第11話 「国王様たちはダシ抜こうとするようです」
「ルートルイン姫が開発者なのか……。もともと才女だとは思っていたが、これほどとは」
「リリカルが褒めてるから凄い子てのは知ってたぜ。けど、大陸をひっくり返す発明は想定外なんだぜ!!」
「えぇ、じっくり話を聞いてみたいものですね」
夢で見ただけだろうと何だろうと、ルートルインの功績なのは間違いない。
結局は、本人が覚えないといけない訳だしな。
それはさておき、見るからに余裕を取り戻したリージョン法王と、焦っているトップメシア王とアルアグレン王帥の差が激しい。
将来の布石としてプライベートで親交を温めているライラ姫と違い、レイミス姫とリリカル姫との交流はロイヤルディッシュのみ。
配信であるがゆえに突っ込んだ話が出来ない以上、リージョン法国だけが情報で抜きん出ることになる。
「繰り返しになるが、炊飯の手法については一国を優遇することは無い。証拠など用意してはいないが、リージョン法国・トップメシア軍国・アルアグレン王国ともに事前通告を行っていないのはその為だ」
「!!」
「!!」
「!!」
「それに、まだ料理が2品も残っている。それを見てからまとめて話をしようではないか」
私の妻フリッカは、非常に察しの良い女性だ。
普段はおっとりしているのに、詰める所はきっちり詰めてくる。
私も何度、不憫な思いをしたこと……、そんな話はどうでもいい。
今、フリッカは貴族の女性達とロイヤルディッシュ配信を見ているはずだ。
当然、料理の説明が出来なくて困っただろうが、『この案件は国王陛下の主体の為、わたくしも詳細は知らされておりません』が使えるからな。
そしてそこに、私が呼んでいると謎料理人メイドが乱入する訳だ。
恐らく、フリッカはここに来る前に厨房に行って料理人を現行犯逮捕した後、料理長のキザラを連行するはず。
彼を部屋に入れることは無いが、廊下での取り調べは可能。
そうして得た知識を紙に書いて資料を作り、「机の上に忘れていましたよ、あなた」って感じで持ってきてくれる……、はずだ。
私の妻、マジで有能。
『炊き込みご飯そのものの味を堪能した後は、お好みに合わせた薬味の投入が可能です。こちらは料理人のみならず、召し上がっていただく方に調理をして頂くメニューでございます』
『ほう!!なんと面白い発想なのだ、私は感動しているぞ!!』
ん?
ちょっと目を離した隙に、配信が進んでしまったようだ。
鯛の炊き込みご飯は、なんとも豪快に鯛を一尾丸ごと使った料理。
魚の味を吸ったご飯はさぞかし美味いだろうと思ったが、もう一工夫ある様だ。
「なるほど、味の調整を自分ですると。この発想もルートルイン姫様でしょうか?」
「いや、これは違うだろうな。味付けをするという発想は料理人のものだろう?」
「おや、発案者を把握していらっしゃらないのですか?」
「チームで研究をさせていたからな。無論、料理人たちには特別に豪華な恩賞を用意するつもりだぞ」
『国家内乱で償』。
7泊8日の超豪華炊飯料理をつくる過重労働にご招待だ。
なんと今回に限り、残業代フリーパスの特別仕様だぞ!!
『では、気を取り直して……、はむうっ!!すっっっっっごい出汁なのだ!!』
鯛の炊き込みご飯を食べたルートルインは、まぶしいくらいの満面の笑みだ。
見るからに美味そうなのが伝わって来る、良いリアクション。
それを見ていた他の姫達も興味津々な様子だ。
『そうよね、鯛って美味しい出汁が出るものね』
『それだけではない、昆布とホタテも含めた複合出汁だ!!上品なコクが癖になりそうだぞ!!』
「出汁か……、ギオンコロニ王よ、例えば、ブイヨンベースやミネストローネのような完成されたスープを使用しても良いのか?」
「理論上は可能だろう。ただ、炊飯は研究途上。各国の持ち味を生かしたオリジナル料理も数多く生まれるだろう」
気になるなら自分の国で実験してくれ。
美味い料理はロイヤルディッシュに出して良いから。
「国の特産を生かしたチョイ乗せ薬味も面白そうですね」
「そうだな、俺は明太子とか食ってみたいぜ!!」
それは確かに面白そうだな。
というか、ご飯の上に具材を乗せるだけで特産料理になりそう。
ふはは、ロイヤルディッシュのネタが尽きないな!!
『えっと、どれが一番おいしいですかぁ』
『どれも美味いぞ!!だが、そうだな……、ゴマ油と青ネギの同時なんかが良さそうだったり……?』
用意されている小鉢は、4種類。
青ネギ、ワサビ、刻み生姜、ごま油。
私的にはワサビと青ネギのミックスが良さそうだ。
『ファナティ、おかわりなのだ!!』
『ちょ、わたくし達の分を残しなさいよね!?』
「確かにアレはおかわりしたくなるな」
「トップメシア王はお酒を持参していただくのでしたよね。では、僕の国からは海鮮漬けでも出しましょうか」
「じゃあ、俺からは新鮮な薬味や山菜を出すぜ!」
うわぁ、かなり夜会を楽しみにしてるな、この国王共。
まぁ、私も楽しみなんだけど。
焼き鯛のご飯とか絶対美味い……し?
『ルートルイン姫様。鯛の炊き込みご飯の真価は、薬味の追加だけではございません』
「なんだと!?」
「これ以上の工夫ですか?」
「参った、こりゃ、おにぎりを食う量を減らさなくちゃならないぜ!!」
まだ進化を残している、だと……?
つくづく料理人たちが謎の存在すぎるな。
だって、この怒涛のご飯料理を1~2時間で構想・開発・提供をしたんだろ?
というか、正規の王族料理人よりも優秀なんじゃないか?
『こちらは、様々な魚介から出汁を取ったスープでございます。それを注ぎ込むことで、『鯛と魚介の茶飯漬け』となるのです』
「さらにスープを追加、だとォ……」
「なんという盲点。だが……、理に叶っています」
「粒が残ってるから、普通の米スープとは別の料理っぽいぜ!!」
ほんと、炊き込みご飯のバリエーションの多さには驚かされるな。
調理時だけじゃなく、炊いた後に足すことで未知の料理に進化。
リゾットとは明らかに違うし、なにより、疲れている深夜に食べるのも良さそう。
「貴殿らも気が付いたかもしれぬが、炊き込みご飯は各自の体調に合わせたアレンジが可能だ」
「!!なるほど……、労わることが出来るのだな。喉の」
「食欲がない時にも良いでしょう。優しいですよ、喉に」
「腹いっぱい食うともたれるって爺やが言ってたしな。おっと、ケアできるぜ喉も」
……なんか、妙な視線を感じるな?
なんか、どことなくみんな優しいような……、あ、そうか。
そりゃ、吐血したっぽい奴が病人食を語れば信憑性も出るって話だ。
あれ?もしかして私、相当深刻だと思われてる?
「一応言っておくが、私は健康だからな。喉の具合が良くないのは一過性のものだ」
「我にだって調子の悪い時くらいある。無理はしなくていいのだ、ギオンコロニ王」
「万能不老霊薬は先を越されてしまいましたが、よく効く薬は他にもあります。いくらでも融通しますよ」
「夜会の途中で退席しても大丈夫なんだぜ!!」
だから健康だって言ってるだろ!!
というか、私が退出した後、貴殿らだけで美味い思いをするつもりだろ!!
こうなったら、夜会で一番食ってやるからな!!




