第6話 「国王様たちは娘の笑顔を渇望するようです」
『結論、お米はおいしい。色んな意味で』
「レイミスのエビマヨ、ルートルイン姫のアスパラベーコン。誠に心揺さぶられる素晴らしいディベートであったが……、」
「ライラがあそこまで熱く語るとはね。お世辞にも社交的と言えない性格な子でして、えぇ、驚くばかりです」
「俺的にも、豚の生姜焼きが今の所は一番だぜ!!」
姫達のディベートの進行に合わせて、アスパラベーコンと、豚の生姜焼きもティーカップで提供された。
どうやら、料理人は本物で間違いないらしい。
木箱に入れたご飯を手袋ごしに掬い、タッパーの中から具を取って、2秒。
何をどうしたのか分からない早技で握ったおにぎりをティーカップに入れて提供する様は、さすがに一流と言わざるを得ない。
報告・連絡・相談が出来ない事を差し引いても、ギリ一流でいいだろう。
「ライラ姫の食レポは抜きん出ていたな。まさか、米の有用性を私が言わずとも、あそこまで分かりやすく語ってくれるとは」
うん、自分で言っといてなんだが、ホントそれな。
未実食とは雲泥の差があるとはいえ、一口でおにぎりの全てを悟るのは、流石に無理がある。
ライラ姫は食レポという場を借り、ご飯の価値についても語ってくれた。
栄養素の話から始まり、人間は先天的にご飯を美味しく感じるという本能、米=薬というイメージの脱却。
さらに、これからパンと並んで主食と呼ばれるようになると言い切られてしまっては、この場にいる誰も無視などできはしない。
「ギオンコロニ王よ、貴殿が言っていた『ご飯の価値は計り知れぬ』という言葉、今なら分かるぞ。これは確かに秘匿したくなる」
「えぇ、ライラがあそこまで解説したということは、『パパ、ご飯の確保に失敗したら許さない』ってメッセージでしょうね」
「米を作るならアルアグレンが適してるってのも嬉しい。寝耳に水って奴だぜ!!」
……ッ!?
ヤバい、米の価値を知った親馬鹿どもが国王に戻ってしまった!!
そのまま腑抜けになって欲しかったのに、なんて厄介な奴らなんだ!!
それぞれの王の目線では、米とご飯の利権に自分は関与していない事実のみ見えている。
そして、ライラ姫が米の生産地としてアルアグレン軍国の名を出したことにより、トップメシア国王は、ギオンコロニ帝国・リージョン法国・アルアグレン軍国の3か国連合で米の開発していると思うはずだ。
だが、アルアグレン軍国もリージョン法国も、開発どころか、話すらされていない。
だからこそ、互いに出し抜かれていると思いつつも、利権に関与できる可能性を探し始めている。
結論、国王共が腹の探り合いでギスり始めた。
実際はルートルインのやらかしのせいなので、誰も悪くないというのにな!!
はっはっは。普通に戦争になりそう。
『銀シャケバターソースおにぎりは、一口ごとに味わいが変わるんですぅ。サクサクパイ、濃厚な牛乳、ジューシーな焼き魚、色んな料理を思い出すけど、その、どれとも違う。食べた後でも信じられない美味しさなんですぅ!!』
なんだ?天使か?
いや、リリカル姫の食レポだった。
四人の中で比べれば身長が高い彼女は、一番『姫様』という肩書が似合っている。
そんな彼女の食レポは、素直に食事を楽しんだ様子で、大変に微笑ましい。
なお、ルートルインは目の中に入れても痛くはない可愛さだが、頭痛と胃痛と国家滅亡を誘発させうる危うさを持っている。
その名の由来通り、本当に傾国の美少女になるとは恐れ入ったぞ。本当に。
「これで4品の食レポが終わった。どうだ、貴殿らの感想を聞いた後、私達も投票をしてみるというのは?」
「乗ってやろう。娘が紹介していたエビマヨおにぎりは、ご飯のみならず新しい調味料を加えた、まさに新時代の食品であったな。国王としても、一人の美食家としても、隔絶した評価を付けざるをえないであろう」
つまり、娘が担当したエビマヨが一番って言いたいんだな?
実際、マヨを持っているエビマヨは強い。というか、ずるい。
「ライラの豚の生姜焼きも負けてはいませんね。見ましたか?あの幸せそうな顔。あんなの家族団欒でも久しく……、おほん、豚肉というありふれた食材を使用しているのも良い。国民の皆様も真似しやすいですからね」
さっきから、ちょくちょく反抗期の予兆みたいなものが見えるぞ、リージョン法王よ。
ルートルインの影響じゃないと良いんだが……、いや待てよ、逆か?
ライラ姫の言動を見たルートルインが、「父親なんて、適当にあしらっとけば大丈夫」とか思い始めている?
よぉし、戦争だ。
「銀シャケも美味そうだったぜ!!リリカルから感想を聞くのが楽しみなんだぜ!!」
アルアグレン王帥よ、その言葉はリージョン法王に効く。
というか、私やトップメシア王にも普通に刺さる。
気を付けろ、戦争になるぞ。
「無論、ルートルインのアスパラペッパーベーコンも美味である。子供の口でびっくりするほど辛い、なら、大人の私達にはちょうどいい酒のツマミとなる。そうは思わないか?」
ぶっちゃけて言おう、マジで辛かった。
実食できるという安堵で油断していたのもあるが……、思わずペンを落とした振りをして画面外に行き、セイヴァースが用意していた水を一気飲みしたほどだ。
さぞかし、キンキンに冷やしたビールと合うだろう。
「では、投票をしようじゃないか。公平性を保つため同時に発表する。それでよいな?」
「よかろう」
「では、3、2、1……」
「銀シャケバター……なに!?」
「アスパラペッパーベーコン、……ほう」
「エビマヨ、……これはこれは」
「豚の生姜焼き、……綺麗にバラバラなんだぜ!!」
私が選んだのは、銀シャケバター。
トップメシア王が、アスパラペッパーベーコン。
リージョン法王は、エビマヨ。
アルアグレン王帥が、豚肉の生姜焼き。
「意外だな、トップメシア王はエビマヨを選ぶと思っていたぞ」
「貴殿が言ったのではないか、酒の当てになると。そういう視点はレイミスでは分からぬからな、自分で試すほかあるまい」
「アルアグレン王帥はやはり肉ですか」
「マヨも興味はあるが、最初に食うなら肉が良いんだぜ!!」
なんだかんだロイヤルディッシュと国王会談が上手く回っている理由、それは、普通に配信を楽しんでいるからだ。
いくら国を背負おうとも、一人の父親であり、ただの人間。
国の運営と自分の娯楽、その両立が出来るからこそ、この場の王達は4大国王などと呼ばれるのだ。
「おや?姫達にはエビマヨが人気のようですね」
「珍しいからな、俺も二番目はエビマヨが良いんだぜ!!」
「だが、我らは4種同率一位。これは、全て試してみなければなるまい」
「ですね。幸いにして僕たちは大人です。食べられる量は姫達よりもずっと多い」
「あの大きさなら結構な数イケるんだぜ!!」
「酒は我が出そう。なぁに、自分でも飲むのだ、良いものを出すぞ」
……?
いや待て、一体、何の話をしているんだ……?
「ということでギオンコロニ王。貴殿の思惑に乗ってやったのだ。当然、我らも今夜の晩餐に招待してくれるのであろうな?」
……。
…………。
……………………。
用意なんかしてねぇよッ!!
できる訳ねぇだろ、おにぎりを知ったの50分前、お前らと同時だぞッ!!




