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八十一話 近づく破滅の音。

僕は思い切り屋上の扉を開けた。


「・・・・もう良いの? 刻藤」


僕の方に顔を向けること無く、そう言った。


「はぁ、はぁ・・・・。・・・・うん、もう大丈夫。さっきはごめん、一平」


僕は組合を走り回ってやっと一平を見つけた。一平は、屋上で少し暗くなってきた空を見ながら、椅子に座っていた。


「いや、良いよ。で、どうした?」


「・・・・一平、君に質問と頼みがある」


「・・・・良いよ。答えてあげる。何が聞きたい?」


持っていたペットボトルのキャップを閉めてから椅子に置いて、一平がそう言った。


「まず、君は何者なんだ?」


「まぁ、そうだよね。うん、君とは長い付き合いになりそうだし、教えてあげる。僕は、政府直轄裏組織 暁月(あかつき)の構成員なんだ」


暁月

政府直轄であり、公には出てこない組織のこと。完全に知られていないわけではなく、噂程度に組織のことが知られている。二十人ほどの構成員で成り立っており、主に日本国内で起きる事件などの解決のために動く組織であった。そんな中で、寧楽 一平は史上最年少で構成員となった人物であった。


「暁月? 何なの? それは」


「政府・・・・特に、内閣官房にある組織。一言で言うと、スパイだとか、情報機関だよ」


「スパイ・・・・? 凄いね・・・・」


———暁月か。それに二十歳にも満たない少年が入るとはな。かなり優秀だな、こいつは。


(「そうですね・・・・。ダンジョンで、僕を止めていた時も強い力でしたし」)


「・・・・刻藤。今はそんなことだけを聞きに来たんじゃないでしょ? ほら、本題を話しなよ」


「・・・・、一平。君は、いや君たちは無銘教のそして二人が攫われた場所を知ってるんじゃない・・・・?」


「・・・・どうして、そう思ったの?」


「さっきの話を聞いて確信した。君はダンジョンの時もダンジョンを出た後も終始焦っていなかった。政府直轄の組織だと言うのに、二大財閥の令嬢が攫われるという日本がどう考えても危険になることのはずなのに。だから、僕はさっき考えた。君たちは元々無銘教が何をするか、そしてどこへ行くのかを知っていたんじゃないか? だから、あんなことが起きても焦ることをしなかったんじゃないかって」


「ふーん、あんなに激情に囚われてたのに、思ったより視野が広いんだね。そうだよ、僕たちはあいつらの目的も、そしてどこへ行ったかも知っているよ」


「じゃあ・・・・!」


一平が僕の言葉を区切るようにして口を開いたを


「でも、それを君に言うかは別だよ。と言うか、君に出来るの? 人殺しが」


鋭い眼光で威圧するようにして僕の顔を見た。その目は僕にその覚悟がないのなら、今すぐ消えてしまえという強い想いが込められていた。


「やるよ」


人殺し、いや大量殺人なんてこの先一生尾を引き続けるだろう。その上で、僕は即答した。ついこの前まで悩んでいた時とは大違いだった。何の雑念もなく、僕はそう言い放った。


「僕は甘かった、全てにおいて。覚悟を決めなくてもみんなを守れるなんて、自惚れてた。その覚悟が無くて、戦うことなんて出来ない。罪から逃げるんじゃない、僕は罪を背負う」


