第13話 「国王様たちは団結するようです」
「以上で炊飯料理8種の紹介は終わりだ。貴殿らも言いたいことが山ほどあるだろうが……、まずは私の考えを聞いて欲しい」
レイミス姫のオムライス食レポも無事に終わり、後は、姫達の試食を残すのみ。
これでようやく情報が出そろった訳だが、ここからが国王の腕の見せ所だ。
第一目標として、ルートルインの保身。
第二目標に、大陸経済の安定化。
第三目標に、ギオンコロニ帝国の利益。
よし、これで行こう。
「先ほども言及したが、私はご飯に関する手法を多くの国に広げるべきだと思っている。故に、数か国での独占販売は望まぬ。これに異論がある者はいるか?」
「我がトップメシア王国には事前連絡は来ていない。だが、出し抜かれていないというのであれば、ギオンコロニ王の思想を支持しよう」
「リージョン法国も同意です。仰っていたように、ご飯の価値は計り知れません。逆に、僕の国とだけ取引すると言われても困りますよ」
「アルアグレンもだぜ!ウチは国土は広いが人も多い。農業に向かない湿地帯が生産地になるなら、嬉しいに決まってるんだぜ!!」
各国にとっても、ご飯の利権は喉から手が出るほどに欲しいはず。
だが、これは火中の栗でもある。
ヘタに手を出せば火傷を負い、癒せぬ傷を国に付けると全員が分かっている。
「では、皆がご飯の調理法『炊飯』を購入する意思がある。それで良いか?」
「無論だ。それで、どの程度の資産価値を想定している?」
……来たな、値段交渉。
これだけ発展性があるご飯の基礎知識。
それこそ、100億エドロの価値を付けても、あからさまな拒否をされることは無いだろう。
だが、私の判断は逆だ。
可能な限り安く、それこそ、無償提供してしまっても良い。
「値段を付けるつもりはない。いや、付けられぬのだ。……そうは思わないか?」
ご飯の価値は高い。
食品としての魅力に加え、医療、食料自給率。
調理バリエーションの広さ、挙げればキリが無い。
だからこそ、どんな値段を付けようとも、絶対に遺恨が残る。
高くし過ぎればボッタくられたとなり、安くし過ぎれば儲け損なったとなる。
価値が計り知れないからこそ、適正価格など付けようとするだけ無駄なのだ。
「確かに、価値を計ることは難しい。いえ、不可能でしょう。ですが、売買する以上は決めないといけません」
「あぁ、そうだ。だから私は炊飯の手法を 『0エドロ』 で提供する」
「「「――ッ!!」」」
私は、炊飯の権利を無償で提供すると決めた。
一見して愚かな行いに見えるだろう。
だが、これこそがルートルインの安全を守りつつ、そして獲得できる利益の最大値だ。
「0エドロ。つまり権利の放棄をするというのか?」
「我が国の利益より、世界経済の安定化を取るという話だ」
もし仮に、炊飯に100億エドロの価値を付けたとしよう。
そうなればルートルインはそれに見合った価値を持つ人物となり、その行く末は、身柄の獲得を巡る戦争だろう。
それに、これから起こる経済革命は、こんなものじゃない。
ルートルインの『夢旅行』は、植民地支配されていた時代の我が国『コロニ属国領』を革命させた偉人が持っていたとされる魔法。
初代国王となった彼が持ち帰った知識により魔法体系が解明され、長きに渡る紛争が終結。
そうして、4大国家の原型が出来たのだ。
「……だが、ここで貴殿らに提案がある」
「ほう?」
「私は炊飯と料理の開発をしたルートルイン、以下、料理人10名に合計10億エドロの報奨金を贈呈すると決めている。そして、貴殿らがご飯に価値を見出し、私と同じ敬意を彼女達に抱いているのなら、ぜひとも、報奨金袋に連名して欲しい」
これは、一人2.5億エドロを支払えば、開発者側に回れるぞという提案だ。
4か国が出した資本金を使い、ギオンコロニ帝国で研究していたという『事実』となる訳だ。
ロイヤルディッシュで購入したアイデアを発表する際には、新聞や映像配信などのマスメディアを用いることが多い。
そこで、発案者が『ギオンコロニ帝国』なのか、『4か国の王』なのかでは、全く印象が異なる。
それぞれが国民からの支持率を気にしている以上、この提案は魅力的に見えるはずだ。
「この上なくありがたい申し出だ。我はギオンコロニ王に賛同する」
「僕も賛同です。本来ならば、お金だけでなく苦労も支払わなければなりませんからね」
「俺も賛同だぜ!だが、金を払ってお終いってのは俺の性に合わない。各国の米の生産増加体制への助力を申し出るぜ」
来た!!
