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九話 尾行と金級と正念場

ヘファイストスを出るともう日が暮れ始めて、道は帰路についているサラリーマンや学生が増えてきていた。

ダンジョンを出てから何も食べていなかった僕はお腹が空いてきていた。どこでご飯を食べようかと思っていると、突如としてレティアが言ってきた。


——歩、気づいているか? 何者かに()けられているぞ


「‥‥えっ?」


——‥‥気づいていなかったか。 君がダンジョンを出てから、一定の距離を保ってずっと尾けられている。どうする? このまま放置するか?


「‥‥流石に放置しておくと、何が起こるかわからないので。とりあえず撒きます」


——そうだな、それが良い。なら、少し、スピードを上げろ。幸い、今の時間なら人が多い。 人が密集しているところに行けば、余程の者じゃない限り、見失うだろう


「わかりました」


そう言って僕は、商店街へと向かった。思った通り、商店街では、買い物帰りの人や、部活帰りの学生などが多く歩いていた。 そこで、着けていたオーガの仮面を外して歩くスピードを上げつつ、人混みの中へと入っていった。


——商店街か、考えたな歩。 この人混みと、目立つ仮面を外しておけば、見つかることはないだろう


「はい。このまま、路地に入って完全に撒きます」


僕は、人混みに紛れて周りを確認してから、路地へと入った。路地は、先ほどの商店街での賑わいが嘘かのように、静かで閑散としていた。人も僕以外はおらず、少し薄暗いところだった。


「‥‥流石にここまで来れば大丈夫でしょうか?」


——ああ、上出来だ。 ここまでして、撒けないほどの人物が()()()()()()にはいないだろう。


「それにしても、なんで尾けられていたんだろう? 僕、誰かに恨まれることとかなんかしたかな‥‥? それともこの仮面が、変に人の気を引くのかな?」


——理由はわからないが、君が尾けられていたという事実だけは変わらない。念のためこれからは警戒をしたほうがいい。


「まぁ、そうですね‥‥」


そんな話をしていると、突然声が聞こえてきた。


「誰と‥‥話しているのかな?」


その声と共に、突如僕の背後に人の気配を感じた。体がゾッとし、驚いて振り返った。しかし、そこに人は誰もいなかった。


「こっちだよ?」


今度は息が僕にかかるくらいの距離で僕に耳打ちをしてきた。耳を押さえて距離を取りつつ振り向くと、そこにはフードを被った人がいた。咄嗟(とっさ)に腰にあるはずの刀へと手を出したが、ヘファイストスに置いてきていたのを失念していた。


「アハっ、顔真っ赤にしちゃって、可愛いね〜」


「誰だ?! 僕を尾けていたのはお前か‥‥?!」


「そうだよ〜〜。君を尾けていた犯人は私だよ」


「‥‥なぜ、僕を尾ける? 」


僕は最大限の警戒をして、目の前に立つこの女の人を見ていた。直感で分かる、僕が勝てるような相手では無かった。


「ふふ‥‥。まぁまぁ、そんな敵意剥き出しにしないでよ。君に、危害を加えるつもりはないからさ! それに、さっきの私の動きを見たでしょ? 君に勝ち目はないんだしさ、大人しくするのが得策じゃない?」


そう言うと、一瞬で僕の後ろへと回り込んで、うなじをつついた。


「ほらね? また、後ろを取られた」


「!!」


僕は、冷や汗が止まらなかった。自分との格の違いを見せつけられた。もし、これが本当の戦いだったら僕はもう何度も死んでいるという現状に恐怖を隠せないでいた。


「‥‥何が目的だ?」


「まぁ、その疑問はもっともだね。私は君に質問があるんだよ。君の着けていたあの仮面、変異種のオーガのものだね?」


「!! な、なんでそれを知ってる? あの場所には誰もいなかったはず!?」


「いやぁ、知っているも何も、そいつの排除を依頼されたのが私だからね」


「‥‥あなたは一体?」


「ああ、まだ名乗っていなかったね。私は、始動(しどう) レナ 。 金級の冒険者だ」


そう言って、被っていたフードをを取って、首に掛けていた金色のプレートを僕に見せてきた。


「ヘ? 金級?? ()()? あっ、もしかしてさっきの!」


「そうそう、ヘファイストスにいた小さい子は私の妹だよ。それはさておき、話してもらおうか。どうやって君がオーガを倒したのかを」


僕に対するプレッシャーが変わった。さっきまでの少しふわふわとした感じから真剣なものへと変わった。


——歩、気をつけろよ。下手すると、捕まるぞ。ただでさえ、君ですらどうやってあのオーガを倒したのかをわからないんだ。それに、君の能力ははっきり言って()()そのものだ。ありのままを伝えたら、何かしら面倒なことになるぞ


レティアが真剣な声色で僕へと警告をしてきた。

しかし、本当に僕はこんな人に嘘をつくことができるのか?

僕は不安が収まらなかった。どうやら今この場は正念場らしい。僕はより一層気を引き締めたのだった。


(「それにしても、一日に二度も正念場があるなんて不幸すぎないか?!」)


僕は二度も起こる不幸すぎる状況に、心の中で叫ばずにはいられなかった。

今回の話少し短いです。

ダンジョン外編まだ続きます。 次の更新は明後日までに行います。コメントや感想などお待ちしてますので是非お願いします

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