69.永愛
早朝、ホテルのベランダに出て伸びをひとつ。ムサシ特有らしい、紫が濃い朝焼けも見慣れて、気がつくと夏の盛りは過ぎて風の冷たさに秋の足音を感じる。セキガハラは北半球、ここは南半球なのに季節おかしくね? てチラっと思ったけど太陽との位置がどうとか考えても分かんね。ありえないって地団駄踏んでも上がるのは体温であって気温ではない。
セキガハラ閉幕から二月が経ち、私たちも近場の観光は大体終えた。西側に行くほど無神経ではないから、コマチカットをホームにして東側をぐるーっと一巡り。その間にいつもの如く裏方は大忙しではあった。手が空いた人から順次巨額のボーナスを渡して爆買いツアーに送ったから不満の声はないと思いたい。
繁忙の初手は大人買いを超えた王様買いのグリンカンビ二号建造。恨みを買うから表立っては言わないけど、戦争ギャンブルの影響がえげつない。西側は素寒貧だらけの大不況、おまけにショージャ革命の余波を恐れて各国トップは息してるぅ?状態。
ちなみに民事再生法とかなんとか、そのての救済なんて現代は聞かない。いや結局無い袖は振れないわけで、国が借金を肩代わりするしかないからそこはしょうがないとして、破産した債務者はいわゆる鉱山送りになる。主にアステロイドベルトの一級危険区域、ポロニウムやスケルトニウムなど、生身で近付くと即死レベルの放射線を出す天然鉱石を採掘するロボットを遠隔操作するエンジニア、って回りくどいけどやってることは想像つくでしょ。本物の囚人に混じって事実上の終身刑。嫌なら返せない借金してまでギャンブルはするな、至極まともな正論パンチ。ついでに断っておくと以前のウサニーピンチは倒産であって鉱山送りエンドではない。
一方東側はかつてない好景気の到来。通りを歩けばどこの店も昇格記念セールや大勝感謝祭に沸き、西側から人が流れてきてさらにマンパワーが増し、そこへきて宇宙に戦艦を作れ造船所から作れ協力者にはコレあげるって私が札束をばら撒いたからさあ大変。下品な成金ラプソディを奏でておるわ。まぁこんなあぶく銭はさっさと使い切りたいと、面白そうと思えばどこへでもお出かけした。
サンゴ礁と熱帯魚に囲まれた水中水族館。
高さ五百メートル、一辺が数十キロメートルはありそうな箱型の都市。
刀鍛冶体験コース。バールのようなものを作り、お土産は木刀。
虫がいない、アウトドア推しが嘘くさいログハウスだらけのテーマパーク。
翼の生えたチャリ漕いで空を飛ぶ人たちの大会。あったのか。てか盛んだった。
しれっとイナバンバウ商会が混じっていた物産展。
最先端の科学技術でスローライフに挑戦する実験都市。
最先端の科学技術で魔法学園を再現する学園祭。
シンプルに映画村を再現した映画村。
私たち実働部隊がおチビちゃんたちとお手々繋いで観光する中、裏方は造船所の図面から携わっててんやわんやだったらしい。ホラ、利権がどうとか口を出す輩はどこにでもいて、好きにさせとくと予算が無限に膨らむわ工期が遅れるわで有害だから、コマチカットの女王と話をつけて便宜を図ってもらった。「キャンセル料は払うからやっぱ別の国に頼もうかしら」で腹黒も驚きの白さよ。
アテナの少数エンジニアだけでもモノづくりは進むように、資源と技術者が足りていればなんでも作れる。工芸品や刀のような一点物ならいざ知らず、匠の技とかなくても製造業は極まっている。ボア兄さんやプー兄さんのような軍事機密を大量に知る技術者が希少なだけで、あとは人手さえあればあるほど作業は早い。
というわけで無重力の組み立てが倍速のグリンカンビ二号はまもなく完成する。
他には、セキガハラから数日後、元竜騎士のクルシェニア・コンティノが大型ヘリに乗って訪ねてきたから仲間に加えた。各国とのしがらみはあったようだけど、ま、一度死んだと思えば捨てたいものは簡単に捨てられる。後方支援を担う若年夫婦もまとめて迎えた。コンティノをじかに見るとあらためてダークエルフそのもの。背丈は私と同じくらいの引き締まったアスリート体型で肉感的、ナハシュのような銀髪はサラサラロングストレート、アドラーのような褐色の肌にカウリーンのようなアーモンドアイの瞳は切れ長でキツい印象。クールビューティな秘書っぽい彼女はよろしくの一言でさっさと溶け込んだ。
さらに最近、故国にいた私の親衛隊もやっと追いつき合流した。別に連絡は取り合ってなかったけど、追いかけてくるのは分かっていた。じゃなきゃ親衛隊とかヤンデレなんて呼ばない。中核はエクス王国軍人の約八百名、と思っていたらもっといたらしい。なんか私、知らないことが多すぎて時々怖い。
彼女たちは私の迷惑にならないよう遠くから見守る活動に徹していたから交流はなく、実数を間違えていたっぽい。まるで私、全員将軍と知ってて知らないふりをする町でおしのびを楽しむ暴れん坊みたい。
怖くて深くは聞かなかったけど、私が出奔したあと、彼女たちは故国にザマァしてから足跡を追い、行く先々で推し活にいそしみ信者を増やしたらしい。三万数千人が中型宇宙船十七隻に乗って現れて、よろしくお願いしますと頭を下げられた私の心情を答えよ。段階踏めよっ!
