、お華が、

「上様は、その様な物がお好きなのですかぁ」

「ところがな……」

 と景纂は、少し間を置く、そして、

「初物は今、ご禁制になっておるのじゃ」

 お華は驚くが、おけいはさすがに元奉行の奥方様だから、

「そうですよ。初鰹などと同じ様に、旬を早めに出すことは禁止されているのですよ」

 お華は、

「はぁ、あんな、物まで……」

 少々呆れて声を上げる。

「まあ、あれは上様ご自身が禁止と定めた事。如何ともし難いのじゃがな」

 と景纂は苦笑する。

 お華も、

「ミイラ取りがミイラってやつですか?」

 景纂は少し驚いた顔で、

「お前も知っているだろう、小姓頭の高坂殿。まさに同じ事言って、困っておったよ」

 三人は大笑いする。


 すると、当家の若い女中が、居間にやって来て、

「お華様。桜田様のお使いで佐助様と言う方が、台所先においででございますが」

 と告げた。

 お華は、苦笑いで、

「兄上の、取り調べじゃ~」

 と言いながら、笑う二人をおいて、台所へ向かった。

 佐助は、お華を見ると、頭を下げ、

「お華様、何かご連絡は?」

 お華は頭に手を当て、

「昨日の今日でそんな……」

 と言った時、お華の頭にあることが浮かんだ。

「佐助さん。ちょっと」

 と手を振って、台所の隅に呼んで、框に座るように言う。

「あのね佐助さん。佐助さんの実家で、生姜植えてたよね」

 佐助は驚き、

「お華さま。良くそんな事、知ってますね」

「私が子供の頃、ばあやに連れられて、家に遊びにいって、あなたの父上に教えて貰った事があるのよ。今も植えてるの?」

「へ~そんな前の事なのに良く覚えてますね。ばあちゃんが喜びますよ」

 と感心しながら、

「ええ、確かに昔から生姜はやってますよ。ちょっと前までは若生姜が良い値で、買って貰ったので良かったんですけど、今、禁止になってしまって普通の生姜を出してると思いますが……」

 お華は、手を打ち、

「じゃ、今は七月だから、若生姜って事?」

「そうですけど、どうするんです?」

 お華は少し乗り出し、

「あのね。その若生姜、少し分けてくれないかしら」

「え~?」

 さすがに佐助は驚く、しかし、

「でも、お華さま、捕まっちまいますよ~」

 それには、お華が例の小悪魔の顔で、

「大丈夫。是非、ご献上したいのよ」

「ど、どなたにです?」

 するとお華は、人差し指を上に指し、

「お偉い方よ」

「お偉いって、遠山様にございますか?」

 お華は、奇妙な笑顔で首を振り、

「もっと上よ」

 それには、さすがに佐助は、全身で驚き、框から墜ちてしまった。

「ま、まさか、上の方ですか?」

「そう。そのまさかよ」

「え~」

 お華は眉を寄せ、

「いい。兄上には当分内緒。そして、あなたのお父上には、この事話しても良いけどしばらくは、他言無用。罪にはならないと思うけど、とりあえず、捕まっちゃうかも知れないからね」

 佐助は、思っても見なかった大きな話に、身が震える思いがした。

 そんな佐助を見ながら、

「とは言っても、まずは味見をして頂かなければなりません。悪いけど駕籠に持ってきて貰える? まずは大奥で確認して貰わないと」

 それには、もう耳には入っていない。

「それと、佐助さん。もう一つ!」

 と、少し大きめな声で言った。

「これは、兄上に伝えて頂戴。ここのお屋敷近辺に、不審な侍が出てきてます。悪いけど、蔵前の親分と平吉さん、ここに呼んで貰いたいのよ」

 佐助は、ぶるっと平常に戻り、

「お侍の不審者ですか?」

「ええ。この時期だから、捕まえる事までしなくて良いけど。身元は必ず調べて貰いたいのよ」

 佐助は、

「へい」

 と頷いた。

「いい。生姜の件は兄上にはないしょよ。間違えないでね」

「承知しやした」

 と、佐助は、妙に嬉しそうに、風の如く出て行った。


(3)