爪の跡がついた右手を見てから、強く一平の顔に目を向けた。


「もう誰も失いたくない・・・・。だから一平、僕に二人を助けさせてくれ!」


僕は頭を下げて一平にそう言った。


「・・・・はぁ、この短時間で何があったんだか。君が即答できなかったら、言うつもりはなかったんだけど・・・・。まぁ、仕方ないか」


一平は一つため息を吐いてから一瞬空を見上げた。


「・・・・()、この次はもう無いよ。これが最後だ、ここで二人を奪い返さなければ二人を助けることは二度と出来ない。・・・・失敗は出来ないよ」


「分かってる。絶対に、二人を連れ戻す」


右手を強く握って、僕はそう言った。気付かぬうちに、僕の黒い瞳が少し青く染まっていた。


「・・・・すぐにまた招集する。準備を終わらせておいて。あっ、そういえば君のパーティーメンバーが来てたよ」


「え、そうなの?」


一平のその言葉に少し驚いてそう言った。


「うん。二人にも事情を説明しといて。戦力はあった方が良いからね多分、一階の待合室にでもいるんじゃない?」


「分かった、ありがとう。じゃあ行ってくる」


僕は一平にそう言って屋上のドアを開けると、急いで階段を降りて行った。


「・・・・良かったな。刻藤 歩が成長していて」


僕の背中を椅子に座りながら見ていた一平の前にいつの間にか全身を黒で埋め尽くした男が腕を組んで立っていた。


「・・・・本当ですよ。まぁあの父親二人が頑張ってくれたんでしょうね」


「何はともあれ、これで粗方は大丈夫か」


「はい。あとは、全力で奴らを潰すだけです」


「そうだな。お前もさっき言っていたが、今回に次は無い。確実に勝利するぞ」


「はい」


「よし。七時になったら、全員を集めろ。そこで全て説明する。良いな?」


「分かりました。それまで鞍馬さんは何を?」


「俺はもう少しだけ準備をしておく。お前は少しでも休んでいろ、ずっと働き詰めだったからな。七時まで数十分しか無いが」


「じゃあ、お言葉に甘えて少しだけ休んできます」


「ああ」


一平は、そう言うと椅子から立ち上がって扉の方へとゆっくりと歩いて行った。


「それでは、また後で」


扉を開ける前に男へとそう頭を下げてから一平は階段を降りて行った。

一平が行くのを見届けて、扉が閉まると同時に、その男もまた、その場から姿を消した。



「歩君!!」


「歩!!」


僕はレナとノアの二人と合流していた。二人とも僕の姿を見て安心しているようだった。


「大丈夫だったか、歩!? 怪我とかはしてないか?」


ノアは僕が特に怪我をしていないことを見て、胸を撫で下ろしていた。


「うん、大丈夫。それよりもこんなところまで来てくれて二人ともありがとう」


「ううん、歩君が無事で良かったよ」


「・・・・師匠とハインツさんは来てない?」


僕は辺りを見渡しながら、レナたちにそう聞いた。


「・・・・それがね、歩君。沖縄だけじゃ無くて、東京でも事件が起こったの」


二人は一瞬で真剣な顔になると、そう言った。


「え? どう言うこと?」


「ムーアの土は東京にあったの」


「え?! 沖縄じゃ無くて?」


「そう。だから、宗一郎さんとハインツさんたちは東京を警護するためにまだ向こうにいるの。ここに来れたのは私たちだけなんだ」


「・・・・そうだったのか・・・・」


沖縄にあると思われていたムーアの土は東京にあった。そして、そのムーアの土は、僕たちを危険に晒すためじゃ無くて、師匠たちがここに来れないように足止めをするために使われていた。

