表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/58

第23話 「姫様たちは冷ややかにご飯を見つめるようです」 

 

「こく……、こく……、ぷは!!茶碗に残った最後の一滴まで美味いのだーー!!」



 匙を止めることなく食べ勧め、底に残った最後の一口。

 興奮しすぎてマナーを忘れているルートルインは躊躇なく茶碗を持ち揚げ、おもいっきり煽る。

 そうして完食した彼女は我に返り、照れ隠しに笑った。



「ルートルイン、今は配信中」

「う、何が言いたいのだ?ライラ」


「画面映えバッチリなナイスディベート。グッジョブ!」

「であろう!!」



 良い仕事(グッジョブ)と友人にエールを送りつつ、ライラは脳内で反省する。

 僕はご飯の価値を見誤っていた、と。


 ライスバーガーを万能不老霊薬(エリクサー)と呼んだのは間違っていない。

 だけど、本当に弱った人に対しては、こっちの鯛茶漬けの方が適している。


 正直に言って、鯛の炊き込みご飯だけなら、ライスバーガーの方が上。

 だけど茶漬けは、それこそ、噛む力すら残っていない人にも与えられる。

 だからこれは、言うならば万能蘇生霊薬(エリクシール)だ。



「まさしく起死回生の一手。ファン数もうなぎ登り」

「あっ……!!」

「凄いですぅ!!推しポイントが逆転して、ルートルインが一位ですぅ!!」

「はっはっは!!これが私の実力なのだー!!」



 手元のミニ端末に表示されている現時点での推し活投票総数、4200万ポイント。

 レイミス 1100万。

 ルートルイン 1600万。

 ライラ 800万。

 リリカル 700万。


 今回の配信が凄い!と各地で話題になった結果、平均的な合計投票数4000万ポイントを軽々突破。

 ディベート後にポイントが爆増→次の姫に移動という増減を繰り返しつつも、ルートルインは確実に票を伸ばしていく。



「このままぶっちぎってやるぞ。レイミス、覚悟するのだ!!」

「あら、お忘れではなくて?次のディベートはわたくしの番でしてよ!!」



 取って付けたような悪役令嬢ムーブを魅せ、レイミスも笑う。

 500万ポイントも差が付いても動じない。

 次のディベートで取り返せばいいのよ!!と余裕たっぷりの表情だ。



「うむ!ファナティ、最後の料理の配膳を始めるのだ」

「かしこまりました。それではレイミス姫様、調理を始めさせていただきます」



 ファナティシアの視線に促され、タナーが④の配膳車の前に立つ。

 2口の魔導コンロとフライパン、それに山のように積まれた生卵が視線を奪う中、彼女が触れたのは銀製の容器。



「レイミス姫様。こちらの料理は『冷えたご飯』を調理する為、少しだけお時間を頂きます」



 冷えたご飯……?

 まさかの言葉に4人ともが硬直。

 悪い想像をするも、そんなはずはないと立ち直る。

 主催のルートルインすらもドキドキする中、沈黙の口火を切ったのはレイミスだ。



「構わないわ!!待った分だけ美味しくなるんでしょ!!」

「勿論でございます。こちらの④の料理名は『オムライス』。炒めたご飯の上に特別なオムレツを乗せた、最後を飾るにふさわしい一品です」



 ファナティシアに促されて見た先、そこでは火炎を纏うフライパンとご飯が踊っていた。

 凄まじく弾ける調理油、タナーが腕を振る毎にご飯と共に混じり合い、今日一番の香ばしい匂いを巻き散らす。



「ルートルイン、何なのよあれは!?」

「……チャーハン、なのだ」


「ちゃー、はぁん?」

「炒めたご飯のことだ。直接油に晒すことで究極の甘さを引き出す、ご飯料理の究極進化系の一つ……、なのだ?」



 やっぱり来た。

 そう思うライラは視線を僅かにずらし、ルートルインの表情を確認する。


 ルルは炒飯を知っている。

 だけど、冷えたご飯を見て絶句していた。

 なら、作り方までは知らないことになる。

 という事は……。


 そうして、ライラは仮説を立て終え、思考を切り替える。

 目の前の朱色に色づいた玉宝、チキンライスへと。



「ケチャップで味付けするのね!?いいじゃない!!」

「あ~、これはズルいですぅ~。もう食べたいですぅ~」



 レイミスとリリカルが恍惚とし始め、ルートルインとライラが焦りを含んだ視線を向ける。

 動き出した二つ目のフライパン、そこに投入されたのは溶き卵。

 そして、僅かに時間をずらし、茶色のソースが差し入れられた。



「なんだあれは……、普通のオムレツではない……よな……?」

「あんなにソースを入れたら固まらなくなる。絶対違う」



 何でアンタが知らないのよ!?

 というツッコミが放たれることは無かった。

 4人の姫全員が、ふわふわのまま丸められていくオムレツに釘付けだからだ。



「レイミス姫様、失礼いたします。こちらがオムライスでございます」



 ことり、と目の前の置かれた、朱と黄のコラボレーション。

 華やかなチキンライスの上に乗る、プルプルオムレツ。

 少女の吐息で揺れてしまう光景に、レイミスの目が輝いた。



「な、なんて可愛らしい料理なのかしら!?って、あれ……、何か書いてあるわ」

「『夢の世界へようこそ』?すごくお洒落ですぅ」



 その文字を書いたタナーは、ルートルインの『夢旅行』を知っている訳ではない。

 ただ純粋に、オムライスを試食した時に『幼い頃に夢見た料理』だと思っただけだ。



「こちらのオムライスは、最初にオムレツにナイフを入れて頂くと、より一層、美味しくいただけます」

「こ、こうかしら……?うわぁぁーー!!」



 真横に引かれたナイフ。

 ぷつり。と走った切れ込みに添い、トロトロのデミグラスソースが流れ出す。



オムライスで目をキラキラさせる姫様可愛い!!と思った方は、↓の評価やブックマークで推し活をお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