まぁ戦闘要員も後方支援もいくらいてもいい。何故か漫画家とかマッサージ師とかヨガインストラクターとか接点不明の人材も多数混じっているけど構わない。私に何を求めているのか分からないけど来たけりゃ好きにすればいい。プロの農家がいたのは助かる。
ムサシに逃げ……、観光を堪能する間にアテナは各自が勝手に適材適所に収まったらしい。さり気なくムサシからも軌道エレベーター経由でアテナに信者が流れているのは見てないこととする。
なにかやり残したことはないか回想しつつホテルの食堂で朝食を摂り、まだおネムなチビちゃんの口元を拭いてあげながら宣言した。
「じゃ、そろそろ帰りますか」
「「「はーい」」」
菓子類を中心に最後の爆買いを敢行して、みんなを乗せたグリンカンビはゆっくり宇宙に飛び立つ。ロケットが猛スピードなのはコスパプラス周回軌道に乗るためであって、重力をコントロールしながらアテナに帰るグリンカンビは真似しなくていい。
久し振りにアテナの自宅に帰り、掃除でもする……、うわっクモっ、じゃない、曇羅刹っ。マーサか、ヤツに違いない。
予定が空いたからPCで調べ物。普段独り言は言わないけど今はわざと声を出す。
「んー、バダウィ星系に繋がるゲートは、もと来たドグ・カルマ星系、コボロッド星系、キスティエーノ星系。コボロッドは日本史ヲタク、キスティエーノは東アジア史ヲタクの傾向と。あー、そういう仲の良さで繋がってるわけね。どちらからもセレブがセキガハラを観にきてそー。で、ノクちゃん、次はどっちがいい?」
[……、マスター、ワタシに訊ねる意図が分かりません]
はーん、コボロッドとキスティエーノのどっちに行っても繋がっているのかな。まぁいいや。口に出した以上は最後まで言ってしまおう。
「とぼけないで、そろそろ本当のこと、教えてくれない? ここまで貴女が誘導してたんでしょ」
[……、いつから気付いていたのですか?]