そして、二人の言い草から察するに、師匠たちはここには来ることができない。圧倒的な力で無銘教を倒すことは出来ないということを意味していた。


「ねぇ歩君、事情は聞いてるけど、これからどうするつもり?」


「お前は二人を助けに行くのか?」


「・・・・ねぇ、二人とも。僕に力を貸してくれる?」


「「もちろん」」


即答だった。二人に迷いというものは一切無かった。僕の言ったことに対して二人とも笑ってそう答えた。


「! ありがとう・・・・、二人とも」


僕は嬉しかった。二人にはいつも救われている。今回だって、僕のわがままみたいなことに二人は文句を言うこともなく肯定してくれていた。


「ところで歩君。さっきから気になってたんだけど異空鞄がなんか震えてない?」


レナが僕の腰あたりに目をやりながら異空鞄を指差した。


「え?」


異空鞄を見ると確かにレナの言う通り、少し震えていた。今まで全く気付かなかったけれど、鞄が振動するように震えていた。


「?」


僕は異空鞄を開けて、中を探ってみた。すぐに、中で動いているものがあった。僕はそれを掴むと、腕を引き抜いた。

異空鞄から抜いて右腕に握られていたのは、光り輝くお守りだった。


「何これ?! どう言うこと?」


そして、僕が両手でお守りを持った瞬間に、お守りが一層輝くと同時に、ボフッと煙のようなものが出てきた。そして、僕の手の中からお守りが消え去った。


「歩君、何したの?!」


「分かんない・・・・! 、何が起きた?」


煙を払いながら僕はそう答えた。


「あ、歩、なんか変なもんがいるんだけど・・・・!」


ノアが僕の腕を引っ張りながら、そう言った。

ノアはびっくりした様子で煙の先を見ていた。

そして、煙が消えると同時に僕の目の前に何かが飛んでいた。


「は、え? 何これ・・・・」


『ご機嫌ようです、主人(マスター)!!』


そこには、背中に四本の綺麗な羽が生え全身がうっすらと光っている小さい人? のようなものが宙に浮かんでいた。

その姿から連想するに、まるで精霊のようであった。

僕は目を丸くしながら目を擦った。しかし、それは変わらず僕の目の前を浮かんでいた。


『夢じゃ無いですよ、主人!』


「あの、えっと君は・・・・?」


『ああ、申し遅れました! 僕は付喪神(つくもがみ)ですよ! 主人が持っていたお守りに宿ったものです!』


付喪神

長い間使われていた道具や、人の強い想いがこもった物に宿るとされる神の名称であった。しかし、付喪神というものはダンジョン内では実体を持たず、魔道具などを操って襲ってくるモンスターの事であった。ミミックなどに似ており、宝箱内の魔道具などに宿っていることがあるモンスターだった。


