九十二話 銘無しの神は笑う。
◆
「・・・・もぬけの殻・・・・か」
一平がそう呟いた。劇場のようなホールから更に下へ行くと少し広めの部屋のような場所があった。
特に何かがあると言うわけで無く、乱雑に紙が散らばっているくらいだった。
「んー・・・・。やっぱ、こっちにも何も無いし、誰もいなかったわ」
この部屋と繋がっていた小さな部屋からリンがそう言って歩いて来た。
どうやら、あれだけ苦労してきたのに、収穫出来ることは何も無いようだった。
「はぁ・・・・。そうじゃないかとは思ってたけど、本当に当たってるとはなぁ・・・・」
そして、その結果は一平が考えていたことをより確信させてしまった。
「盈戯と、矢羽田の話が嘘ってこと?」
「そう。・・・・何が目的でこんなことを?」
「さぁね? 私は分かんない。ただ、悪意からやった訳では無さそうね」
リンはそう確信していた。悪意があったのなら、もっと危険な状態に直接落としていただろう。それに、リンは今までの経験からそんな気がしていた。
「・・・・それはそうなんだけど・・・・」
一平もそこに関しては同意だった。まず、悪意などといった事に機敏な歩が反応しなかったという点も含めて、悪意があったわけでは無いと感じていた。
「まぁ、良いんじゃ無い? 遅かれ早かれ范怎は潰さなくちゃいけなかったんだし。それに、被害者が居ないんならそれは良いことじゃない」
リンがそう言った。けれど、多分リンはそのままにしておくことは無いだろう。紫龍の力を使って洗いざらい調べ上げるとは思う。それに、中国内で起こった事なら、暁月よりも紫龍の方が諜報力は上だろう。
「そう・・・・だな。うん、それじゃ上に戻るか」
一平はこれ以上は踏み込む事なく、そう言った。
「そうね、そろそろアイツも出血ヤバそうだし」
リンがヤンに背負われていたワンを見ながらそう言った。リンの言うとおり、ワンの顔色はどんどん悪くなっていた。
「君たちには悪いがおじさんは先に上に行っているよ。そろそろ、ワンを手当てしたい。それに、君たちはまだお仲間と合流をするだろう?」
ヤンもワンのことを気にしていたのか、リンが言ったタイミングで被せるようにそう言った。
「えぇ、そうね。それが良いわね」
「・・・・あぁ、心配しなくても逃げる事はしないよ。まぁ出来るとは思わないけど」
そう言うと、ヤンは少し急いだ様子で上へと向かって行った。
「僕たちもあの二人と早いうちに合流しないとなぁ・・・・」
「そうね。しかも、どっちとも連絡が取れないとかまさかやられてるんじゃないでしょうね」
リンはそう言いながら口を尖らせて左腕につけていたブレスレットを触っていた。ブレスレットには歩、一平、フーの三人と連絡が取れるようになっていた。
けれど、未だにフーと歩とは連絡が付かない状態だった。
「あの二人がやられるとは思わないけど・・・・。兎に角、早く見つけないと」
そうして、一平たちも二人を見つけるために上へと向かって行った。
◆
范怎 地下二階
「! 歩!!」
急いで上へと走っていた一平たちは、一平が開けたドアの前で倒れていた僕を見つけた。
僕は返り血によって全身が血みどろだった。その姿は何も知らない人から見れば、あたかも僕が死にかけているように見えた。
「おい、何があった?!」
直ぐに一平は僕の元に駆け寄ると、焦った様子でそう聞いてきた。
「ぅん・・・・。! あれ、一平・・・・? どうしたの?」
僕は目を覚ますと、一平がいる事に驚きながらそう応えた。
仰向きで一平に頭を持ち上げられている状況を感じて、僕は自分がここで気を失っていることを察した。
「あー、僕気を失ってた?」
「こんなに出血して・・・・!」
「いや、血は僕のじゃないよ。ただ、多分身体の至るとこが骨折してる」
「そんなに強い奴がいたのか?」
「ううん、アイツらじゃないよ。違う面倒な奴が居てね・・・・」
「面倒な奴? いや、今は良い。それよりも上へ向かうぞ、歩けるか?」
「ごめん、一平・・・・。アドレナリンが切れた。動くのはキツイ。・・・・ってか、意識保ってるのも結構・・・・」
「了解。背負うから、揺れるのは我慢してくれ」
「分かった、ありがとう一平」
「行くぞ!」
「っっっ・・・・!!」
そして、僕たちは更に上へと向かって行った。フーと連絡が取れなくなっている以上、すぐさま見つけないと危ない可能性があった。
◆
地上
「あっ! フー!」
「ん? あー、お姉ちゃん」
「何で地上にいるの?!」
「いやー・・・・、ちょっと迷っちゃってさぁ・・・・」
リンだけでなく、この姉弟は二人とも方向音痴だった。それも超がつくほどの方向音痴だった。そんなフーが地図無しで、下へと行くことができるほどここは単調な作りはしていなかった。
