第27話 「姫様たちは世界を混沌へ導くようです」
「「「「いただきまーす!!」」」」
4人の姫の前には、それぞれリクエストした料理が置かれている。
ルートルインとリリカルの『ライスバーガー』。
ライラとレイミスの『鯛の炊き込みご飯』。
そして、まっすぐな視線を料理に向け、キラキラした顔で匙を口に運ぶ。
「「「「ん~~~!!」」」」
「外がカリカリ、中もっちり!!歯ごたえのおかげで満足感が凄いなライスバーガーは!!」
「逆にお肉はトロトロですぅ~。今日一番のガツンと来る味ですぅ~~」
「驚いた。鯛の炊き込みご飯は思ってたより素朴な味。でも、不思議と薄いとは思わない」
「出汁がしっかりしているからでしょうね。薬味を足すって前提があるにしても……、他のメニューと組み合わせられるって凄いことよ」
直感的な感想を零すルートルインとリリカルに対し、ライラとレイミスは知的な考察を行う。
言ってしまえば、これは陰と陽。
配信視聴者の好みによって注目する相手が変わる、故に、全ての人が笑顔になる優れた画面作りだ。
「こんなにこってりした味付けなのに、無限に食べたくなる。これは……マヨのせいだな!!」
「一週間後に、ライスバーガーのお店が行列になるのが見えるですぅ~~」
ロイヤルディッシュで発表された文化知識は、配信を見ている各国の王によって値段が協議される。
そうして購入された知識は王の名の下に公開され、誰でも利用できる一般知識となるのだ。
「ライラ、生姜はどう?」
「イケる。そっちのワサビは?」
「困っちゃうくらいに美味しいわよ。貴女の言葉を借りるなら、週5で食べたいくらいね!」
「……鯛飯狂信者?あ、僕は8品目をローテーションするから週3。セーフ」
裏切られて愕然とするレイミスと、国王が購入してくる炊飯技術に思いを馳せるライラ。
ルートルインが掲げたテーマが『炊飯』である以上、その技術の購入は確定している。
概要だけは既に理解しているライラだからこそ、完成品からは理解できない『失敗談』の価値を知っているのだ。
「ふぅー、食べた食べた。さて、リリカルのアフタヌーンティーまで少しだけ時間があるが……」
ちらり。とルートルインが向けた視線の先にあるのは、ミニ端末。
そこでは、過去最高の推し活ポイントが記載されている。
ルートルイン 1700万。
レイミス 1200万。
ライラ 1050万。
リリカル 1000万。
総合計4950万。
配信を見ている国民のほぼ全てが投票している異常事態だ。
「あら、あんまり伸びなかったわね、わたくしのポイント」
「レイミスが食べている時には、一瞬だけ1600万に迫った。でもすぐに、ポイントが減ってルートルインのポイントが伸びた」
「そういう貴女も、ちゃっかりポイントを伸ばしているようだけど?」
「ん、でも戦略をミスった。万能不老霊薬の名前を出した割には伸びてない。リリカルにも票を食べられた」
「う、ウチですかぁ!?」
リージョン法国にとって、万能不老霊薬は『誰でも知ってる幻の存在』。
日本で言うならば『ドラゴン』や『魔法使い』のように、知ってはいても見たことは無い、そんな空想上の概念だ。
そして、ライラはライスバーガーこそが『万能不老霊薬』であると認定した。
これが唯の少女の言葉であるのなら、一笑に付されるだろう。
だが、王女であり、1か月間にも及ぶ国家祭『大霊公神事』にて巫女となるライラの言葉を信じぬ国民など、宗教国家にいるはずもない。
だからこそ、目ざとい商人たちはリリカルに注目する。
これから来るであろう米の大規模生産、その陣頭指揮を執るのがリリカルになる可能性が高いからだ。
アルアグレン軍国では、国民すべてに階級が与えられている。
第一区分 『官』……、政治家
第二区分 『兵』……、軍人
第三区分 『民』……、市民
基本的に上から順に、発言権が強くなる。
そして、『官』の中の上位区分『姫』であるリリカルは、実質的な軍事掌握権を持つ。
彼女の言葉を覆せるのは最上位区分の『王』だけであり、米の生産活動を推奨した彼女を推す結果になるのだ。
「うむ、リリカルはすごく美味そうに食べていたものな!」
「えぇ、安心感が違うわよね」
「そ、そういう物ですぅ……?でもでも、1000万を超えたのはすっごく嬉しいですぅ!!」
そう、実際にそういう物なのだ。
姫への推し活ポイント投票は、利益が発生しない自己満足の世界。
故に、気に入った姫を推す以外の価値はなく、あらゆる意味で『好意的』な人物に票を入れる。
その最も大きい要因は、『可愛さ』だ。
「さてと、ここらでいったん休憩を入れようと思うのだが……、食べてみたいご飯投票ーー!!」
「……またもや、妙なことを言い出したわよ、この子」
「誰かこの破壊姫止めて」
「あ、もしかして、国民のみんなにも投票して貰うんですかぁ?」
「そうなのだ!テンプレートの⑤~⑨番に、それぞれご飯メニューを振り分けて投票して貰うぞ!」
「なるほど。じゃあ最初は、⑤オーロラエビマヨ ⑥アスパラペッパーベーコン ⑦豚肉の生姜焼き ⑧銀シャケバターにした方が良いわね」
「おにぎり決選投票。僕たちはそれを見ながらティータイム?優雅過ぎて草も生えない」
「なるほどぉ、純粋なおにぎりの人気を決めるんですね。面白そうですぅ」
唐突に宣言されたルートルインの思い付き。
それは子供特有の遊び心。
こうしたら配信がもっと面白くなる、そんな前向きな提案だった。
だが、この宣言を聞いて「やめろーーッ!!」と叫び散らかした者たちがいる。
それは大人特有の悲鳴。
もう既に今日紹介された料理食材の超高騰・在庫枯渇が始まっている。
米のみならず、酢、オリーブオイル、豚肉、銀シャケ、バター……、どこでも買えるはずの食品が次々に品切れになっているのだ。
そして、配信上で明確な人気順位が付いてしまえば、それに使う食材の需要が誘爆する。
超インフレーションを引き起こすのは必至。
場合によっては、市場崩壊からの世界大恐慌へ。
それを理解しているライラは、もはや、この流れを止めるのは不可能という事も気が付いている。
法王、並びに各国の国王……、超がんばれ。
ライラはテーブルの上で手を翳し、リージョン法国に伝わる最上位祈祷の印を組んだ。
姫様たちの暴走ロイヤルディッシュ編はここまでです!!
面白かったよという方は、ぜひとも、下の評価をお願いします!!
次話からは、配信を見ていた人たち(王様)の反応回。
娘のやりたい放題ぶりに頭を抱える父親の反応も、どうぞお楽しみに!!