「付喪神?! 何で、モンスターが?!」


僕はいきなり現れたモンスターに対して警戒体勢を取った。


『モンスターじゃ無いですよ!! 僕は主人の持っていたお守りに宿ったものです。それに、今だって主人のために力を使っているのに、酷いですよ!』


そのモンスター、もとい付喪神は小さい両腕を振って僕の言葉を否定していた。


「お守りって、舞さんに貰ってたやつだよね? 歩君」


レナが目線だけは付喪神に向けて僕にそう言ってきた。確かに、さっき異空鞄から出したお守りは以前に舞さんから貰ったお守りのはずだった。

その時、舞さんはただのお守りと言っていたはずなのに、こんなことになっていた。


「うん・・・・。多分、そうなんだけど・・・・。・・・・えっと、君は何で僕のお守りに宿ったの?」


『んー、なんか自分でもよく分からないけど、気付いたら意識があったんですよ。そしたら主人の強い想いみたいなものが伝わってきて、こうなったんですよ』


その付喪神は小さい右手を自分の顎に当てて考え込むようにしながら、そう言った。


「じゃあ、君は本当に、モンスターでは無いんだね?」


僕は警戒を解きながら、付喪神の元へと近寄って行った。


『そうですよ! あ! そうそう、主人が気にかけてる二人ですが、大丈夫そうですよ』


「え? 君は二人のことが分かるの!?」


僕は小さい付喪神を掴んでそう言った。


「ぐえっ、、!! は、話してください主人!』


「あっ、ごめん。ねぇ、二人が大丈夫って、見えてるっこと?」


『ちょっと待ってください、今見るので』


僕は慌てて、付喪神を話すと、付喪神は腹をさすりながらそう言って、目を閉じた。



「嫌っ・・・・」



牢屋の中で目を瞑った二人が乱暴をされることは無かった。むしろ、目を瞑ってすぐに目の前の男の叫び声が上がった。


「ギャアアアアア!!!! 指が、俺の指がぁぁぁ!!!!!!」


恐る恐る友里が目を開くと、そこには、何本かの指が消えて、そこからとめどなく血が溢れ出ている男の姿があった。


「どういうことだ! 何があった!!」


柊鵝が驚きながら牢屋の鉄格子を掴んでそう叫んだ。

実際、柊鵝は何が起こったのかが全く分からなかった。友里と深鈴に男たちが手を触れようとした瞬間に指が弾かれるとともに、弾かれた指が消し飛んだのだった。


「痛ぇ、痛ぇぇえ!!」


男は顔を歪めながら、既になくなってしまった指があった部分を押さえながら、叫んでいた。男たちは、無傷だった他の男たちが肩を貸しながら、牢屋の外へと出て行った。


「お前ら、何をした!!」


柊鵝がそう叫ぶ中、二人は未だに何が起こったのかが分からないでいた。

自分たちはただ目を瞑っただけ。なのに、気づいたら相手の指が消し飛んでいた。不可解以外の何者でも無い出来事だった。


「ああああ!! いだい、いだいっっ!!」


「五月蝿い! 黙れっ!!」


牢屋に出て痛みで叫んでいた男の顎をを蹴り上げた。顎を蹴られて男は宙を待った。


「ぎゃっ!!」


そして短い悲鳴の後、パンっと弾ける音がするとともに、男の顔が弾け飛んだ。大量の血と、脳漿(のうしょう)や眼球が飛び散った。


「ひっ・・・・!」


「っ、何をしやがんだ!!」


ボスらしき男が指を押さえたまま柊鵝に寄って言った。その男はまだ指は繋がっていて、爪の先が削れた程度だった。

仲間が殺されて黙っているほどクズでは無かったらしい。男は、柊鵝に殴りかかろうとしていた。


「黙れ!! お前もこうなりなく無いのなら、黙っていろ!!」


柊鵝は血走った目で男を見ると、男の鼻先で足を寸止めした。


「っ、、 分かりやした・・・・!」


後ろでは恵三と呼ばれた男が泣き叫ぼうとしているのを必死で他の仲間たちが口を塞いで黙らせていた。


「何なんだよ、お前たちはっ!! 何で思い通りに行かないっ! 一体、お前らは何をしたんだ?!」


柊鵝を持ってしても、何が起こったか全く持って分からなかった。

これは能力では無かった。しかも、ここにはいない、刻藤 歩の持つお守りがこの奇跡を起こしていた。

しかし、それをここにいる者が知る術は無かった。


「私たち、何が・・・・?」


「わ、分かりません・・・・。気づいたら、あの人たちが怪我をしていて・・・・」


牢屋の中で二人は顔を見合わせていた。けれど、二人とも、何故自分たちが助かったのかは分からないでいた。


「クソ、クソッ、クソッッ!!!!!!」


柊鵝は頭を掻きむしりながら、牢屋を思い切り蹴っていた。ミシミシと牢屋から不快な音がしていた。

そして、そのまま柊鵝は荒れた髪のまま男たちを突き飛ばしながら階段を上っていった。


「俺たちも、上に行くぞ・・・・」


「うわぁああああ!! 兄ちゃん、兄ちゃん!!」


柊鵝がいなくなると、恵三が頭部が無くなった亡骸の元へと駆け寄っていった。


「おい、誰か恵三を上に連れて来い、一信も一緒で良い」


指が削れた男が痛みに耐えながらそう言うと、他の仲間たちが亡骸を抱いて泣く恵三へと駆け寄り、遺体ごと階段へと連れていった。

辺りには、飛び散った血と眼球が転がっていた。辺りは血の匂いと肉の変な匂いが入り混じった酷い匂いになっていた。


「ひとまず、助かったの・・・・?」


「・・・・分かりません。でも、奇跡? が起こったのは確かです」


「う、うん」


二人はまだ身動きが取れないまま、牢屋の中で座っているのだった。



『見えますよー。あっ、今指が吹き飛びましたね。二人を襲おうとした奴らの』


目を瞑った付喪神が眉間に皺を寄せながら、そう言った。


「どう言うこと?! 君には何が見えてるの?」


『僕はお守りの付喪神ですよ。それも安全祈願の。だから、結界のようなものを作れるんです。それで二人を今、守ってるんですよ』


「そ、そうなの?」


『そうですよ、主人。ただ、僕のこの結界はあと二時間くらいしか保たないので早く助けたほうが良いかもです』


「とりあえず分かった。今は細かいことは良い、君のことを信じる」


『そうしてくれると僕も嬉しいですよ、主人』


付喪神は満足そうに頷くと、僕に近づいて来た。


『じゃあ、よろしくです。主人』


そう言って、付喪神は上機嫌になりながら、僕の右肩の上に座った。


午後 七時


あれから数十分後、僕たちは沖縄支部の一際大きな会議室のような場所へと集められていた。そこには僕たちトリックスターや閃光、餅次さんの姿もあった。総勢五十人ほどの数の冒険者が揃っていた。


「あー、今から、この部隊を指揮する鞍馬(くらま) 紳助(しんすけ)だ。早速で悪いが、本題だ。俺たちの与えられた任務は、二大財閥の令嬢の奪還、そして無銘教の壊滅だ。ここにいるお前たちは知っていると思うが、今回の事件は無銘教が絡んでいる。悪いが拒否権は無い、俺に従え」