「なるほどね。連絡が付かなかったのは?」
「あぁ、それはほら。戦ってたらこんなにされちゃって。だから迷ったわけだし」
「なるほど。ひとまず、安否が分かったんなら歩を病院に連れて行く。ちょっと呼吸がおかしくなってきてる・・・・!」
「!! それなら病院じゃない、紫龍に連れてきた方がいい。病院よりも速く、高度な治療が出来る」
「! 分かった・・・・。頼んだ、二人とも」
一平はそう言うと、なるべく揺らさないように注意を払いながら僕を二人へと渡した。
急を要するとはいえ、日本の政府直轄の人間が中国の暗部の本部へと行ってしまったら、かなり大きな問題になってしまう。それは、リンとフーも理解していた。
だからこそ、一平に何も言う事なく、僕を受け取った。
「行ってくる、歩の処置が終わったら連絡する」
「分かった。どうか、歩を頼んだ」
「任せてよ。まぁ治療するのは私じゃないけど。応急処置くらいはするけどね」
リンはそう言うと、腰につけた双剣のうち、右側の剣だけを抜くと自分の影を断ち切った。そして、歩にその影を融合させるようにして付け直した。
「行くわよ、フー!」
そして、僕を背負ったままフーとリンは急いで走り出した。僕を背負ったまま飛び上がり、人目の付かないようにビルの屋上までパルクールのように移動して走り出して行った。
「・・・・、これで歩は多分大丈夫か・・・・。僕も、やるべき事をしないとな・・・・」
一平は二人が急速に遠ざかっていくのを見ながらそう呟いた。そして、スマホを取り出すとさまざまなところへと電話をかけ始めた。
ひとしきり電話をかけ終えると、少し急いだ様子でもう一度范怎のビルの中へと入って行った。
◆
まだ、上海ダンジョンが崩れる前まで時は遡る。ダンジョンをマリーの手によって崩壊させる少し前、他の階層ではまさに地獄としか言い表すことができない状況と化していた。
五十人いた冒険者のうち、三十人ほどが同じ場所に転移していた。そして、その三十人はたった一人の敵と戦っていた。
「どうだ? お前らのような奴らでも分かるくらいに最高の音色だろ?」
藤太たちを殺した時に使っていたグランドピアノではなく、今回の椎名はバイオリンを鳴らしていた。
ハ長調のドを弾くたびに、椎名へ攻撃を繰り出そうとしていた者が椎名の目の前で首を飛ばされていた。
「遠距離から攻めろ!! 何をされてるのかが分からない以上、近づくな!」
「遠距離? 遠くで聴いたらもったいないだろ、せっかく、一生に一度聞けるくらいの演奏なんだから近くで聴いていけよ!」
椎名が叫ぶ声を聞いて、そう言った。すぐさまバイオリンからの音色が強く響いた。
もし、ちゃんとしたプロの演奏家がいたなら、百人に聴かせて百人全てがスタンディングオベーションをするレベルの音色だった。ただ、これはそんな普通のものでは無かった。
「は?!」
男の叫び声でその場に止まった奴らの中で、一番前にいた中年ほどのおじさんの身体に四本の赤い線が浮かび上がった。
そして、わずか一瞬。瞬きを一つするほどの時間でその線が身体に食い込むと同時に、鮮血を上げた。バラバラになったおじさんの身体が床に散らばった。
「残ってんのは、あと・・・・二十人くらいか。観客が少ないな・・・・。まぁ、今日は我慢するか!!」
椎名の奏でる音がより一層速くなった。正に、神業とも思える手捌きで確実にバイオリンから重厚かつ最高級の音を響かせた。
「観客の皆様! 今宵は終演となります! 心して、最後の演奏をお聴きくださいませっ!!」
椎名のバイオリンからはシューベルトの作品である『魔王』が奏で始められた。その技巧は圧倒的なもので世界規模の演奏会でもすぐさま満員になるレベルの演奏家であることに疑いは無かった。
そして、その素晴らしい音色と理不尽な死が同時に冒険者たちへと嵐のように襲いかかってきた。
「っっっつ・・・・!」
この時、正常な判断を行うことが出来る人間が、もしくは恐怖に立ち向かうことや、すくむのでは無く自らの命のために逃げ続ける人間がいれば、もう少し生き残ることが出来た。皮肉にも、勇敢な者ほど、死んでいくのだった。
「うわああああああッッ!!」
そして、その勇敢な者は若い冒険者の方が多かった。野生の勘なのかは分からないがこの場にいた若い、それも二十代程度の冒険者は抗えない死を感じ、ヤケを起こしたかのようにして椎名へと走り出した。せめて一撃をくらわせようと誤った選択をしてしまったのだった。
「! おい、やめろ! 退けっっ!!」
隻眼の男が叫んだ。しかし、血走った眼で走っていく彼らにその言葉は届かなかった。一瞥もする事なく椎名へと向かっていく。