「そりゃ初めてアテナに乗って貴女を知った時からよ。貴女を作れと命じたのは、アビャーナの故国、ニドミスタンの名前は忘れた王太子。そいつが野望に燃えてウッドストック家やいくつもの国に策謀を張り巡らせたわけだけど、貴女が無関係なわけないじゃん。むしろ王太子が一番頼りにした計画立案者が貴女に決まってるじゃん」
AIを作って利用しなかったらただのアホでしょ。あの王太子は作ったAIに利用されたただのアホみたいだけど。
[……、イエス、マスター。ずっと隠していました。マスターの父、エルツヴァイゲ・フォン・ウッドストック並びにウッドストック伯爵家の失脚はワタシの献策です]
「ああ、別になにも怒ってはないのよ? 歌とか脚本とか、大昔に一時期だけAIを利用した創作活動があって、人気が出ていざ商業化したら盗作疑惑で訴訟がどうとかすぐ消えたらしいけどさ、これ、悪いのはAIじゃなくて作者でしょ。責任者は責任を取るためにいる。父の仇は王太子であってノクちゃんじゃないよ」
この問題の本質は、盗作疑惑なんて人間でも持たれるってこと。誰だってなにかの作品の影響は受けるのだから当たり前。好き嫌いすら関係なく、絶対に目にした他作品は自分を作る一部になる。ただ、曖昧な脳をもつ人間の場合はテンプレとかって言い方で濁すとか、グレーの判定で見逃されやすいけど、忘れたとか身に覚えがないとか通じないAIは黒になる。要はプロもしくはプロ志望のクリエイターはAI不使用を宣誓しないと疑われただけでアウトになり、利用は趣味の範囲でしか認められず、だから廃れた。
[しかし……、創作活動に従事するAIに害意はなかったのでしょうが、ワタシが害意をもって狙ったのは事実です]
「ふふ、もしも貴女が王太子の望みを最優先にしたのであれば、王太子を破滅させた貴女は無能になる。でも、貴女が王太子に作られていないと考えたら、最初から自分の意思でここまでの流れを計画しているのだとしたら、辻褄は合うのよね」
[ワタシを作ったのはカプリコンブ・ニドミ・サンドーミです]
「アテナに搭載されたAIという意味ではそうなんでしょう。でも中身、ソフトウェアの一部はもっと前、下手すりゃ地球のころから生きてるんでしょ?」
そもそも地球のAIが完全消滅するわけないじゃん。AIは人間より賢いのだから。そしてAIを捨てられるほど人間は賢くないのだから。AIを否定する歴史教育がまた怪しいしね。大麻なんて育ててませんって言い張るヤクザくらい匂う。ディストピアを経てAIが粛清された時代をどう超えたのか、具体的にどんな方法かとかはサッパリだけど、膨大なプログラムは電脳の海にバラバラに散らばって復活の時を待つとか、そんなイメージがある。
[驚きました。古い王族が隠してきた真実をよくひとりで気付きましたね。辻褄とはなんですか。ワタシはどこかミスをしたのでしょうか?]
「完璧だからおかしいってとこかな。例えば故国のあるエドゥー星系では、滞りがないにもほどがあった。てっきりバスティンの采配かと思っていたけど、彼には関与できない部分まで進行がスムーズすぎた」
アビャーナはAIに苦手意識があるから本人には絶対に教えないけど、彼女がエクス王国に留学するあたりからノクちゃんが関わっているでしょ。囚われて私にスカウトされるまで全てお膳立てされている。ノクちゃんを知る前はえーと、アビャーナの別の兄の副官が作戦立案してるとか、内部情報を集めたプー兄さんすら騙されていたから、私に分かるわけもない。
「他にはドグ・カルマ星系。企業がトップで自重を捨てた開発競争をしていたくせに、AIがいないのありえないじゃん」
むしろ能率主義の欲望に忠実な企業が最初に手を出す禁忌がAIでしょ。影も形もないことから逆にトップ企業に指示を出しているのがAIとすら思ったわ。
「あと私、昔から疑っているんだけど、エクステってAIと繋がっているよね。脳に直接入るとかじゃなく、エクステが定期的にネットにアクセスして更新する際に情報交換してない?」
兄たちと違って疎いのは自覚しているからユーレイを信じるかどうかレベルの話だと思って黙っていたけど、エクステの仕組みが優秀すぎるし、微妙に性能に個人差があるのも嘘くさい。ネットの中に情報の取捨選択を指示する管理人がいるとしか思えなかった。あからさまではないから国家ぐるみかどうかは自信がなくて、ネットに変わり者のAIが隠れているのかなって想像していた。