会議室の一番前で鞍馬 紳助と名乗る人がそう言った。

端では、一平が頭を抱えていた。


「任務はこのあと三十分後から開始する。あー、それと刻藤 歩、並びにトリックスターと閃光、そして餅次 遼山はこのあと俺のところに来い以上、各自準備をしろ。気を抜いたら死ぬと思え。以上」


鞍馬さんの言い方は少し乱暴だけれど、この冒険者五十人を指揮する立場としてはあれくらいでちょうど良い。この中の誰も鞍馬さんのことを知っていない以上、あのように威圧をかけることは重要であった。

冒険者たちは誰も鞍馬さんに突っかかることは無かった。他の冒険者たちもまた、これからの戦いの重要性を理解していた。

その後、隣にいた一平から詳しい説明がされた。要約すると、この事件には無銘教と闇組合が関わっていること、二人が囚われているのは中国の上海のダンジョンであり、今回の騒動には市山財閥が関わっているとのこと。つまり、事実上の財閥同士の戦争であると言うことであった。

市山財閥と、宮家・星桜財閥の真正面からの戦争。正直に言って、日本に多大な影響を与える戦いになるのであった。


「集まりましたが、何の用ですか?」


会議が十分程度で終わったあと、僕たちを含めた九人は鞍馬さんと一平のもとへと集まっていた。


「命令だ、閃光と、餅次 遼山。お前たちは確実に闇ギルドのバーター・ギルドレイを殺せ。アイツは早い段階で殺しておかないと厄介だ。良いな、失敗は許されない」


「了解」


「絶対にアイツは殺します」


閃光のメンバーと餅次さんはそう言った。後々聞いた話だと、餅次さんもまたバーターに人生を狂わされた一人であった。

先行もまた、メンバーであった朔弥をバーターに惨殺されており、復讐の炎が燃え上がっていた。

殺意に満ちた目で鞍馬さんの言葉に頷いた。


「よし、ならばお前たちはもう良い。準備は怠るなよ」


そうして、五人が会議室を出ていった。残されたのは、僕たちと、鞍馬さんと一平、そしてここのギルドマスターである街中さんの六人であった。


「刻藤 歩、お前は一平と一緒に令嬢二人を奪還しろ。そして、始動 レナと、ノア・ライヘンドア。お前たちは前線で、俺とここにいる街中 さざめと戦え」


「分かりました。僕は二人を奪還した後、どうすれば?」


「一度、二人を助けたら守り通せ。俺たちと合流する必要は無い。救出し次第ダンジョンの外へと脱出しろ」


「分かりました」


「お前たちもそれで良いな?」


「はい」


「了解しましたー」


僕が頷くと、鞍馬さんはノアとレナを見ながらそう言った。二人もまた僕と同じように鞍馬さんの言葉に頷いた。


「よし、ならば五分後に任務を開始する。俺は先に現地で準備をしておく。お前たちもすぐに来い」


鞍馬さんがそう言うと、懐から何かの結晶のようなもの出して砕いた。その瞬間、光に包まれた後鞍馬さんがこの場から消えた。


「・・・・一平、よろしく」


「うん。多分、僕たちの所が一番危険だよ。だけど、いけるよな?」


「もちろん」


『そうです、主人には僕もついてますし!』


僕の肩から飛び降りて宙を舞いながら付喪神がそう言った。


「・・・・本当にそいつ何なんだろうね」


「分からない・・・・。でも今は、二人を助けることが先決だから」


「うん、そうだね」


僕がそう言うのを聞くと、一平は心なしか少し安心したようだった。

そして、僕たちも会議室を出て行った。

無銘教、そして闇組合との戦い。未来において、大事件として歴史に刻まれる財閥抗争の火蓋が切られようとしていた。


———戦いまで、残り五十分。


東京で起こっていた宗一郎と、ハインツたちの戦いはいずれ幕間か何かで書きます。とりあえず、ムーアの土を使って二対二で戦いが起こっていました。

割と戦いは激烈で、被害もそこそこ出てます。

そこらへんも含めていずれ書くのでお楽しみに。


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