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第7話 「国王様たちは獲物を狙うようです」

 

「……ふっ」



 いやもう、笑うしかできないんだが!?

 なんで、私ですら一口ずつしか食べてないおにぎりを、貴殿らにご馳走せねばならんのだ!!


 という本音はさておき、非常にヤバい。

 普通の常識で考えるならば、相手の言い分が100%正しい。

 食べたいおにぎりを選ぶ→実食という流れを提示したのは私だし、そりゃ、用意してると思うに決まってる。



「私達がしているのは国王会談であり、ロイヤルディッシュではない。提供するのは知識に決まっている。そう思わないか?」

「通常の会談ではないと言ったのは貴殿だが?」

「ですね。米の価値を正しく見定める為にも、実食はするべきでしょう」

「俺は30個は食うんだぜ!!」



 食い過ぎだぞ、自重しろ残念勇者ァ!!

 現時点で、30個どころか1個すら用意してねぇぞ、舐めんなァ!!



「どうやら、おにぎりの紹介は成功したようだ。私の予想を超える結果に驚きを禁じえないな!」

「予想を超える?まさかとは思うが、用意していないなどとは言うまいな?」



 はい。用意してません。

 とは言えない。

 現時点で米の利権から仲間外れにされてる疑惑が濃厚な上に、この流れで断ったらマジで戦争不可避。

 冗談ではなく、本当にそうなる可能性を考えなくてはならない。


 新しい主食が生まれるという事は、現在の主食の消費量激減を意味する。

 小麦の価値が暴落し、大量の失業者を生む。

 一方、米の生産に関われた人は裕福となり、貧富の差が一気に広がるだろう。


 そうなれば商人を襲撃する山賊が増え、騎士団が動き、血が流れ……、各国の王は原因を作ったギオンコロニ帝国に賠償を求め、それを私は突っぱねる。

 そして、どの国も米の利権に関与していないと判明してしまえば、無意味に国が荒れた三か国連合によってフルボッコにされるだろう。



『さて、ここで10分の休憩を挟むとしよう。国民のみんなも、どんなおにぎりが出てくるか予想しておくのだぞ!!』



 幸か不幸か、ルートルイン達は休憩に入るらしい。

 情報が停滞する今、どうにか状況を立て直さなければ。

 そして、どうか普通のおにぎりを出してくれ。

 ゴマ味、砂糖味、イチゴ味、メロン味とかで良いんじゃないか?



「白状せねばならぬか。実は……、問題が発生している」

「なんだと!?」


「貴殿らの言う通り、ロイヤルディッシュの後で晩餐会を開き、おにぎり品評会を行う予定だった。だが、ご飯の存在をギリギリまで秘匿していたが故に、資料の用意に手違いが発生したのだ」

「ニセの資料の準備だけして、本命を忘れたと?ははは、面白い冗談ですね」


「申し訳ないが、事実だ。故に、後日……、いや、明日の昼にでも歓待の席を設けたい」

「別に謝らなくたっていいんだぜ、ギオンコロニ王!!俺は歓待なんて望んじゃいないからな!!」



 残念勇……、アルアグレン王帥!!

 ここに来て、私の味方をしてくれるのか!?

 米の取引の際には、ぜひとも優遇させてくれ!!



「今あるおにぎりをパパっと送ってくれるだけで良い。多少冷めてても文句なんて言わないんだぜ!!」



 やっぱり残念じゃねぇかぁああ!!

 国王の癖に娘の食べ残しを狙うんじゃない!!

 ここはお前の家じゃねぇんだぞ!!



「うむ、手っ取り早い方法ではあるな」

「ですね。ディベートバトルという特性上、余っているおにぎりはあるでしょうし」



 お前らまで残飯を狙うな、国王としての威厳を保てッ!!

 というか、リージョン法王は半分くらい事情を察しててワザとやってるだろ、その腹の黒さは分かってるんだからな!!



「はっはっは、残り物を提供するなんて、流石にそんな失礼はできぬ。それに、おにぎりを転送するためだけに緊急転移陣を起動する訳にも行くまい?」

「何を言っている、貴国には大陸最強の軍人・ファナティシアがいるではないか。彼女に届けさせればよい」


「あれは軍人などではないぞ。ルートルインに仕えるメイドだ」

「おや?メイドが給仕をするのは当たり前のことなのでは?」


「うぐ……、いや、護衛?武術指南役?とにかく通常のメイドとは違うから無理だ」

「でも、『11次元の扉(イレブン・ドア)』なんて便利な能力を持ってるのに使わないのは、勿体ないんだぜ!!」



 ファナティシアの個別魔法、『11次元の扉(イレブン・ドア)』。

 あまりにも強力な能力が故に、国際間の情報管理が義務付けられている『国家規模魔法』の一つだ。


 この能力は、簡単に言えば、『なんでも転移魔法』。

 紙に書かれた文字、一次元。

 空間を進む声、二次元。

 物質である、三次元。

 時間観測、四次元。

 魔法現象、五次元……、そんなカテゴリに分かれた理屈を任意で転送する、それが彼女が持つ力。


 故に、おにぎりを他国の王の顔面に叩きつけることなど造作も無い。

 大陸最強は伊達ではないのだ。



「それはそうだが……、見ての通り、彼女もロイヤルディッシュに出ている。今すぐには無理ーー!!」


『はい!こちら実況のカタリナとーー!』

『解説のサクラコがお送りします!!』



 休憩に入ったルートルイン達に変わり、MCの二人が今までの感想や市民の反応を紹介するコーナーになった。

 どうやら、ハンドルーラー商会……、ファナティシアの実家は米の買い付けをしているらしい。

 という事は、公爵家にはロイヤルディッシュで米を出すという情報が流れている訳だ。


 色々と思う所はあるが、米の確保が出来るという意味では悪くない。

 国王としての強権でも何でも使って、ありったけの米を巻き上げるとしよう。



「では、貴殿は今日中におにぎりを提供する気が無い、そういう事でいいのだな?」

「その点については申し開きもないが、そのとお――ッ!?」


『……!?大変ですサクラコ!!』

『どうしたの?』


『どうやら、姫様たちが召し上がっていたおにぎりを、メイドの皆様にも試食して貰うそうですよ!!』



 な、ナンダッテェェェ!?!?

 何が、どうして、そうなった!?!?

 私をイジメるのがそんなに楽しいか、なぁ、なぁ!!!!



「ほほぅ?メイドには食わせるのに、我らには出さないと?」

「少々、横暴がすぎるのでは?」

「なーなー、いいだろー。10個で我慢するからさー」



 もう無理だ、絶対に逃げられん。

 メロンはブチ切れ、眼鏡は黒く、勇者は馬鹿だ。

 覚悟を決めて貰うぞ、そこでデカい鍋を搔き回している謎料理人メイド女。



「……午後10時だ」

「何がだ?」


「ロイヤルディッシュの閉幕が8時。貴殿らも準備があるだろうし、緊急転移陣の魔力充填にも時間が掛かろう。だから、おにぎり夜会の開催は午後10時からだ。これは譲れぬ!!」



 えっっ?マジっすか!?

 徹夜じゃないっすか!?!?

 って顔をするな、謎の女。


 まったく悪いと思っていないが、馬車馬の如く働いて貰うぞ。

 というか、今から2週間は休みが無いと思え。

 お前らのせいでもあるんだからな!!


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