第9話 倒れたルイーゼ
突然しゃがみこんでしまったルイーゼを見て、アーサーが駆け寄ってきた。
「ルイーゼ、大丈夫か?」
「奥様!?すぐに医師を呼びます!」
マリーが慌てて部屋を出ていく。
「…大丈夫です…少し…息が切れただけです…」
ルイーゼは笑顔を作ろうとしたが、途切れ途切れにしかならない。
アーサーは彼女をベッドに連れていこうとするが、片腕では上手く支えられない。
「マリーとすれ違ったのですが、何やら慌てた様子で…。何かございましたか?…っ!奥様、大丈夫ですか?」
そのとき、騒ぎを聞き付けてやって来たセバスによって、ルイーゼはあっという間にベッドに寝かされた。
「医師をお連れしました!」
しばらくして、マリーが医師を連れて戻って来た。
簡単な問診と診察をした医師は、一同に言った。
「奥様は体力がなく、栄養も足りてないようです。屋敷内を歩いただけで息切れしたのも、そのせいでしょう。よく食べ、よく運動し、よく休めば回復します」
医師の診断に、4人はほっと胸を撫で下ろした。
彼が帰った後、ルイーゼは改めてお礼を言った。
「ご迷惑をおかけしてすみません」
「気にするな。大きな問題がなくて良かった」
「そろそろ夕食のお時間ですので、食べやすいものをお持ちいたします」
「では、私もこれで失礼いたします」
「ありがとう、マリー、セバス」
2人が一礼して部屋を出ていくと、アーサーが頭を下げた。
「ルイーゼの過去を知っていながら、配慮が足りなかった。申し訳ない」
まさか謝罪されるとは思わず、ルイーゼは驚いて否定した。
「と、とんでもないです!」
「改めて、今までどんな生活をしていたか教えてもらえないか?もちろん、嫌なら構わないが」
「はい。別棟の中であれば自由に過ごせましたが、外に出ることは禁じられていました。教育に関しては、基本的な読み書きは侍女に教えてもらいましたが、王族らしい教養は受けられませんでした」
「食事はどうだ?」
「1日に2回、パンとスープです」
「それだけか?」
「それだけです」
アーサーは大きなため息をついた。
「栄養不足になるわけだ。これからはしっかりと食べるように。それと、毎日中庭を散歩すると良い。私も付き合おう」
「ありがとうございます。アーサー様はお優しいのですね」
ルイーゼがそう言うと、アーサーは驚いたように目を見開き、苦笑した。
「…優しいか。そんなこと、久しぶりに言われたな。とにかく、安静にするように」
「はい」
ルイーゼの返事を聞くと、アーサーは身体を揺らしながら部屋を出ていった。
それから、ルイーゼの生活はとても規則正しいものになった。
午前中はマリーによる淑女教育を受け、午後はアーサーと中庭を散歩する。
さらに、1日3食の栄養バランスの整った食事とマリーの念入りな手入れにより、1ヵ月もするとルイーゼは本来の美しさを取り戻していった。