「そう! やはり演奏は最前列で聴かなければな!!」
椎名が笑顔で叫びながら演奏を過激にした。
紅く染まった線が走り出していた冒険者に絡みついた。ほぼ無差別に辺り一体に赤い線が撒き散らされ、身体にからんでしまった者は例外なく、バラバラになっていった。
この一瞬で冒険者は四分の一程度がその命を散らした。
「なんなんだ・・・・、何なんだよっ! お前はっっ!!」
「そんなのは今はどうでもいいだろ、演奏だけに集中していろよ!」
流れる手つきはそのままで、一度横目で隻眼の男の方を見て、椎名はそう言った。
隻眼の男である稲荷 蓬莱の能力はハウリングというもので、音に関係するならば対処のしようはあった。
しかし、どうやら椎名の能力は音を発生させてはいるものの、音そのものが攻撃手段になっているわけでは無さそうだった。
「・・・・全員に伝達! 敵は音もしくは、糸に近い者で攻撃をしている! 理由は知らんが、赤く染まった今なら見えるはずだ、注視して避けろ!!」
「!!」
僅かに椎名の手がブレた。そのせいでたった一度だけではあるが一音外してしまった。それと同時に、椎名の頬にピッと切り傷が生まれた。
「っ・・・・!」
長噛椎名、彼女の能力は神曲。通常、演奏した曲の各音域ごとに任意で、超音波が付与された符線のような糸を具現化させ、それを利用して攻撃することが出来る。例えば、ドであれば一本の糸が、レであれば二本の糸がというように、最大で七本まで出現させることが可能であった。
また、感情によって糸の色は変化し、一度に出せる量が音階ごとに三本増加される代わりに、赤く染まってしまうのだった。加えて、デメリットとして一度でも演奏をミスするとミスした回数分自らがダメージを受けてしまう。そして、一度演奏を始めると途中で辞めることは不可能なのであった。
今回も、自分の能力が完全にというわけではないが割と掠る程度に合っていた事に動揺した結果、音を外しダメージを受けたのだった。
「そして、アレを倒す気にはなるな!! 時間を稼げ、逃げ続けるだけで良い!」
正解だった。今、冒険者たちがやるべき事を的確に判断して、蓬莱はそう言った。
正直に言って、今この場に椎名を倒すことが出来る人間も、その可能性がある人間すらいない。そんな状況で立ち向かうのは勇敢ではなく無謀であった。だからこそ、出来ることは逃げることだった。恥やプライドといったものを捨てて逃げに徹する。それが、今一番生きる可能性が高い選択だった。
「逃げたって意味がねぇだろぉがよっ!!」
頬からの血を拭うこと無いまま、椎名はそう叫んだ。椎名の能力の射程は、演奏する楽器にもよるが今回のバイオリンであれば大体四〜五メートル程であった。
だから、冒険者完全に逃げに徹した場合、極度の集中力と繊細さを要求される椎名は、全員を仕留めることが非常に難しくなるのだった。
「逃げろ、逃げ続けろ!! 遠距離から攻撃ができる奴は、遠くから攻撃も続けろ!」
蓬莱の指示に従うようにして、逃げると同時に遠距離から攻撃が椎名へと襲いかかった。
「・・・・チッ!」
椎名は攻撃では無く、防御をするために糸を出し続けていた。自分の周りに繭のように囲みながら攻撃から身を護っていた。
「演奏の邪魔をしやがって・・・・! だったら———!!」
椎名は、魔王の演奏が終わると同時に、新しい曲を演奏しようと弓を弦に置いた。
椎名はここにいる奴らを生きて逃す気はないようだった。
「それはダメだよぉ〜」
突然、椎名の背中に乗りかかるようにして誰かがそう言った。
オレンジの髪色でポニーテールにしていた女がそこにはいた。
「!!」
冒険者全員が身構えた。たった一人でここまで壊滅状態に陥ったのに、更に増援が来たとなるともはやそれは死亡宣告以外の何ものでもなかった。
「ダメだよ、椎名ちゃん。それにもう時間だし」
オレンジの髪の女は椎名の背から離れると、ニコニコしながらそう言った。
「! もう終わったのか? 間違い無いのか?」
椎名は少し驚いた様子でポニーテールの女にそう聞いた。
「うん、見てきたから。良いところまでは行ってたんだけどね、マリー・アルスフィアが来てた。アイツにぜーんぶ持ってかれたよ」
ついさっきまでの戦い。マリーがバーターを圧倒するその現場にこの女もいたのだった。
「!・・・・分かった。今日はこれで終わりにしよう」
椎名はバイオリンの弦の上に置いていた弓を下ろした。そして、バイオリンを異空鞄の中へと仕舞い込んだ。
「・・・・今回はツケにしといてやる。次に会ったときは、今日の分も含めてきっちりと貰うからな」