これこそが私が望んでいた流れだ!!
知識の無償提供を餌に、別の知識や労働力を吊り上げる。
『国家間相互・米増産計画』
4か国連名で行う大規模な水田栽培、その足掛かりをここで組んでしまいたい。
「アルアグレン王よ、それは助かる申し出だ。屈強な貴国の軍ならば、乾いた大地に河川を通すなど造作もないだろう」
「水路と畑を作ればいいんだよな?でもたしか、米は普通の畑とは違うはず。労働力は出せても、やり方が分からないぜ」
米はギオンコロニ帝国でも栽培されているが、量は決して多くはない。
ロイヤルディッシュで米のスープを出してからは消費量が増えたが、それでも、需要の大半は医療目的。
要するに、この小さい市場で注目された米の消費を賄うのは不可能だ。
可及的速やかに米を生産しなければ、国民が暴動を起こしかねない。
「では、リージョン法国から水田栽培のスペシャリストを派遣しましょう。さらに、苗を育てる第一段階である『種籾』の育成を行い、優良と認めた苗を提供します」
「うむ、では我が国は物流を担おう。それと、生産が安定するであろう3年後まで、相互固定量取引契約を結ぶのはどうだろうか?」
トップメシア王国が提案した相互固定量取引契約の概要は、以下の通りだ。
① 4か国は自国の米生産量を報告し、その半分量を同盟貯蔵庫へと売却する。
② 同盟貯蔵扱いとなった米は4分の1となるように均等割りし、それを4か国は必ず購入する。
③ 一時的な現金の仮払い、及び、物流はトップメシア王国が行う。
「もしも米の生産に失敗した時の保険にもなろう。それと、物流経費は我が国で出す」
「不作、もしくは作り過ぎた時に有効な政策か。素晴らしい提案だと私は思うが、どうだろう?」
「僕は異論ありませんね。ただ、米だけではなく麦の監視も必要です。米の生産量に合わせて麦を買い取り、城で保管。穀物全体の流通量をコントロールするのです」
「麦は適切な処理をすれば20年は保存できるぜ。それに、ご飯に引っ張られて酒の消費が増えるだろ。余った分はビールにしちまってもいいと思うぜ」
確かに、消費が増えるのは米だけとは限らない。
美味そうな料理があるのなら、食べる量が増えるのは必然だ。
そういった意味でも、食品の廃棄減少を狙うことが出来るかもしれぬ。
「では、アルアグレン軍国は自国の水田開墾を終え次第、各国に渡り、技術支援をするという事でよろしいか?」
「一つ条件を付けるぜ。貸すのは人だけだ。開墾軍に必要な衣・食・住の100%を支援国に求めるぜ」
「それは私達の国を信頼する。そう捉えていいのだな」
アルアグレン王帥は、人間以外の物資の一切を持ち込まないと言っている。
つまり、開墾軍は身を守る武器すら所持せずに、他国に行くという事だ。
人には魔法適性優劣があるとはいえ、武器や防具を持っている人間が有利なのは当たり前だ。
いくら鍛えている軍人とはいえ、武装した100人の市民に囲まれれば成す術がない。
なお、例外は存在する。
国家規模魔法を持つ者は、たった一人で1万の兵を撃滅できると言われている。
というか、ファナティシア VS ギオンコロニ帝国第一軍2500名で模擬戦をやらせたら、15分かからずに無効化(実質的な壊滅)させられた。
同じく国家規模魔法を持つアルアグレン王帥も似たようなことが出来るだろう。
「いくらアルアグレン王帥が強く、いかなる手段の報復を行えようとも、他者の死者蘇生は出来はしまい。もちろん、そんな想定は杞憂でしかないがな」
「ギオンコロニ帝国では、来国していただく開墾軍には優れた待遇を約束する。万が一に備え、専属の医療団も同行させよう。両国もそれで良いか?」
「リージョン法国も同意します」
「助かるぜ!!体を鍛えるだけで暇を持て余している奴らだ、こういう時には有効活用したいってもんなんだぜ!!」
それから、さらに詳細を詰めた私たちは、一連の取り決めを『御飯提携連合―ライス・アライアンス・ユニオン―』と名付け、新たな同盟として発足。
今後3年間は、4か国間で米の流通量を共同管理し、大規模な経済破綻を防止する事となる。
くぅーこれこれ!!
私がしたかった国王会談は、まさしくこういうのだよ!!




