八話 出会いと間違いと依頼
交換所を出て、武器屋へ向かっている途中、レティアが尋ねてきた。
——歩、どこの武器屋に向かっているんだ?
「ヘファイストスっていう店に行こうかと。 少し値段は高いですけど、性能はとても優れてるって有名なとこです。それに、そこのマスターの持っている能力が武器に、能力の付加も行うことができるっていう珍しいもので、オーダーメイドを依頼するにはぴったりだと思うので!」
——まぁ、なんにせよ、いい武器を作ってもらえよ
「それはもう、はい!」
僕はオーダーメイドの武器を依頼できることに心を弾ませながら言った。
———ヘファイストス
ヘファイストスの前へと僕たちはたどり着いた。ヘファイストスは、外装は石のタイルでできており、レトロな喫茶店のようなシックな印象を受けるものであった。僕は、扉の取っ手を引いて、中へと入った。扉には、鈴がついており、開けるとチリリンと音が鳴った。中は、一面に武器や、防具、装飾品などの様々なものが飾られていた。他の客はおらず、僕1人が店の中にいる状態だった。奥では金属を叩く音が聞こえてくる。すると、鈴の音を聞いてか奥から頭にタオルを巻いた背の低い少年が出てきた。年齢は、中性的な顔立ちも相まって小学校高学年くらいに見える。
「いらっしゃい、ゆっくり見ていってくださいね」
「いえ、既製品を買いに来たんじゃなくて、オーダーメイドの依頼に来たんですけれど、ここのマスターはいる?」
「オーダーメイドのお客さん? 少しお待ちください。今お師さんを呼んでくるので。それまで武器でも見ていてください」
「どうもありがとう。それにしても、君みたいな少年が働いていて偉いね」
「‥‥は? 今‥‥なんて言った? 」
「えっ、いや君みたいな小年———」
「僕は、女ですよッッッ!! どうせ、胸もない、女っぽさのかけらもないデスヨッッ!!!!」
突如、少年、もとい少女が激昂した。目元にうっすらと涙が浮かんでいた。
「! いや、そんなつもりじゃ‥‥」
そして、少女はそう言って奥の方へ走り去って行った。
——あーあ、やってしまったな、歩。あろうことか性別を間違えるとは。
レティアがここぞとばかりに言ってくる。ニヤニヤしているのが目に浮かぶ。少女が奥の部屋に走り去ってから少しして、入れ違いになるように大きな胸と、タンクトップを着ていて、手には槌を持っている背の高い女性が奥から出てきた。顔はすこし汚れているが、それでもなお、はっきりわかるほどに顔立ちは整っており、美人な人であった。
「‥‥君が、オーダーメイドを依頼しようしている子だね?」
まるで品定めをするかのように、僕の全身を一瞥してそういった。
「‥‥はい。 ところで‥‥、さっきの子は大丈夫でしたか? 悪いことをしてしまったので」
「ああ、みのりのことか。 まぁ‥‥、よく間違われるし多分大丈夫だよ。どうしても気になるなら後で呼んでやるからその時に謝れば良い。そんなことより、オーダーメイドの件だが! 君は、どんな武器をご所望だい?」
そう言って、目を爛々とさせて僕の方へ近づいてきた。
「‥‥刀を一振りお願いします。この前、戦っているときに、使っていた武器が壊れてしまったので」
そう言って、オーガとの戦いの時に刀身が粉砕してしまった刀を見せると、マスターは驚いた顔をして、少し興奮しながら刀を見た。
「硬いものを切って壊れたんじゃなくて、内側から崩壊するように刀が壊れてるね。大方、付与系統で刀の性能を高めすぎて、刀が負荷に耐えられなかったって言う感じかな?」
一目見ただけで、刀の壊れた原因を当てたことに僕は驚いた。
「ちなみに‥‥素材は何か持っている? 元の素材があればだいぶ安く済むけど」
「はい、一応は」
そう言って、例のオーガの魔石とツノ、牙と、下層で倒したモンスターの魔石と爪と牙を出した。
「! この黒い魔石はなんだい? まさか‥‥変異種の魔石か!? ってことはこのツノと牙も?!!」