一つため息を吐いた後、椎名は残っていた冒険者たちを睨んだ。そして、それだけを言い残すとこの場から消え去った。
「はー、本当に椎名ちゃんは守銭奴だねー。それじゃ、お騒がせしましたー!」
ポニーテールの女はやれやれというようにそう言うと、椎名の後を追うようにして消え去ったていったのだった。
「っ・・・・!」
冒険者たちは一斉に地面に腰を付けた。恐怖からの解放と安心感が急に心を埋め尽くし、必要以上に入れていた力が抜けていった。
「い、生きてる・・・・?」
恥やプライドを捨ててまで逃げた甲斐があった。最後、逃げに徹したお陰で残っていた冒険者は全員生き延びる事が出来たのだった。
けれど、この冒険者たちの一体どれほどが冒険者として今後も活動することが出来るのか。多分その数は一割くらいだろう。それ程までにこの場にいる者に深い恐怖を椎名は植え付けたのだった。
「・・・・全員、移動するぞ。こんな所で止まっていた方が危険だ」
蓬莱がそう言いつつ、腰を抜かしてへたり込んでいた冒険者たちを起こしていた。
「は・・・・、はい」
人の心にこびりついてしまった恐怖は拭う事はほぼ出来ない。
蓬莱に言われたことをすぐさま実行することができる者は少なかった。
「・・・・、本当にクソが・・・・」
あの理不尽極まりない存在に向けて蓬莱はそう呟いたのだった。
この一件のせいで冒険者は三分の一程度が死亡し、生き残った冒険者のうち九割近くが恐怖によって二度と冒険者として活動することは出来なくなったのだった。
◆
紫龍 医療本部
「んっ・・・・」
知らない天井で目が覚めた。身体はふかふかのベッドの上に寝かされ、左腕には点滴の針が付いていた。
「! ・・・・あぁやっと覚めた。フーとリンを呼んできてくれ」
僕の横で誰かが看護師のような人にそう言った。看護師は少し急いだ様子で歩いて行った。
「ぼ、僕は・・・・!!」
「あぁ、まだ起き上がらなくて良いよ。身体も痛むだろう」
僕のすぐ隣に座っていた医者のような人がそう言った。この人が言うように、力を入れて起きあがろうとしただけで右腕と両脚に激痛が走った。
「急激に治したせいで、まだ馴染んでない。少なくともあと、四時間くらいはそのままにしといて」
「・・・・っ、分かりました。貴方は?」
僕は言われるがままに力を抜いてベッドの上に仰向けに寝たままの体勢に戻した。
そのまま、頭だけを動かして隣の男にそう聞いた。
「ん、紫龍の医療班、最高責任者をやらせてもらってるパク・ツァイロン。どうぞよろしく」
「?! 紫龍・・・・?! な、何でそんなとこに・・・・」
「フーとリンの二人に死ぬほど頼まれてね。そのお陰で、昨夜は徹夜さ」
「す、すみません・・・・」
「いや、君が謝ることじゃあ無いよ。それに、君は中々重体だったしね」
「重体・・・・だったんですか?」
「ああ。特に筋繊維がズタズタだった。折れた骨が筋肉を裂いていたのと、内側から破裂するような感じで筋肉が千切れてた。・・・・あまり詮索はしないが、一体どんなことをしたらあんなんになるのか・・・・」
「ありがとうございます。紫龍でも無い、僕を」
「日本の金級冒険者に恩を打っておいて損はないからね。それに、フーとリンと仲良くしてくれているらしい君たちを蔑ろにする理由は無いからね。! 噂をすれば・・・・」
パクさんが部屋のドアの方を見た瞬間、勢いよくドアが開いた。
「「歩!!」」
血相を変えた様子でフーとリンが部屋の中に入って来た。
「も、もう大丈夫なの?!」
「うん。しばらくは寝たままだけど、とりあえずは」
「良かったー、無事で」
「・・・・俺のおかげだけどな」
「まぁそうね。感謝するわ、パク」
「感謝してる人の態度じゃ無いけどね、それ」
「細かいことは気にしないでよ」
「はぁ・・・・、全く」
「・・・・二人とも、ありがとう。僕を運んでくれて」
「礼には及ばないわよ」
「どうってことないよ」
二人はそう言った。二人とも僕に恩を売る気はさらさら無いのか、何も気にしすることなくそう言い放った。
「・・・・さて、歩。あの後、范怎が・・・・、いや今回の事件がどうなったのか、知りたく無いか?」
フーが少し真面目な顔になると、僕にそう切り出した。
「! 知りたい」
身体を起こすことが出来ない僕は、瞳孔を開くと、フーにそう応えた。
范怎がどうなっていたのかは気掛かりだった。それに、ちゃんと覚えているわけでは無いけれど、ボロボロだったはずの一平も心配だった。
「ふっ・・・・。大丈夫だよ、一平はちゃんと無事だから。それを含めてちゃんと説明するから」
フーは目だけで必死に訴えかけてくる僕の姿に微笑んでそう言った。
◆
二日前