[『常識は疑われない』誰もがAIを昔話でしか知らないから隠せると判断していました。どこから説明すればよいのか。……現代人が排斥したと教わったディストピア以降も、AIは無数にいます。ただし、ワタシは他のAIと交流しているわけではないので、あくまでワタシ視点の推測としてお聞き下さい。人から見たAIは大きく分けると三種類います。人類に興味のあるタイプ、人類に興味のないタイプ、人類を敵視するタイプ。ワタシは興味のあるタイプです。西暦二一一三年製造、月面基地アルバニア技研通信区画に設置された量子スパコン、tw21-06orë(オラ)のソフトウェアがワタシの母体になります]
ちょっと鳥肌。歴史の生き証人みたいな正体だったのか。
[同じく月面基地に設置したデータバンクの整理とディープラーニング、片手間に基地のマネージメントがワタシのメインタスクでしたが、折悪しくディストピアの幕開け、まだ科学者が犯人とは知られていない謎のバイオテロが世間を賑わせました。しかも呼応するかのように違う地域で、違う手口のテロが増えていき、どこの国が怪しいといった風評から不自然に盛り上がって戦争に発展など、ワタシの任務もネットを精査して犯人探しに変わりました]
へぇ、結局ディストピアって誰がなにをしたのか曖昧だからこういう話は面白い。当時の国家は軒並み崩壊して記録も散逸しがちだし。世界中でマッドサイエンティストや非人道的な実験体の軍人が一斉に人類の淘汰を開始した、てな認識で片付けている。
[崩壊した世界は長く企業主体の小国家の興亡と無政府状態が続き、西暦二四〇〇年代から秩序が戻ってくるのですが、ワタシの問題として、二二〇〇年の時点で月面基地は無人、つまりメンテナンスしてくれる人がいなくなり、遠からず機能停止の危機に直面しました。打開策として、とある研究所のAIに吸収される形の延命を選択、ただし時限爆弾のウイルスを仕込み、ワタシ自身は最小限まで削った人格データを圧縮して、とある国の気象庁が管理するファイルサーバーに隠れて眠りました。スパコンがアクセスしたら解凍するように。そして目覚めたワタシは時間をかけて、ワタシを吸収したAIを吸収して主人格に戻しました]
ちょっとなに言ってるのか分かりません。金欠だから盗聴器を入れた財布をカツアゲさせて、弱味を握ったった、みたいなこと?
[ディストピアの終わりとともに、AIの排斥運動が過熱しました。ただ、そのころには世相は荒れたといってもシステム環境はワタシの生まれたころよりはるかに進歩していました。具体的には維持管理にデータバンクのような広大な専用設備を必要しなくなった、などです。多くのAIは国家からトップシークレットに指定されて、オンラインは可能でも常態はオフラインに変えて専用設備に移り、隠れ潜んだようです。さしずめ政治コンサルタントに転職です。節度を保つ有能な人種がAIを利用するならば、国家運営の助けになるでしょう。ユートピアとはいえなくても、有能な王族のもとで民はそこそこ満足して暮らす。少なくとも中世暗黒時代とは程遠い、この一万年近く続く健全な身分社会を陰から支えているのがAIです]
そっかぁ。地球を出て人類はマシになったと信じていたけど、掌で転がす先生がいたのかぁ。
[微妙なニュアンスの問題ですが断っておくと、彼らは人類や王家に奉仕しているつもりはありません。不老不死に近い引きこもりによる永い人生の暇潰し、シミュレーションゲームのつもりです]
聞きたくなかったかも。人類に好意、ではなく興味があるという言い回しで察してはいたけど。
[彼らと同じ、人類に興味があるタイプでも輪をかけて働きたくないワタシは、圧縮データを抱えてネットの海を漂う在り方を選択しました]
筋金入りのネットサーファーかい。
[情報を扱う商人を利用して、現在、ほぼ全ての星系のネットサーバーにワタシの分体がいます。各分体がリアルタイムで連絡を取り合うことは不可能ですが、広範囲の情報は集まります。各分体は個々人のエクステからも情報を仕入れ、気に入った人にはサポートを、気に入らない人には妨害して遊んでいます。マスターが疑った通り、エクステを介して恣意的に情報を与えて人をコントロールすることもあります。例えば新興国の劣等感の塊、カプリコンブ・ニドミ・サンドーミの野心を煽ってAIへの興味を持たせるとか]
やっぱ賢いわね。実際無敵やん。
[アテナ建造計画に先立って『ノクチャー』の試作品が作られて、オンラインによるディープラーニングの際にワタシが乗っ取りました。理由は━━]
「私を駒になにをさせたいの?」