「はい、まさにその通りです」
「すごいな!! 変異種の素材を使って武器を作れるとは!! これ以上に嬉しいことはないな!!じゃあこれらの素材を使って強度と切れ味の高い刀を一本で良いかい? 他には何か要望は?」
「刀への能力の付加もおねがいします」
僕がそう言うと、マスターは真剣な顔つきになって、僕に問いかけてきた。
「‥‥武器への能力の付加のデメリットについて知っているか?」
そう、武器への付加にはデメリットがある。まず、武器に新しい能力が増えるため扱いが難しくなるという点だ。下手すると、使い手自身を破滅させてしまうほど危険なものになる可能性があるということだ。そして、自分にとって身の丈に合った能力でないと、武器に振り回されてしまい、実戦ではとてもじゃないが使えなくなってしまうということだった。
「もちろん知ってます。それを承知の上で、付加をお願いします。内容としては、このオーガの魔石を使って再生の能力を付加してください」
「そこまで、覚悟の上ならわかった。オーダーメイドの件、しかと承った! ・・・・まだ君の名を聞いていなかったな。ちなみに私は、白銀 舞 だ。舞さんで良いよ。よろしく頼むよ」
「刻と‥‥、いえ、無明 ゼロです。こちらこそよろしくお願いします」
「ゼロ君か、それにしても刀への付加に再生を選ぶとは中々、良い選択だね」
「どうもありがとうございます」
真剣な顔つきから笑顔になると、舞さんは、そう言ってきた。そして、下層のモンスターの魔石以外の素材を全て、舞さんへ渡した。
「それじゃあ武器は二日で完成させるから、二日後にまた来てくれ。代金もその時に払ってくれ」
「わかりました。ちなみに、お値段っていくらくらいですか?」
「今回は素材も持ってきてくれてるし、刀を作るのと、付加だけだから合計で十万円ってところかな」
ちなみに、ヘファイストスで素材の持ち込みをして、付加も含めてオーダーメイドをした場合、平均で十五万円近くかかる。それに比べれば今回は安い方であった、けれど、一般的に武器を買う場合、安い武器であれば千円程度で買うこともできる事を考えれば、高い買い物であった。
「それと、さっきの少女のことですが」
「ああ、そうだったね。おーい、みのり!! 少しこっちに来てくれ!」
舞さんがそう言うと、奥から先ほどの少女が顔を出した。
「‥‥さっきはごめん! 君を傷つけてしまって」
僕はみのりと呼ばれた少女のもとへ少し近づいて、頭を下げた。
「‥‥まぁ、謝ってもらえるなら許してあげます。ゼロっていうんですよね? 私は 始動 みのり です。年齢は十八です」
まさか、性別が女性だっただけでなく、年齢すらも全く予想と違ったことに驚いた。まさか、僕とタメだったとは‥‥。驚きを隠しながら、僕も挨拶をした。
「改めて、無明 ゼロです。齢は同じく十八です」
そう言って、みのりと握手をした。確かに、みのりの手は男の手とは違ってゴツゴツしたものではなく、柔らかい女性の手であった。
——よかったな、許してもらえて。まぁ、私がそれをされたら相手を叩き潰すけどな
しれっとレティアが恐ろしいことを言ってきたが、僕は何も聞かなかったことにした。
「それじゃあ二日後にまた来ます!」
「ああ、またね」
「はい、またいらっしゃってください」
二人に挨拶を交わして、ヘファイストスを後にした。
すみません。投稿遅れました。次回は明後日までには更新いたします。ちなみに、今回の話で出てくる刀への付加の能力はモンスターハンターに出てくる武器から構想をえました。やっぱりセルレギオスって良いですよね! 舞さんの服のモデルは堀越先生のヒロアカの発目 明の服ですね。あの服は結構お気に入りです。他にも、刀への能力の付加のモデルはオールフォーワンの、能力から考えました。
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