僕が倒れてすぐに、フーとリンは紫龍の医療本部へと連れて来ていた。
「パク! 起きて、歩を助けて!!」
「パク!! 起きなさいよ!!」
まだ夜も明けきっていない時間であったのにも関わらず、医療本部の中で一番高い医療技術を持っていたパクさんを叩き起こしていた。
「・・・・? 何?! どうした・・・・?!」
パクさんは少し不機嫌になりつつも、近くにあった眼鏡をつけて二人を見た。
「こいつを、助けてくれ・・・・!」
「!! 直ぐに手術するぞ」
フーに担がれていた僕の姿を見たパクさんは一瞬で起き上がると急いで看護師たちに連絡をした。
当時、僕の身体はそれくらいにはボロボロで、眠気は一瞬で吹き飛んだらしい。
「歩は助かるの・・・・?」
「大丈夫だと思ってろ。自分に都合の良い祈りをした方が良いだろ。失敗した時は俺を責めれば良い。そう言う仕事だからな」
パクさんは焦った様子のリンたちの肩に手を置いた。直ぐに、パクさんの元に、急いだ様子で数人の看護師たちが車輪付きの寝台を運んできた。
「預かりますよ」
看護師の一人がフーから僕の身体を受け取ると寝台に寝かせ、近くの手術室へと運んだ。
「手術室には誰も入れるな。フー、リン、一応見張っておいてくれ」
「「うん」」
パクさんは即座に手術服に着替えるとマスクと手袋をつけて手術室の中へと入って行った。
パクさんが入って直ぐに手術中と書かれた赤いランプが点灯した。
一時間後、ランプが消えた。そして、ランプが消えてからしばらくしてマスクと手袋を外して、帽子を外しながらパクさんが出て来た。
「歩は・・・・!」
「大丈夫、命に別状はない。ただ、あと数十分遅れてたら出血多量で死んでたかもな。まぁ、ひとまずは心配すんな。俺は寝る、お前らも寝とけ」
パクさんはそう言うと、部屋に戻って行った。
二人は、パクさんに言われて安心したのか一平に一言だけ連絡を入れて眠りに着いた。
◆
一日前 午前九時
「すまん、一平。遅れた、怪我は大丈夫か?」
翌日、フーは一平のもとに訪れていた。二人は、完全防音の個室のあるカフェにいた。フーは店員さんにアイスココアを頼むと席に着いた。
「うん、もう傷は塞がったし大体は。で、歩も大丈夫なんだよな?」
先に席について、グラスに入ったコーヒーを飲んでいた一平がそう言った。
「ああ、それに関しては確実に。まぁあと一、二日は寝たままだそうだけど」
「そうか・・・・、それなら良かった」
フーが肯定すると、安心したように一平はため息をついた。
「・・・・で、本題は?」
フーの頼んだココアが頼んでからしばらくして、フーがそう切り出した。
「・・・・ああ。僕はお前らと別れた後、范怎の中を探索したんだけど、そん時に色々問題があってな」
「問題? 何も無かったんじゃなかったのか?」
「いや、あったんだ。まず一つ目は、歩が倒した捕虜が死んでた。毒とかで自死した訳じゃない、首元をバッサリと斬られてた」
一平が范怎のビルの地下へ戻ると、歩が捕らえていた女が遺体となっていたのだった。首が何らかの鋭利なもので斬り裂かれ、何とか皮一枚で繋がっているほどだった。
一平が戻るまでにそこまで時間を要したわけじゃ無い。恐らく、いや十中八九無銘教の奴らの仕業だろう。
「! 本当か?」
「うん。そして、それだけじゃない。一番下の階にもう一度行ってくまなく探してみたら、こんなのが見つかった」
一平はそう言うと、B4サイズの封筒を机の上に載せ、フーへと差し出した。
「? 開けて良いのか?」
一平は何も言わずに頷くと、フーに開けるよう催促した。
封蝋によって止められていた入れ口を破って中に入っていた少し厚めの書類に目を通した。
「!! ・・・・これは・・・・」
フーが目を通した書類には、范怎と中国政府の一部の上層部の人たちとの癒着の証拠が書かれてあった。
「何が書いてあったのかは僕は知らない。けれど、この事は内密に。良い? 僕は中を知らないんだ」
過程はどうあれ中国にとって隠したい事が日本の政府直轄組織に知られたとなれば大問題だった。だからこそ、一平はあくまで僕は中を見ていないというスタンスを取り続けた。
「・・・・分かった。すまん、一平」
「・・・・なぁ、フー。無銘教についてどこまで知ってる?」
話を変えるようにして、急に一平が尋ねた。
「? ・・・・紫龍の情報としては最近起こった事件の裏で動いていると思われる宗教団体。ただ、そのアジトの場所や構成員の数などは一切分かってない。危険視はしているけど、今はどっちかというともう直ぐ起こる全世界共同戦線と近年上昇してるダンジョンの発生の方を重視してる」
封筒を大事に異空鞄へとしまい込みながら、フーが少し考えてからそう言った。