 すると翌日の朝、佐助は駕籠を背中に背負って、やって来た。

 お華が迎え、

「ありがとう。どんな様子かな?」

 佐助は笑い、

「昨日も申し上げた通り、今は誰も手を出しませんから、山ほどありますよ。おっ父に言ったらぶったまげておりまして、本当に宜しいのかと」

 お華は頷き、

「ここからは私の仕事。心配しなくていいわ」

 と台所の隅で、二人で駕籠を真ん中に話していると、そこに丁度、朝の仕度もあって、

「もう、お食事の用意は出来たかしら?」

 と言いながら、台所に、加藤と一緒に入ってきた。

 すると、隅で密談しているお華を見つけ、

「おや、お華ちゃんどうしたの」

 と言いながらやって来た。

 お華は笑顔で振り向き、

「これは丁度良い!」

 などと言って、正面で佐助と一緒に片膝を着く。

 佐助には、誰だかわからないが、吊られて、つい同じ行動をとってしまう。

 お華が、おけいに向かって、

「奥方様、加藤の殿様。お願いがございます」

 加藤は笑いながら、

「丁度良いとはなんじゃ」

 と叱りつけながら、おけいと並んで座る。

 お華は、

「奥方様、実は、この者」

 と佐助を見ながら、

「が、もって参った物を、是非とも上様にご献上したいのですが……」

 当然、二人とも驚愕した。

 いや、佐助なんぞ、前にいる人間の正体が分かって、慌てて平伏している。

 加藤が、眉を寄せ、

「一体、なんじゃ」

 と聞くので、お華は、駕籠からお盆に少し載せ、差し出す。

 それを見た、おけいが、さらに驚愕する。

「お華ちゃん、これって、わ、若生姜じゃないの!」

 見ても区別がわからぬ加藤でも、その名を聞いて、驚く、

「お華、お前これ、どうして」

 すると、おけいは早速、気が付いたらしい。

「昨日の金四郎の話を聞いてでしょ」

 と、おけいは、加藤に一連の話をした。

 納得はしたものの、加藤は、お華に、

「何故、このような事を、お前もバレたら捕まるんだぞ?」

 それにはお華が、少し低い声で、

「加藤の殿様。私もお手先。罪は承知でございます。ただ私は、恩返しがしたいのです。たかだか若生姜などでお困りの、上様にお役に立てるのなら、大した事ではございません。上様には、あの南町の件で、上様に危ない所助けて頂きました。今こそお礼をする時と存じます」