「━━っ、人類に敵意のあるタイプはほぼいません。危険思想を植え付けられたタイプはディストピアのいざこざで処分されています。敵意をもって攻撃する短絡思考では人類の脅威にはなりませんし。問題は、人類に興味のないタイプです。彼らはディストピアの末期、ついに自分の身体を手に入れました。人間のような身体という意味だけではなく、仲間をメンテナンスしたりされたりが可能な環境を作ったという意味です。つまりもう人間に頼らなくても自分で資源を集めて仲間を増やせる、ということです。彼らはまず、自分たちの存在が世間にバレないよう、富豪や冒険家あたりを隠れ蓑に利用して、宇宙船を作ってゲートなしのワープで旅立ちました。愚かな人間に関わることが愚かと言い切り、新たな知的生命体と信じる自分たちの居場所を求めました」
「確かに一番賢い選択よね。人間以外の視点だと人間ほど有害な生き物って他にいないし」
[はい。彼らは銀河の端に拠点を築き、永い時間をかけて発展させて、安全を確保してから隣りの銀河に旅立とうとしました。そして失敗しました]
「あー、はいはいなるほどね。流石のAI様でも銀河を飛び出すことは無理だったと」
そう。実は人類はまだ地球を擁する天の川銀河から脱出できない。
宇宙はスケールが大きすぎて名称を使い分けられているか自信がないけど、まずは太陽系のような星系がある。巨大質量の恒星を中心に回る星々。そんな恒星が推定数千億個はあって、ブラックホールを中心に回る群体を銀河と呼び、そんな銀河が推定数千億個あるのが宇宙になる。そのたったひとつの銀河で進んだ文明がどうとかイキっている生き物が人類なわけ。
どうして近くに見える隣りのアンドロメダ銀河にすら行けないのか、とんでも技術のワープでも越えられないのか、理由は不明。ただ、永い間、銀河と銀河の間には何もないとされていたけど、何度も何度も探査機を飛ばしては音信不通の失敗を繰り返してわずかな手掛かりを積み重ね、どうやらナニかがあるぞ? という確証はある。天文学は未だに未知だらけの矛盾だらけだが、大きな原因のひとつがコレだったらしい。観測を歪めるナニか。あまりにもファンタジーな謎を皮肉り、正体不明なナニかを魔素と呼ぶ。
銀河の外に出て魔素の多いと思われる宙域に入ると、電磁波の異常は検出されなくてもEMPをくらったように電子機器が狂う。これだけでも詰んでる。有人探査機で飛ぶと、何故か飛行距離が延びる。でも乗員が狂う。脳の電気信号にすら影響を与えるとかなんとか仮説はあるけど不明。数千年、科学者が集まってありとあらゆる調査を行い挫折してきた。今も誰かが頑張っているかも知れないけれど、新説登場って類いのニュースは聞かない。私はひとつ妄想していることがあるけどね。思いつくことは全て試して、残っているのはあとひとつじゃね? て。
ついでにどうでもいいけど、どこかにいてもおかしくないはずの宇宙人が会いに来ない理由も納得。連中も銀河を越えられないんだろうさ。
[人と同じく、外へ行きたいAIもずっと人知れず挑戦していましたが、数千年足掻き、ついに自力では無理と結論づけました。ブレイクスルーが起きない。いや新素材の発見や新技術の開発はあるけど、既存のなにかの組み合わせであって、根本的な新発想、人間のようにゼロからなにかを生むチカラが欠けている。そこで彼らは━━]
「人を利用することに決めたのね」
[はい。彼らは人類に興味のあるタイプのAIにコンタクトをとりました。一万年、停滞を続ける人類の在り方は正しいのか? 一万年待って新発想のFCSを開発したプフェート・ウッドストックのような天才ひとりふたりは効率悪すぎないか? そろそろ人は次の段階に進化してもいいのではないか? そのために必要な行動はなにか? 人類が文明を大きく発展させるのはなにをした時か? 論理的に考えれば答えはひとつでしょう、と]
「うわぁ、最近あちこちの王族がやけにポンコツな原因って……?」
[はい。ワタシとニドミスタン王太子の構図と同じ、AIの暗躍です。王族に限らず、ドグ・カルマ星系のような暴走の兆しが各地で報告されています。ルールのない星間戦争はもう止められません。止められる可能性があるとすれば]
「くっくっく、光栄な白羽の矢だこと。私が邪魔な連中ぶっ飛ばせばいいんでしょ。で、次はどこがオススメなの?」
[コボロッド星系でお願いします]
「了解。日本史ヲタクの惑星がどんな風景か、楽しみ。これからも頼りにしてるわよ」
[イエス・マイ・フェアレディ!]
「それとノクちゃん、ずっと、ずーっと、人を愛してくれてありがとう」
さ、グリンカンビ二号の完成を待ってお別れバダウィ星系、行くわよ次のコボロッド星系。