「・・・・そっか」
「急にどうした?」
「・・・・日本は直接大きく被害を受けたこともあって深刻に無銘教について調べてる。
無銘教は一介の宗教団体じゃない。もっと悍ましいナニカだ」
一平は深刻に、淡々とそう言った。一平は気付き始めていた。無銘教の異常さに。調べても調べても謎に包まれたままの奴らを。
「! ・・・・気を付けておく。情報が入ったら一平に伝えれば良いのか?」
「! ・・・・そうだね。話が早くて助かる」
「あー、それと。市山財閥の取締役が見つかったぞ」
「!! どこで?! アイツから無銘教の事を聞き出せれば———」
一平は少し驚きながらフーに食いかかるようにそう言った。
「残念ながらそれは無理だ、一平。何せ、グチャグチャになってたからな。市山 柊鵝と認定するのにが難しいくらいにグチャグチャだった。
正直、今まで見て来た中で一番酷いもんだった」
その現場を思い返したのか、少し顔色を悪くしながらフーがそう言った。フーがそこまで言うということは余程なのだろう。多分、グチャグチャとは文字通りの意味だろう。
「・・・・、はぁ。財閥の一角が消えるなんて頭の痛すぎる話だ・・・・。しばらくは荒れそうだなぁ」
一平の属する暁月は主な仕事は日本国内で起こる事に対処すること。今回の一件で四大財閥の内、一つが消えたとなると、日本国内がしばらくは荒れるのは目に見えていた。
多分、一平にとって過酷すぎる日々が始まるのであった。
「それじゃあ、歩が起きたらまた連絡してくれ」
十数分して、会計を済ませるとフーと一平は店を出た。
「ああ、分かった。じゃあな、一平」
「ああ。それと、今回は助かった。ありがとう」
一平はフーを真正面から見て、頭を下げてそう言った。
「礼を言われるようなことはしてないよ。あんまり力になれた感覚は無いし。それに、俺がやったのなんて、お前を傷つけてしまったことくらいだしな」
フーが頭を下げるのを見て、否定しながら謙遜するようにそう言った。
「ははっ、次までには対等に闘えるくらいには強くなっておくよ」
笑みをこぼしながら一平はそう言った。
「ははっ・・・・。・・・・、一平。ありがとう、紫龍としてではなく、一人の人間として協力してくれてありがとう。何かあれば俺を呼んでくれ、出来る限り力になる」
そして、フーもまた頭を下げてそう言った。一平たちとフーたちとの間には確かに絆のようなものが生まれていた。
会った最初こそ勘違いがあったものの、市山財閥や范怎との戦いの中でその縁は強く確実なものへとなっていったのだった。
! ・・・・そうだな、その時はそうさせてもらうよ。フーが困った時は僕も頼ってくれ。僕も頑張るからさ」
「ああ、・・・・じゃあな一平」
「ああ、じゃあな」
そして、二人は反対の道へと歩いていったのだった。
◆
「と、まぁお前が寝ている間にあったのはこんな感じだ」
フーは隠すところは隠した上でほとんど起こったことをありのままに伝えた。
「色々気になるけど・・・・、あの女の人が死んでたって本当?」
「ああ・・・・。一平に言われた後、直ぐに見に行ったが死んでたよ。ただ、少し気になったのは殺されたはずなのに笑顔だった事かな」
「笑顔?」
「そう、笑顔。普通は恐怖だの、もしくは不意打ちで殺されたんなら真顔だのなはずなんだけどな・・・・」
「・・・・、無銘教・・・・。本当に何が目的で?」
「さぁな。ただ一つ分かってるのは、思ってる数倍危険な奴らだということだけだな」
「そうだね・・・・」
「まぁ、とりあえず今は安静にしろよ、歩」
「そうね、それが良いわ、一先ず命に別状はないみたいだし、今はそれだけで満足よ」
「あはは・・・・、そうだね。それじゃあお言葉に甘えて、もう一回寝とこうかな」
「次に起きる時は多分身体も起こせるようになっているはずだからな、それが良いだろう。何なら睡眠薬でも投与してやろうか?」
「いや、それは結構です・・・・」
「フッ、冗談だよ。それじゃあ、俺たちは出て行こうか。何かあったら枕元のボタンを押してくれ」
「はい、ありがとうございます」
そして、僕はもう一度眠りにつくのだった。
◆
何処なのか一つとして分からない部屋に、四人が集まっていた。
「まだ揃わんのか?」
無銘教No.5の黒鳶 伴治が右腕に着けた時計を見ながら少しイラついたように言った。
集合の時刻は遠にすぎており、それでも未だ半分以下の人数しか集まっていなかった。
「まぁ、しょうがないでしょ。みーんな、性格とか終わってるんだから」
オレンジ色でポニーテールをした笠鳥 ほむらがケラケラと笑いながらそう言った。
「ははは、それはその通りだなぁ」