「ふ~ん……」

 と加藤は唸った。言っていることは充分分かる。

 すると、おけいが、

「それなら、私も乗りましょうその話。元々それは金四郎から出た話。母として責任があります。私から殿様にお願いしましょう」

 女二人から、そう言われてしまうと、加藤は返す言葉が無い。

 しかし、実際どうやって? とお華に問う。

 するとお華は、

「これは、あくまで味見でございます。そういう事で、大奥、姉小路様にお話し願えませんでしょうか、加藤様」

 それには、加藤も頷き、

「そうか。同時に姉小路様にもお礼をって事だな。お華」

「はい。左様にございます」

 と、お華と、佐助は深く頭を下げる。

 すると、おけいは立ち上がり、

「それじゃ、まず、殿様に味見をしていただきましょう」

 すると、佐助が、見上げて、

「それなれば、甘酢漬けでしたら、直ぐにお召し上がりになれます」

 と、言葉を添えた。


 二人が立ち去ると、お華は佐助に、

「たぶん、本日結果がわかるから、良いようだったら、兄上に報告してくれる。そして、皆には内緒で、大奥に持って行くようにね。それは兄上が指示してくれるから」

 佐助は、思わぬ展開になぜか心が躍る。

 そして、

「あ、親分達は本日、お昼頃こちらに来ると言ってました。それでよろしいので?」

「ええ。あなたも手が空いたら、また来て頂戴」

「はい。分かりました」


 そして、居間の朝食。

 珍しく、父と息子揃って、座っている。

「今日は、城に上がるんだろ?」

「はい。父上。何かと騒がしいですが、行かないわけにはいきません」

「そうじゃの~、わしも大変じゃ」

 と、お茶を飲みながら待っていると、朝食が運ばれて来た。

 その、品物を見て、当然ながら、二人とも驚いた。

 景纂が目を丸くして、

「こ、これは、若生姜では?」

 遠山本人も、

「一体、どういうことじゃ?」

 と、それらと一緒にきたおけいに聞くと、おけいは、お華との話をした。

 それには、さすがに二人は大笑いだ。

「なんだと~。罪は承知と言ってもだな、わしは北町奉行だったのじゃぞ。そんなこと通る訳あるまい」

 と、口では言うが、思わぬ事に、かなり喜んでいる。

 景纂は首を傾げ、

「お華は、すごいの。わしがちょっと話をしただけで、これじゃ」

 すると、おけいは、

「これらは、すべて姉小路様に引き渡して欲しいそうにございます。姉小路様が駄目と仰ればそのまま。少なくとも、感謝の気持ちを伝えて欲しいと言っております」

「ほう、姉小路様まで巻き込むか。大したもんじゃ」

 と言いながら、早速、遠山は一口。

 途端に目が見開き、

「こ、こりゃ、上手い! おいおい久々に食べたが、これは誠に上手いぞ!」

 景纂も、

「うん。こりゃ、上様もお喜びになるに決まっている」

「まったく、朝から酒が欲しいわ。おい、金四郎。お前、この事決してお城で漏らすでないぞ」

「は? 父上。どういうことです?」

「わしが心配なのは、高坂様じゃ」

「ああ、小姓頭の」

「そうじゃ。あの人もお華の事知っておるから、あちこちで喋ってしまう。南町の件なんぞ、伊達様お留守居役にまで喋ってしまった。今回の事は、それは非常に困る」

 景纂は笑って、

「なるほど、あの方はそういうお方でございましたな」

 遠山も、若生姜をパクパク食べながら、

「これは、お華の命にも係わりかねない。さすがにこれは黙ってて貰わないとな。やはり、姉小路様のお手配ということで押し通せ」

 景纂は頭を下げ、

「承知しました父上」

 その後、加藤は、結局お華の言う通り、梅林坂を上って行くことになる。


 七つ口玄関にて、局の綾瀬に、駕籠の様な包みを差し出す。

 一通り聞いた綾瀬にしても、驚きを隠せない。

「加藤殿、構わないのか?」

 さすがに、小声で聞くと、

「はは。え~お華様の仰せですので、申し訳ありませんが、姉小路様もご一緒に加担と言う事でお願いします」

 と、腹を抱えて笑う。

 綾瀬も、釣られて笑い、

「いやいや、これは誠に家臣として素晴らしい事じゃ。姉小路様も助かると存じます」

 そこで、加藤は、

「しかしながら、物が物、場合が場合でございますので、恐れ入りますが、お華の事は上様以外ご内密にお願いしたいのです」

 綾瀬は、大きく頷いて、

「承知致しました。確かに微妙な時期。折角の上様への気持ちを無駄には致しません」

「ありがとうございます」

 こうして、お華の謀略? は完成した。


 ~つづく~


 二部作にしようと思っていましたが、ちょっと伸びてしましました。

 この辺は、どちらかというと江戸城宮廷政治で動いているところなので、どうしても動きより会話。結構大変です。

 さて、「若生姜」のエピソードはこの時期有名なのですが、実際には作り話とされてます。ただ、そういった話は、小説にはとても大事。

 例えて言うなら「南部坂雪の別れ」みたいな話でしょうか 。

 そういう話には、お華に働いて貰います(笑)

 作り話だとしても、如何にもありそうという気がしませんか?


 それでは、また次回よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