数日前、レナたちの前に現れ、陸を助けた男であるクロウ・リーブルンがほむらの言葉に笑いながら肯定した。
「あー、こんな事なら、もっと遅く来れば良かったかぁ?」
「すまん、遅れた」
「おー、椎名ちゃん。隣においでよー!」
椎名の姿を見ると、ほむらが笑顔で手を振った。椎名は特に何か応えることは無く、無言でほむらの隣まで歩いて行った。
そして、椎名が来てからしばらくして、続々と集まり始めた。
「・・・・ライ以外は揃ったか」
十数分して、まだ集まっていなかった人の内九割が揃った。
そして、その中には眼帯を着けた陸の姿もあった。陸は眼帯をつけている以外はいつも通りで、既に怪我自体は治ったらしかった。
他にも、市山 柊鵝を惨殺した女の姿もあった。
「遅れた私が言うのもアレだけど、あの方はどこにいんの?」
キョロキョロとしながら呟くように椎名がそう言った。
「・・・・もう、おいでになられている」
まだ集まっていなかったはずの一人であるライ・ドルバーゲンが椎名の呟きに応えるようにしてそう言った。
「!!」
全員が一斉にライの声がした方に目線を移した。ライの隣から何者か・・・が少しずつ近づいてきていたのが分かった。
『やぁ、久しぶりだね』
光に包まれた何かがそう言葉を発した。その瞬間、全員が床に片膝をつけると同時に、何かに向けて頭を下げた。
何かの声は広い部屋に響き、一瞬でその場が凍りついたかのように静まり返った。
『全員揃ってるね』
何かはそう言うと、いつのまにか九人の前に現れていた玉座のようなものへとゆっくりと歩いて行った。
『すまないね、みんな忙しいのに。集まってくれてありがとう』
何かが玉座に座った後もなお、全員が顔を上げることはしなかった。
「いえ、礼には及びません」
九人と同じように顔を下げていたライがその態勢のままそう言った。
『・・・・さて。早速本題に入るけど』
何かは全員が頭を下げたままの状態のことを特に気にすることもなく話し始めた。
少し圧がかかった声に、この場に緊張が走った。
『まずは・・・・そうだなぁ。陸、君やられたんだってね?』
「! ・・・・ま、誠に申し訳ございません。期待を裏切る結果になってしまいまして・・・・」
「ああ、別に責めてるわけじゃないよ。ただね、弱いのは罪だからね。・・・・ライ、多少荒くても構わないから陸を指導してあげてくれ」
「・・・・仰せのままに」
『陸、ライのもとで強くなれ。次に負けることは許さないよ』
「はっ、寛大な御処置、感謝致します」
『うん。じゃあ次の話。前言った刻藤 歩と異能力についてだけど』
「!」
『あれ、一旦中止しよう。もう少ししたら、全世界共同戦線が開始される。それが終わるまで、各々刃を研いでいてくれ。
あと一から二回くらい大きな事件を起こして、本部に見せかけた場所を冒険者たちに破壊させたら無銘教としての行動は当分無くしてくれ』
「仰せのままに」
あの方がそう言うと、ライは抵抗することなくそう応えた。
「進言しても宜しいでしょうかぁ・・・・?」
クロウが顔を伏せたまま、ゆっくりと右手を挙げた。
『?』
「・・・・恥を知れ、リーブルン」
『いや、良いよ。で、どうしたの?』
ライを手で静止しつつ、クロウに顔を上げるように催促しながらそう言った。
「ありがとうございます。・・・・単純に疑問でしてね。何故この時期に活動を弱めるんでしょうかぁと思って」
最もな話だった。クロウからしてみれば、今の冒険者は一部の規格外を除いて特段相手になるような危険な者はいないと思っていた。だからこそ、この段階で限界まで冒険者や社会に打撃を加えた方が有効だと考えたのだった。
『・・・・まぁそうだよね。疑問に思うよね。・・・・理由は二つある。一つは無銘教に対して警戒が高まりすぎたこと。もう一つは、刻藤 歩の異能力を覚醒させる時間が必要だから。・・・・どう? この理由じゃ不満かな?』
「・・・・いえ、不満は無いです。理解致しましたぁ。・・・・出過ぎた事を申して、すみませんでしたぁ」
『・・・・心配しなくとも一、二年後くらいには、君たちにも存分に働いてもらうよ。期待しているよ、我がナンバーズ。その日まで牙を腐らせないでくれ』
「はっ!!」
十人が顔を上げて、声を揃えてそう応えた。
何かはその応えを聞いて頷くと、その場から誰にも認識できなくなった。
何かが消えると、眼前にあった玉座も霧散するように消失した。
「・・・・ふぅ、やっぱり肩が凝るなぁ。敬語を使うのはぁ・・・・」
クロウは立ち上がると首を回しながら呟いた。
「まぁ、思っていたより全然軽いことだっから良いんじゃ無いっスかねぇ」
No.9であるリピット・ストーレイがクロウの呟きを聞いてそう言った。
基本的に、ナンバーズが全員召集されるのは余程のことじゃない限りは無い。だからこそ、全員集まったのに話しの内容としては軽いものだった。
「いやーてっきり俺チャンはナンバーズの入れ替えかと思ってたけどなぁ・・・・」
頭の後ろで腕を組みながら、No.8である車谷 猛牙が陸の方を見ながら含み気にそう言った。
「・・・・何が言いたい?」
「いやー? 別に何も。それとも何か、自分にも思うところがあるのかな? 鬼丙 陸君」
ニヤニヤしながら煽るように陸は近づきながらそう言った。
「・・・・特に理由も無く前線に立てない者は大変だな。何も出せないから口しか出せなくて」
陸は真顔で言い返すと、真正面から猛牙の顔を睨み付けた。
「あ? テメェ———」
「・・・・見苦しいぞ」
危うく、喧嘩になりかけるところでライが冷たく言い放った。
「・・・・。冗ー談だよ、冗談。そんな怖い顔すんなよ、ライさん」
猛牙はしばらくライの方を見ると、陸から距離をとって軽い感じでそう言った。
「・・・・。鬼丙、すぐに始める。ついて来い」
「・・・・はい、分かりました」
陸はライの方を見て、近くに歩いて行った。ライは陸が近くに来ると右指をパチンと鳴らした。
その瞬間、二人の姿が一瞬にして消え去った。
「あっはは! 後輩君に言われてやんのー」
二人が消えたのを見てから堪えられなくなったようにしてほむらが爆笑していた。
「チッ、うるせぇよ、ほむら。喧嘩売るんじゃねぇ」
顔をしかめながら、イジってくるほむらにそう言った。
「勝てるから売ってるんだよー!」
ほむらは笑顔のまま、猛牙に喧嘩を売り続けていた。まさに、火に油を注ぐ行為としか思えない行動だった。
しかし、それでもその喧嘩を猛牙は買うことはなかった。それ程までにほむらは強かった。
「・・・・っふざけやがって。今日は帰るわ、気分も悪りぃしな」
「戦わないの?」
「はっ、やってられっか。少なくとも今のところは人外のお前と戦うつもりはねぇ」
ナンバーズと一括りにはしているものの、力の差は相性も含めて明確に存在していた。
現に、猛牙はどう足掻いてもイレギュラーな妨害が無い限りはほむらに勝つことは出来ないのだった。
猛牙はそう言うと、ズボンのポケットに両手を突っ込んだまま、ズカズカと歩いて行った。
「つまんないのー。まぁ良いや、椎名ちゃんはこれからどうするの?」
「私は帰る。明日は早いしな」
椎名はぶっきらぼうにそう答えて、時計を見ていた。
「あー、じゃあ私も帰ろっかなー」
「そうですねぇ。もう結構帰ってっるスからね」
リピットが言うように、既に残っていたのは四人しか居なかった。
あの方が消えて直ぐに三人はいなくなり、ついさっき三人が消えたことによって残っていたのは四人だけだった。
「うわ、みんな帰ってんじゃん。はー、これだからさぁ・・・・」
「良いんじゃ無いかぁ? 力さえあれば性格とか態度とか一切不問なのがあの方の方針だからなぁ」
クロウがあくびをしながら、ゆっくりと歩きながらそう話した。
「・・・・まぁ、そうだよね。私含め、協調性なんてあるわけが無いもんね」
笑いながらほむらはそう言った。
「帰るんスか? ほむら先輩」
「帰るよー。それとも、私と飲みにでも行きたかった?」
「いえ、それはまたの機会でお願いしますよ。これから予定があるっスから」
リピットはそう言ってほむらに頭を下げて断った。
「そっかー。じゃあやっぱり大人しく帰るよ。じゃあねー、みんな」
少し残念そうな顔をしつつも、ほむらは笑った。
そしてそう言った後、ほむらも部屋から足早に出て行った。
「・・・・それじゃ、俺も帰ろうとするかなぁ」
そして、ほむらが部屋から出て行って直ぐに残っていた三人もまた部屋から出て行ったのだった。
約一年後。人類史上、最大最悪の事件が始まるのであった。嵐の前の静けさが、仮初の平和が訪れるのだった。
カウントダウンは既に動き始めていた。
更新が遅くなりすみませんでした。
次回は来週の土曜までには行えると思います。
本編において色々と話が進んで来ました。因みに、歩の怪我は具体的に言うと、左鎖骨、右腕および両脚の複雑骨折。骨折による筋肉の裂傷、脳への過度な負荷による眼、鼻、耳からの出血、また傷に伴った体温上昇と毒による症状っていうところです。小さい傷も含めるともっとありますが、大体はこんな感じです。
3.5章はあと少しで終わりです。終わり次第、本編でも言葉が出てきていた全世界共同戦線が明らかになります。お楽しみに。
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